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私
の名前はアリス=リデル。どこにでもいる普通の女の子よ!……なんて言ったら笑われちゃうわね。えーっと、私について簡単に説明すると――まず私は『アリス』っていう名前だけど別に不思議の国から来たわけじゃないの。だからといってお城に住んでるわけでもないんだけどね。まぁそんなことどうだっていいわよね。
さて次は私が住んでいる場所について説明するわ。私の家は少しばかり変わっているけれどすごく平和でのどかな村にあるの。そういえばこの村に引っ越してきてもう結構経つけど今まで何も事件とか起きなかったから安心しているわ。でも油断は禁物。何が起きるかわからないもの。例えば今こうして考えていることも実は誰かに見られているかもしれないしね。
あら、また話が逸れてしまったみたい。いけないわね。話を元に戻さないと。じゃあ次に何を話せばいいのかしら? そうだわ! それではこれから話す物語の主人公を紹介しましょう。といっても、まだ顔を見たこともないのだけれども。きっと素敵な男性に違いないと思うのよね。何故そう思うのかっていうと……うふふふふ、それは秘密よ。だってその方が面白いでしょう? さて、どんな風に紹介すればいいかしら? そうねえ……まずは年齢について書いておきましょうか。えーっと年齢は十六歳。今年で十七歳になるはずだけど。外見については……髪の色は銀色で瞳の色も同じ色らしいわ。肌色は白人にしてはやや浅黒くて、背丈はそれほど高くはないけれど、手足は長くスタイルは抜群。あと、声質はとても甘いバリトンボイスだとか。それから性格だけど――
あれ? もうこんな時間なの!? しまったわ。つい夢中になって話し込んでしまっていたようね。そろそろお開きにしなくちゃ。続きは次の機会にすることとしましょう。それじゃあお休みなさい。良い夜をお過ごし下さいませ。
***
この話はフィクションです。実在の人物・団体等とは関係ありません。
そこは深い森の中だった。
鬱蒼とした木々に覆われていて薄暗い。地面を覆う下草も生い茂っている。
時刻はまだ昼過ぎだというのに辺りには夜の闇が立ちこめているようだ。
ここはどこなのか? 自分は誰なのか? 何も思い出せなかった。
しかしそんなことはどうでもいいような気がした。今ここで起こっていることがすべてだった。私はこの瞬間に生きていたのだ。
「……いや、でもさすがにあれはないよなぁ。うん。いくらなんでも無理だよなあ……。うーん……どうしようかなこれ……。困ったな……。まいっちゃうね。ほんと。参るわ。マジで」
私は自分の目の前に広がる光景を見て途方に暮れていた。その光景とはすなわち――
「……まさかこんなことになるなんて思ってなかったんだよなあ……」
そんな風に独り言ちながら、私は自分の身体を見下ろす。
まず目に入ったのは、黒い布地に白いラインの入った上下セットのジャージ。
うん、私のだ。
続いて視線を動かすと、同じく黒を基調としたインナーウェアが見える。
これも私のもの。
さらに下へ……いや待てちょっとおかしいぞ?
「なんでパンツまで履いてるんですかねえ!?」
思わず叫んでしまった。
だってさっきまでノーパンだったはずだよ? なのに今着てるこの服は明らかに下着着用を前提としたデザインだし! ていうかこれじゃまるで全裸の方が良かったみたいじゃないか!
「落ち着け、深呼吸しろ。こういう時こそ冷静になるべきだ」
自分に言い聞かせるように呟きつつ、大きく息を吸う。
しかしそれでもなお混乱は収まらない。むしろ悪化していると言ってもいい。
なぜならばここはどこなのか。
目の前に広がる光景は何なのか。
そして今の自分は一体どういう状態になっているのか――それを考えるだけで頭がおかしくなりそうだ。
だがいつまでもこうしてはいられない。
まずは現状確認からだ。
改めて周囲を見回せば、そこはやはりどこかの部屋の中だと分かる。
ただ、家具などはほとんど置かれておらず、代わりに部屋の中央には直径3メートル程の魔法陣らしきものが描かれている。床や壁はもちろん天井にまで描かれたその複雑な紋様からは強い魔力を感じられた。
「ふむ……確かにこの部屋で間違いなさそうだね」
「そうですね!早く調べましょう!」
二人は早速部屋の中を調べ始める。
「うーん、特に変わった様子はないみたいだけど……」
「えっと、何か気になる事でもあるんですか?」
「いや、そういう訳じゃないんだけどさ」
言いながら男は机の上にあった日記を手に取る。
「これなんか見てよ」
「あぁ!それって確か勇者さんの日記ですよね!?」
「うん。ちょっと読んでみようと思うんだけど、君はどう思う?」
「ぜひお願いします!」
こうして勇者の日記を読む事になった二人だが――
『4月5日 今日は仲間と共に魔王討伐の旅に出た。まずは西にある魔族領を目指す』
4日目
『今日は一日休んで英気を養うことにした。幸い近くに村があったので宿をとることにする』
5日目
『昨日の疲れがまだ残っているのか少し体が重い気がする。しかしそんな事を言ってはいられない。僕は世界を救わなければならないのだ!』
6日目
『ついに明日は決戦の時だ。必ず勝ってみせるぞ!』
7日目朝起きると、なぜか枕元に置いてあった手紙を読む。
そこにはこう書かれていた。
『おはようございます。
あなたの夢をかなえてあげましょう』
「……?」
寝起きだから頭が回らないのかと思ったけど、そんなことはないようだ。意味不明すぎる内容だった。
もう一度読み返す。やはり内容は変わらない。
封筒の裏を見てみるけれど差出人の名はなし。切手もなく直接投函されたみたいだ。
いたずらだろうか? そう思ってみたものの、悪戯にしてはこの文面にはリアリティがありすぎた。