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朝のピザ屋。
開店準備の時間。
オーブンが温まり、チーズの匂いが少しずつ広がっている。
エリオットはカウンターの中で、生地をこねていた。
にこにこ。
いつも通り。
ただ一つ違うのは――
カウンターの端に、まだチャンスが座っていること。
銀髪。
黒いスーツ。
帽子をテーブルに置いて、ピザをかじっている。
そこへ。
朝番スタッフがニヤニヤしながら近づいてくる。
「ねえエリオット」
「ん?」
「昨日さ」
「うん?」
「店でお泊まり会だったの?」
エリオットはきょとんとする。
「雨すごかったから」
「へぇ〜」
スタッフはチャンスを見る。
「しかもソファで」
チャンスは黙ってピザを食べている。
スタッフが続ける。
「しかも抱き合って」
エリオットが止まる。
「それは違う」
「違う?」
「事故」
チャンスがぼそっと言う。
「事故らしい」
スタッフは笑う。
「へぇ〜事故であんな体勢になるんだ〜」
エリオットが少し困った顔をする。
「だから違うって」
その瞬間。
スタッフがエリオットの肩に腕を回した。
「でもさ」
距離が近い。
「エリオットってモテそうだよね」
チャンスのピザの手が止まる。
スタッフはさらに言う。
「金髪だし、かわいいし」
エリオットは笑う。
「ピザ屋だよ」
「それがいいんだって」
スタッフはエリオットの顔を覗き込む。
距離がかなり近い。
チャンスの指がテーブルをトントン叩く。
トン。
トン。
トン。
エリオットはまだ気づいてない。
その瞬間。
チャンスが立ち上がった。
椅子がガタンと音を立てる。
二人が振り向く。
チャンスはゆっくり歩いてくる。
そして。
エリオットの前に立つ。
スタッフが言う。
「なに?」
チャンスは答えない。
代わりに――
エリオットの腕を掴む。
ぐい
「え」
エリオットが笑う。
「どうしたの?」
チャンスは低く言う。
「近い」
「誰が?」
「そいつ」
スタッフがムッとする。
「客のくせに何」
エリオットは楽しそう。
そして。
チャンスのネクタイを。
ぐい
「……」
エリオットは笑う。
「チャンス嫉妬してる」
チャンスが固まる。
「してない」
「してる」
「してない」
エリオットはまたネクタイを引く。
顔が近い。
「してる」
スタッフは完全に面白がっている。
「へぇ〜」
ニヤニヤ。
「もしかして二人付き合ってる?」
「違う」
チャンス即答。
エリオットは笑う。
「ネクタイ仲間」
スタッフは腹を抱えて笑う。
「何それ」
チャンスはため息。
でも少しだけ笑っていた。
エリオットは最後にまたネクタイを引く。
ぐい
「チャンス」
「なんだ」
「ピザ食べる?」
チャンスは肩をすくめる。
「食う」
スタッフは横で呟く。
「絶対仲良いじゃん…」
朝のピザ屋は、今日も少し騒がしかった。