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荻一野
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コメント
1件
ああ、この回、すごくよかったです……。 smくん、本当にさりげなくて、でもちゃんとshkくんの“見える場所”に手話を置いてくれるんですよね。あの「癖」の二文字に全部詰まってる感じがして、じんわりきました。 「かわいそう」じゃなくて「教えてくれてありがとう」が返ってくる——その一文でshkくんの世界がちょっとだけ色づいたのが伝わってきて、胸が熱くなりました。素敵なエピソードをありがとうございます🌷
ー 注意事項 ー
・こちらはmnps様の二次創作となっております
・ご本人様や関係者様とは一切関係ありません
・この作品にはBL要素が含まれますので、苦手な方はご注意ください
ご理解いただける方は、ぜひ楽しんでいってください!
翌朝。
shkは昨日より少し早く教室へ来ていた。
教室にはまだ数人しかいない。
静かだった。
……いや。
shkにとっては、いつだって静かだった。
席に荷物を置く。
何気なく隣を見る。
まだ来ていない。
「……。」
昨日のことを思い出す。
『大丈夫?』
あの手話。
あの一言。
知らない学校。
知らない教室。
その中で。
初めて安心できた瞬間だった。
ガラッ。
教室の扉が開く。
smが入ってくる。
shkに気付くと、小さく笑って手を動かした。
『おはよう。』
shkも自然と笑う。
『おはよう。』
手が動く。
言葉はいらない。
それだけで伝わる。
席に着いたsmは、鞄からノートを取り出す。
すると。
教室に入ってきた生徒たちが、二人を見て足を止めた。
「あれ……。」
「今のって手話?」
「すごくない?」
ひそひそと口が動く。
何を言っているかは分からない。
でも。
自分を見ていることだけは分かった。
shkは視線を落とす。
まただ。
転校する前の学校でも。
どこへ行っても。
“聞こえない子”
そう見られることには慣れていた。
その時。
視界の端で、手が動く。
『気にしなくていい。』
smだった。
短い手話。
でも。
その一言だけで、不思議と肩の力が抜ける。
『……ありがとう。』
smは小さく頷いた。
チャイムが鳴る。
一時間目。
先生が教壇へ立ち、授業が始まった。
黒板に文字が書かれる。
そこまではいい。
shkは必死にノートへ写していく。
だけど。
先生は黒板を書き終えると、教室を歩きながら説明を始めた。
生徒たちは頷いている。
笑っている人もいる。
でも。
shkには何も分からなかった。
口元は見えない。
声も聞こえない。
黒板にも書いていない。
「……。」
どうしよう。
困ったまま教科書を見つめていると。
コツ。
机が軽く叩かれた。
隣を見る。
smが、自分のノートをそっとこちらへ寄せていた。
そこには。
先生が話していた内容が、簡潔にまとめられていた。
さらに。
『ここ、テストに出る。』
手話でそう伝えてくる。
shkは思わず目を丸くした。
『……全部書いてたの?』
smは照れくさそうに笑って。
『癖。』
たった二文字の手話。
それだけなのに。
shkは吹き出しそうになった。
『ありがと。助かった。』
smは軽く親指を立てる。
それだけで十分だった。
昼休み。
shkは筆談用のノートを開き、smの前へ置いた。
【なんで手話できるの?】
smは少しだけ考えたあと、ペンを走らせる。
【家族が教えてくれた。】
短い一文。
でも、その文字にはどこか温かさがあった。
今度はsmがノートを差し出す。
【shkは?】
shkの手が止まる。
少しだけ息をついてから、書いた。
【事故で耳が聞こえなくなってから覚えた。】
smはその文字を静かに見つめる。
何も聞かない。
慰めもしない。
ただ。
ゆっくりとペンを動かした。
【教えてくれてありがとう。】
その一文を見た瞬間。
shkは少しだけ笑った。
“かわいそう”
その言葉じゃない。
知りたかったのは。
こういう返事だった。
その日。
shkは初めて思った。
この学校なら。
もしかしたら。
少しだけ好きになれるかもしれない。