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僕の家は森の奥にある社。なんてったって僕は夏の神だから。
この社は四季が変わると共にそれに伴う神々が社を守りに帰ってくる。
だから僕は夏になった世界に降りてきた。
いつものように大好きな社で日向ぼっこをしていた。ら、見慣れない人影。
気になって見に行ってみると茂る森の木々たちの足元に座り込んでる “ 人間 ” を見つけた。
人間なんて何年ぶりだろうか。
そう思いつつ、近づく。が、その人間は僕に気づいたのか、瞳を揺らすばかり。
よく見れば涙も浮かんでる。
「ぇあ、ごめんね…!!」
「別に怖がらせるつもりは無かったんだけど…」
そう言いながら目線を合わせるようにしゃがむ。
「どうしてここに居るの?」
「迷子?」
そう聞くも、答えは帰ってこない。
そもそもこの森は入ったら出れなくなりそうな樹海っぷり。
そんな場所にいる違和感しかない人間の男の子。
見た目的に年齢は……
中学生くらい。
散歩とか?
にしても上着も着てないし───
「誰?」
考え事をしていると急に声をかけられ、目を見開く。
「僕?僕はね、ここの森の奥の社に司る、夏の神だよ!」
「あ、名前は時雨 蒼!」
「キミは?」
話しかけられたことが嬉しくてペラペラと口を回す。
それのせいか更に不審深げな目を向けてきた。
やっちゃった…
なんて反省しながらも根気強くキミの答えを待つ。と、
「……藍唯」
「藍唯くんだね?!」
「僕と同じ青っていう意味の漢字使われてるね!」
さっきの反省は忘れてまたもやぺちゃくちゃと喋り始める。
「それでさ、キミって迷子?」
「…迷子じゃない」
先程より早く返事が返ってくる。
それがよっぽど嬉しかった僕は
「じゃあ散歩?」
と次々質問を投げつける。
「……散歩…そうなのかも」
そんな曖昧な返事。
けれど僕は返事してくれただけで嬉しかった。
「じゃじゃーん!!ここが僕の家!」
そう言って古びて苔や蔦だらけになった社を見せる。
「……ボロボロだね」
辛辣なキミの言葉に僕は苦笑いしながら
「でも歴史詰まってそうで良くない?」
なんて反論する。
と、
「……ふふっ、」
キミが一瞬笑ってくれた。
「え、笑った……」
驚きすぎて目をぱちくりさせながらそんな言葉を零す。
「…なに?」
「ぇあ、いや…な、なんでもない!」
一瞬で無表情に戻ったキミの顔。
けれど僕の脳にはさっきの微笑みが残っていた。
「じゃあ行こっか!」
そう言って行先も決めずに半ば無理やりキミの手を引っ張って歩き出す。
後ろで困惑気な声を零してるキミをBGMに足取りは軽く軽くと進んでいく。
少しして開けた場所に来た。
そこには沢山の向日葵が太陽の方に笑顔を向けていた。
「…キミは向日葵好き?」
キミの方を一瞬見ながらそう言う。
「……好き」
「ちょっとだけ」
「…そっか〜!」
キミは向日葵が好き…
ちゃんと覚えておかなきゃ!
いつか役立つかもしれないし!
「…時雨さんは?」
「ん?」
「時雨さんは…『夏の黄色』好き?」
「……僕は嫌いかな」
一瞬『夏の黄色』という詩じみた言葉を聞いて自分の目が見開かれるのが自分でもわかった。
綺麗な言葉だと思えて。
でも同時にキミを儚く思ってしまって。
「なんで嫌いなの?」
服の裾を引っ張るような言葉を更に掛けられ、一瞬唖然とする。
さっきまでの警戒な雰囲気がここまで解除されてる。
その無防備さと純粋さに顔を顰める。
「…明るすぎるから、かな」
「明るすぎる……」
はてなを浮かべてるのが目に見て分かる。
「…でも向日葵って枯れた時暗いよ?時雨さんは枯れてる方が好きなの?」
「うーん…どうだろね」
曖昧な返事を1つ。
比例してキミのはてなももう1つ。
「見て!川だよ川!」
大はしゃぎで年相応じゃない動きで川に走り向かう僕。
対してキミは大人じみて着いてくる。
まるで歳が逆転したみたいだ。
「…川で出来ることってなくない?」
ふと辛辣な声が背から飛んでくる。
とは言っても小突きくらいな言葉。
” 僕にとっては “ だけどね。
内心そう笑いじみた声を零す。
「あるよ!!」
「まず水浴びでしょ〜?それに魚すくいとか!」
「あ、スイカも川につけちゃったりして?」
次々と言葉を並べながらも視線はキミの方に。
「…スイカ食べたことない……」
ぽつりとそんな言葉を零すキミの声を聞いた瞬間、『釣れた!』なんて悪く思ってしまう。
「……でも川で冷やすって汚くない?」
キョトンとしながらキミの方を見る。
スイカ食べたことないからやっぱりスイカを川で冷やす方法知らないのかな。
ふとそんなことを思う。
「これを使うんだ〜!」
そう言いながら少し太めの縄を見せる。
「本当は袋に入れたりジップロックに入れるらしいんだけど…」
「僕の場合は使わないよ!」
確かに衛生面的に考えれば袋無しにスイカを川に浸けるなど汚いと思うかもしれない。
けど僕は夏の神だから力でちょちょいのちょいってすれば何とかなる!
そう自慢げに心で誰に語るでもなく喋りながらキミを見る。と、明らかに引いている。