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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
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楽しかった授業。

楽しかった休み時間。

楽しかった帰り道。

それは全て無くなった。

“無くなった”より、”奪われた”という方が良いのかもしれない。

大好きな人から離された。

「アイツ」が来たお陰でーーー。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

木々の隙間から、日光が差し込む。

梅雨が明けて間もない、六月後半。

夏と言っていい程の暑さだった。

最近はどうにも汗をかく。

早く扇風機のついた教室へ行きたい。

そう思いながら歩を進める。

好きなコンビニを通って、交番を通る。

交番の近くに私の通っている学校がある。

偏差値もそれ程高くない、普通の中学校。

「ハァ…ハァ…ヤバい。もう限界…」

息をきらしながら走っていく。

いつの間にか走っていたらしい。

大好きな人に早く会いたい衝動からだろうか。

ようやく校門に着いた。

ヒマワリを植えているのか、花壇にはヒマワリの芽が出ていた。

大勢の学生がもう来ていた。

最後の力を振り絞って靴箱まで行く。

「ハァ…やっと着いたぁ…!」

靴箱に手をつき、息をきらす。

ポケットに入っていた、ハンカチを額に当てる。

大好きな人に汗まみれの自分を見せるなんて、絶対にしたくはない。

首元も汗でまみれていたので、ハンカチを当てた瞬間。

「おはよう!今日も暑いね〜白華ちゃん。」

「ヒャッ‼︎」

私は焦って変な声を出してしまう。

だって後ろに大好きな人、金本遥希くんがいたからだ。

「お、おはよう!!遥希くん!」

勢いで満面の笑みをつくる。

「ふふ…びっくりさせちゃったかな?」

ニコニコしながら遥希くんは笑う。

「一緒に教室行こっか。」

「そ、そ、そうだね!」

私、瀬論白華は誤った返事をしてしまう。

「そうだね」とは一体どういう返事だろう。

普通は、「ありがとう。一緒に行ってくれるの?」みたいな返事だろう。

遥希くんと一緒に階段を上り、教室に向かう。

冷静を保とうと考える私だが、心臓はドキドキしている。

沢山の人が階段を上り下りしているので、歩くスペースが狭い。

なので遥希くんと私の肩がくっついてしまうのだ。

「沢山人がいるね〜。」

そういう遥希くんの言葉に返事が出来ない。

一緒に行ってくれているのに、嫌な奴だと思われないだろうか。

小学四年生の頃からずっと一緒だったから、大丈夫だろう。

と、自分に言い聞かせる。

ドキドキしている間に、もう教室に着いてしまったようだ。

先程までは、教室に早く行きたい思いだったのに、今は遥希くんと二人きりでいたいとだけしか思わなかった。

教室に入り、自分の席に着く。

私の席の一個飛ばして隣が遥希くんの席だ。

私と遥希くんの間の席は空白だ。

五月頃にクラスの子が転校してしまったからだ。

こんなこと言うのもアレだけど、転校してくれてラッキーだと私は思う。

授業中だって、休み時間も遥希くんと喋れるからだ。

そう考えると、二人きりになりたいと思った自分はただのワガママにも感じてくる。

「あ、そういえば今日転校生が来るらしいよ〜。」

ボソッと私に、遥希くんは呟く。

(え…)

私は、ポカンと口を開けてしまった。

転校生…?

転校生の席は新しく何処にも用意されていない。

という事は、私の隣のこの空席しか座る場所が無いじゃないか。

さっきまでドキドキしていた気持ちが、一気に曇ってきた。

遥希くんと喋れなくなる。

(ーーーーーーー嫌だ)

一番最初に思ったことはそれだった。

自分は最低だ。

こんな事を思ってしまう自分が嫌になった。

「そ、そうなんだー。」

私は言った。

一体誰が来るのだろう。

女子かな?男子かな?

男子ならまだしも、女子なら…嫌だな。

遥希くんと喋れない事に私は、嫌だとしか感じなかった。

まただ。

そんなことを頭の中で思考を巡らせていると、

キーンコーンカーンコーン

チャイムがなった。

ホームルームが始まる。

暗い顔をしたまま椅子に座った。

先生が教室に入ってきた。

「よし、今日はなんと転校生がくるぞ!」

先生は大きな声で言った。

クラスはざわつき始める。

「どんな子だろ〜。」

「女子かなぁ…可愛い子が良いなぁ…」

クラスのみんなは色々と話し始める。

「はーい、入ってこーい。」

先生は手招きする。

私の心はバクバクしているし、澱んでもいた。

教卓近くのドアに目を向ける。

ガラガラとドアが開く。

みんなは目を見開く。

私も目を見開く。

そこに入ってきたのは可愛い女の子だったからだ。

黒いショートの髪。綺麗な瞳。

皆が見惚れるのも当然だった。

その子は綺麗な白い手で黒板に、名前を書く。

「井織黒紀って言います。よろしくお願いします。」

恥ずかしがっているのか、小さな声だった。

こんな子が隣に来るのか。

と、思い隣を見ると遥希くんが驚いた表情をしていた。

遥希くんも見惚れたのだろうか。

違うらしかった。

遥希くんは小さく、

「黒紀…?」

とだけ呟いていた。


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頑張って、続けられるといいです…

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