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夜のピザ屋。
閉店後。
客はいなくなり、店の照明は少し暗くなっている。
カウンターの上にはピザの残りと、ビールの瓶。
エリオットは椅子に座って、ほろっと笑っていた。
頬が少し赤い。
「チャンス〜」
チャンスはカウンターにもたれて腕を組んでいる。
「……飲みすぎだ」
「そんなことない」
エリオットは瓶を持ち上げる。
「これ二本目」
「十分だ」
エリオットはくすっと笑う。
いつもより少しふにゃっとしている。
金髪の天然パーマも少し乱れていた。
チャンスが言う。
「水飲め」
「やだ」
「なんで」
エリオットはふらっと立ち上がる。
少しよろける。
「おっと」
チャンスが腕を掴む。
「ほらな」
「大丈夫」
エリオットは笑う。
そして。
いつものように。
ネクタイ。
ぐい
「……」
チャンスがため息をつく。
「酔ってもそれか」
エリオットは顔を近づける。
「チャンスのネクタイ好き」
「知ってる」
「ふふ」
距離がかなり近い。
エリオットはネクタイをくるくる指に巻きながら言う。
「チャンス」
「なんだ」
「なんでいつも来るの」
チャンスは少し黙る。
「ピザ食うため」
エリオットは笑う。
「うそ」
「……」
「ピザなら他にもある」
チャンスは肩をすくめる。
「ここがいい」
エリオットは少し嬉しそうに笑った。
そしてまたネクタイを引く。
ぐい
今度は少し強い。
バランスを崩す。
「わ」
エリオットが前に倒れる。
チャンスが受け止める。
「だから言った」
エリオットはチャンスの肩に寄りかかったまま笑う。
「チャンスあったかい」
「酔っぱらい」
「うん」
少し沈黙。
店は静か。
外のネオンが窓に映る。
エリオットがぼそっと言う。
「チャンス」
「ん?」
「逃げないでね」
チャンスが少し眉を動かす。
「……何から」
エリオットはネクタイを指で引きながら言う。
「マフィアとか」
「……」
「あと」
少し間。
「俺から」
チャンスは数秒黙って。
それから小さく笑った。
「逃げない」
エリオットは満足そうに笑う。
そして最後に。
ネクタイ。
ぐい
「……」
チャンスが言う。
「それ」
「ん?」
「ほんと好きだな」
エリオットは目を細めて笑う。
「うん」
そのまま。
チャンスの肩に頭を乗せて。
静かに眠ってしまった。
チャンスはしばらく動かなかった。
そして小さく呟く。
「……ほんと」
少し笑って。
「ずるい奴」
夜のピザ屋は、静かだった。