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#異世界転生
「うわー終わった……」
返却された答案用紙を見つめながら、陽向が机に突っ伏す。
「今回むずくなかった?」
「いや普通に無理」
「それな〜」
あちこちから、似たような声が上がる。
「……」
こはるは、自分の答案をそっと二つ折りにし、机にしまった。
「こはるどうだった?」
渚と紅葉が絶望の表情でこはるのところに来た。
「あ、えっと……」
特段良くもなければ、悪くもない点数。
「……まぁ、なんとか…って感じです」
「え、すご」
「それ絶対できてるやつじゃん」
「そんなにできたわけではないですよ?悪くはなかったって言うだけで」
困ったように笑うこはる。
「で、雪斗は?」
陽向が顔を上げる。
「いつも通りかな?」
「雪斗のいつも通り……絶対よかったパターンじゃん」
「雪斗入学してからずっと学年5位だっけ?キープしてるもんな」
「え、まじ?ここでもそんなすごいの?」
「すご」
「……」
こはるは、少し驚いたように雪斗を見る。
「確かに…中学の後半くらいから?部活もやめて、急に成績伸びてたもんね。医者にでもなるの?」
渚が何気なく聞く。
「ん〜」
ほんの一瞬、間。
「まぁ、あながち遠くはないかな?」
「え、まじ?」
「獣医とか」
視線を逸らしながら、小さく答える。
(へぇ……雪斗くん、獣医になりたいんだ)
こはるは、少しだけ目を細めた。
⸻
後日 終業式
校長の話は、どこか遠くに聞こえる。
(……)
(春休み……)
こはるは、窓の外をぼんやりと見ていた。
⸻
「終わったー!!」
教室に戻るなり、陽向が声を上げる。
「春休みだー!」
「やっとだね〜」
「なにする?」
「とりあえず寝る」
「いやそれはいつもでしょ」
笑い声が広がる。
「てかさ」
渚がふと口を開く。
「クラス替えどうなるんだろうね」
「……」
少しだけ空気が揺れる。
「バラバラとか普通にありそう」
「えーやだなそれ」
「まぁ……その時はその時でしょ」
紅葉が静かに言う。
「……だね」
「……でも……そうなったら寂しいですね。」
こはるは、小さく頷いた。
(…せっかく、仲良くなれたのに)
「てかさ〜」
渚がふっと笑う。
「最初来たときのこはるさ」
「めっちゃビクビクしてなかった?」
「分かる(笑)」
陽向も頷く。
「ほんと小動物みたいだったよな」
「え?」
こはるは少しだけ目を丸くする。
「せっかくなついてくれたのにさ〜」
渚がわざとらしく肩を落とす。
「こはるちゃんと離れたくなぁい♡」
そう言いながらこはるに抱きつく渚
「なにそれ(笑)」
「きも」
「ひどっ!?」
笑いが広がる。
「でも確かに」
こはるが小さく呟く。
「え?」
「私結構人見知りなので……最初は……ちょっと怖かったですけど」
少しだけ顔を上げる。
「今は大丈夫です!」
ほんの少しだけ、照れたように笑った。
「いや〜ん。こはるちゃんかわいい〜♡えらいえらい」
「子供扱いしないでください!」
小さく足を鳴らす。
「…あ、足ダン」
雪斗がぽつりと呟く。
「うさぎかよ!」
また笑いが広がる。
⸻
「で、春休みどうしようか?せっかくならみんなで何かしたいよね」
チュー
と言いながらジュースを飲む紅葉。
「花の女子高生活!確かに何かしたいね。ってか、だんだん暖かくなってきたじゃん?その前に私服買わないと。」
渚が言う。
「春服?」
「そうそう」
「そう言えば俺も新しいスニーカー欲しいんだよね」
「私は新年度の手帳欲しいかも」
「俺は本屋寄りたいかな。参考書欲しい」
「おい、1人なんかおかしい奴いるぞ。」
「じゃあもうモールでよくない?」
「全部揃うし、みんなで行けるじゃん」
「お、ナイスアイデア」
「決まり〜」
「……」
こはるは少しだけ遅れて、
「私も行っていいですか?」
そう言って、小さく頷いた。
「もっちろん♪最初からそのつもりだよ!」
みんなが笑ってこはるを見ていた。
⸻
ショッピングモール。
「うわ、人多っ!」
「春休みだしね〜」
「なんでこう……人混みを見るとテンション上がるんだろうな」
「分かる」
明るい空気とざわめきに包まれる。
「とりあえずどうする?」
「服見たい!」
「早っ」
「だって私の目的それだし」
「じゃあ先に服見て、そのあと各自回る?」
「それでよくない?」
「賛成〜」
「……」
こはるは周りを見回していた。
(……広い)
(人も多いし……)
少しだけ緊張した様子で、紅葉の後ろに自然とつく。
「こはる、大丈夫?」
「だ、大丈夫です!」
「迷子にならないようにね」
「なりませんよ!」
笑いながら、みんなで服屋・靴屋・文具屋・本屋へと足を運んで行った。
気づけば、ちょうどお腹の空く時間。
「腹減ってこない?」
「確かに、そろそろお昼になるし、混む前にフードコート行こうか」
そういながらみんなでフードコートに向かう。
「うっひょ〜!何食べよう」
「お店が多いと迷うよね〜、私もどうしよう!」
「私ここで席とって待ってるから、買ってきていいよ」
「私ドーナツにしようかなと思うんですけど、何か買ってきましょうか?」
「あ、ほんと?お願いしていい?」
「大丈夫ですよ!」
「俺は久々にハンバーガーでも食べよう」
「俺はラーメンにしよ!中々店のラーメン食べれないしな!!」
「あ、なら私もラーメンにしよう!」
各々が食べたいものを買いに行き、再び席に集まった。
「うまっ!」
「やっぱり店のラーメンは美味しいよね!」
「紅葉さんもどうぞ!」
「あ、ありがとう。」
そう言ってドーナツを渡すこはる。
こはるも一口食べて、
「……美味しい」
小さく呟いた。
そうしているとハンバーガーをトレーに乗せた雪斗が席についた
「めっちゃ混んでた……」
「お疲れ様です」
こはるが雪斗にニコッと微笑んだ瞬間——
「……」
こはるの動きが止まった。
「……?」
ゆっくりと立ち上がる。
「どうしたの?」
突然立ち上がるこはるに渚が声をかける
こはるは、少しだけ目を閉じる。
ざわめきの中で、
何かを探すように。
「……」
(……)
かすかな泣き声。
「……」
ぱっと目を開く。
「ごめんなさい!」
「ちょっと行ってきます!」
「え、ちょっ——」
そのまま、人混みの中へ。
「……なに今の」
「急にどうしたの?」
「……」
雪斗が立ち上がる。
「……行くぞ」
「うん」
紅葉も続く。
「え、ちょ、ラーメン伸びるって!」
「先食べてていいよ!」
⸻
人混みの中。
(……こっち)
音を頼りに進む。
少し外れた通路。
小さな子供が一人で泣いていた。
「……」
こはるはしゃがみ、目線を合わせる。
「大丈夫ですか?」
「……ママぁ…………」
「お母さんとはぐれちゃいましたか…おねえちゃんお名前は?」
「グスッ……さくら………」
「さくらちゃん。大丈夫ですよ」
子供の頭を撫でながら微笑むこはる
「お姉さんがすぐ、見つけますから!」
そう言うと、こはるは一度ゆっくりと目を閉じる。
ざわめきの中で、音を探す。
「……」
遠くから、かすかな声。
「……ちゃーん!」
「さくらちゃーん!!」
「……いた」
目を開く。
「……おかあさん、あっちにいますよ」
微笑みながら子供の手をそっと握った。
「歩けますか?大丈夫ですよ♪」
2人でゆっくりと歩き出した。
⸻
早歩きでこはるを探す雪斗と紅葉
「急にどうしたんだ。」
「わからないけど、ちょっと普通ではなかったよね」
そう言いながら吹き抜けの2階から下を覗くと
「……あれ?」
紅葉が呟く。
「あれこはるじゃない?」
紅葉の刺した指の先を見る雪斗
「……あんなところに。」
「……ん?……子供?」
「迷子かな?」
子供の頭を撫で、そのまま手を繋いで歩いていくこはる。
「迷子センターあっちだっけ?」
「いや、反対方向だったと思うけど……」
二人はそのまま後を追う。
⸻
「さくらちゃん!!」
母親が駆け寄る。
「ママ……!」
「よかった……!」
子供を抱きしめる。
「すみません……!本当に……!」
「いえ」
こはるは小さく首を振る。
「見つかってよかったですね!さくらちゃん」
母親は何度も頭を下げて去っていった。
「……」
こはるは、手を振りながらその背中を少しだけ見送る。
⸻
「……よかったね」
後ろから紅葉の声。
!!
こはるはびっくりして振り向いた。
「え!?紅葉さん……と雪斗くん……いつから……」
「今追いついたんだよ。」
「迷子?」
「はい。お母さんが無事に見つかってよかったです」
にっこり笑うこはる
「でも、よく親の場所がわかったね」
「お母さんが子供を呼ぶ声が聞こえたので…」
「この人混みの中?!」
「嘘でしょ……?」
「じゃ〜フードコートでは…子供の泣き声が聞こえたの?!」
「……?…そうですけど?」
衝撃の事実を知って目を合わせる雪斗と紅葉
「なんかさ」
雪斗が笑う。
「こはるって、うさぎみたいだよね」
「分かる」
ほんの少しだけ、胸が高まる。
「流石に耳良すぎでしょ(笑)」
「そ……そうですか?」
小さく首を傾げる。
「まぁ、一件落着したみたいだし、フードコート戻ろ」
「そうだね。バーガーカピカピになってそう。」
「私も安心したらお腹がすきました♪」
3人で笑いながらフードコートへ戻って行った。
⸻
帰り道。
夕方の空は、少し赤く染まっていた。
「今日は楽しかったね〜」
「また行こうよ」
「いいね」
「……」
こはるは、少しだけ前を歩く。
(こはるって、うさぎみたいだよね)
雪斗の言葉を思い出した。
胸の奥が、ほんの少しあたたかい。
「……みたい、じゃないんですけどね」
小さく、笑う。
夕空に浮かぶ月を眺めながら、
こはるは、そうつぶやいた。