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「いやっ、あ、あの…俺別に可愛くないですし、抱かれるとか聞いてないです」
慌ててそう言うと、泰輝さんはフフッと笑う。
「安心して。ちょっかいなんてかけないから」
泰輝さんはそう言って向かいの席に戻った。
そんな泰輝さんを見て、俺は安堵する。
「びっくりした。脅かさないでくださいよ」
「ごめんごめん。でも、恭也くんいい子だし、血が凄い美味しいんだろうな。陽煌さんは凄い苦いの」
泰輝さんはそう言って苦笑いする。
「そうなんですか?」
「うん。血の味ってその人の性格で味が変わるから、初めて飲んだ時はビックリしちゃった。陽煌さんには正直に言ったこと無いけどね」
「それってつまり、その…陽煌さんは性格が良くないって事ですか?」
「そうだね。あの人腹黒いからさ。多分、俺の事も好きじゃないし」
泰輝さんは口元を緩ませるけれど、目は悲しそうだ。
「それでも泰輝さんは、陽煌さんと一緒に居たいんですか?」
「うん。俺、陽煌さんの事、大好きなんだよね。どんな美味しい血よりも陽煌さんの血が飲みたいって思うし、愛されてなくても一緒に居たいと思うの」
そう言う泰輝さんはなんだか嬉しそうだ。
「そんなに好きなんですね」
「うん。だから陽煌さんの頼み事なら何でも聞いてたんだ。でも、昨日陽雅さんが泣いてるの見てもうやめなきゃなって」
「陽煌さんの頼み事ですか?」
「うん。陽雅さんの事がほとんどだけど」
「あの、このキスマークの事、なんか知ってます?」
俺は薄くなったキスマークを指差す。
「うん。知ってる。快くんの予想通りだよ」
「じゃあ、陽煌さんが付けたんですね?」
「そう。昨日陽雅さんがあんなに快くんの事疑ってたのも、陽煌さんが疑うように仕向けたからだよ」
色々分かってきた。
と言うか、分かりすぎてる。
泰輝さん、本当にこんなに話して大丈夫なのかな。
「あの、話してくれるのはありがたいんですけど、泰輝さん、本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫。俺もそろそろ変わらないといけないし。でも、陽煌さんの前だとどうしても勇気でなくてさ。まずはこうやって恭也くんに話せば陽煌さんの前でも勇気出るかもなって思って」
泰輝さんはそう言ってニコッと笑う。
「すみません。本当にありがとうございます」
「どういたしまして。俺が話せるのはこれくらいかな。今は恭也くんは陽雅さんに会わない方がいいと思うし、俺から陽煌さんの事話してみるね」
「ありがとうございます。お陰で色々分かりました」
「役に立てたみたいで良かった。お互い、恋人の為に頑張ろうね」
泰輝さんはそう言ってニコッと笑った。
_________
家に帰り、自分の部屋に入る。
ローテーブルでパソコンを弄っていた陽煌さんは俺に気づくと、笑顔で言う。
「泰輝。おかえり」
「ただいまです。仕事ですか?」
「うん。昨日の仕事がちょっと残っててさ。もう終わるけどね」
「そうでしたか。あと少し頑張ってください」
「ありがとう。終わったら今日の話聞かせてね」
陽煌さんはそう言ってニコッと笑う。
「はい」
俺がそう返すと、陽煌さんはパソコンの画面に視線を戻した。
俺は立ったまま、パソコンに文字を打ち込んでいる陽煌さんを見つめる。
普段からかっこいいけど、集中した陽煌さんはもっとかっこいい。
(会社でもモテてるだろうな…)
陽煌さんはかっこいいし、俺じゃなくても、相手なんていくらでも居るんだろうな。
だからもし、俺が陽煌さんに嫌われても、陽煌さんは大丈夫だ。ただ、俺が悲しくなるだけだから。
「泰輝」
いつの間にか、陽煌さんがこっちを見ていた様だ。
「はい」
「そんな突っ立ってたら、足疲れちゃうよ。そこ座りな」
陽煌さんは自分の向かいを指さして微笑む。
「はい」
俺はそう返事して陽煌さんの向かいに座った。
陽煌さんは俺が座ったのを見て、再びパソコンの画面に視線を戻す。
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こうやって優しい一面もあるのにな。
陽煌さんと陽雅さんの間に何があったのだろう。
そう思っていると、陽煌さんがパソコンを閉じ、フーっと息を吐く。
「終わりましたか?」
「うん。終わったよ」
「そうですか。お疲れ様です」
「ありがとう。それで、恭也くんと何話したの?」
「あぁ…陽雅さんの様子を聞かれました。今は少し距離置いてるみたいなので」
(陽雅さんの様子聞かれたのは嘘だけど…)
陽煌さんは納得したような表情を浮かべる。
「そっか。他には何か話した? 例えば俺の事とか」
「えっと…実は陽煌さんの事聞かれたんですけど、適当に答えときましたよ」
「へぇ。何聞かれて、なんて答えたの?」
少し怖い、逆らえなくなりそうな目。
「陽煌さんがどんな人かって聞かれたんです。だから、かっこよくて優しくて頼りになる人だって答えました」
「ちゃんと上辺の俺で答えてくれたんだね」
「いや、俺にとっては本当の事なので」
俺の言葉を聞いて、陽煌さんは一瞬、目を大きくする。
「へぇ〜。泰輝って俺の事そんな風に見てくれてたんだね」
「はい」
「後は何か聞かれた?」
「陽煌さんと陽雅さんの事も聞かれたんですけど、昔から仲良いって言っときましたよ。これも本当の事ですもんね」
「そうだね。陽雅は俺の事、大好きだから」
陽煌さんはそう言って嬉しそうに笑う。
そんなに嬉しそうな顔をするのに、どうして陽雅さんの不幸を願うのだろうか。
「あの、ずっと気になってたんですけど」
「うん。何?」
「なんで陽煌さんは陽雅さんが幸せになるのが嫌なんですか?」
その質問で、陽煌さんの表情が曇る。
「…陽雅が悪いの。俺の幸せを奪ったから」
「幸せを…奪った?」
「…この話、やめよう。それより、恭也くんにちょっかいはかけてくれたの?」
「あぁ…それが、帰りにホテルに連れてって陽煌さんみたいにキスマークとか付けようかなって思ってたんですけど、普通に断られちゃって。カフェでお酒無かったから、酔わせて連れてくことも出来なかったですし」
俺がそう言うと、陽煌さんはフフッと笑う。
「泰輝は慣れてないもんね。いいよ。よく頑張ったね。後は俺がやるから大丈夫だよ」
陽煌さんがニコッと笑う。
やっぱり陽煌さんは、俺の事を信用してくれる。
俺が裏切るなんて、思ってないんだろうな。
胸がギュッと苦しくなる。
「…ありがとうございます」
「うん。泰輝、カフェで何か食べた?」
「あ、いえ。コーヒーしか頼んでないので」
「そっか。俺、そろそろお腹空いてきてさ。お金は俺が出すから、泰輝が好きなあのお店行こうよ」
「いいんですか?」
「うん。泰輝頑張ったから、ご褒美」
「ありがとうございます」
陽煌さんと外食なんて、久しぶりだな。
そしてもしかしたら、最後かもしれない。
「じゃあ、準備して行こっか」
陽煌さんのその言葉に、俺は頷いた。
家を出て、陽煌さんと一緒にお店に入る。
このお店では、沖縄料理が食べられるのだ。
ここで俺がいつも頼んでいるのが、ゴーヤチャンプルー。
ここのゴーヤはとても苦い。
でも俺は、その苦さが好きなんだ。
席に座ると、陽煌さんが言う。
「今日もゴーヤチャンプル?」
「はい」
「じゃあ、俺もそうしようかな」
「結構苦いですけど、大丈夫ですか?」
「うん。今日はなんか、泰輝と同じのにしたくて」
陽煌さんはそう言ってニコッと笑う。
陽煌さんを裏切る覚悟は出来たのに、そんな顔をされると、もっと一緒にいたくなってしまう。
でも俺はもう、変わるって決めたから。
「そうですか。じゃあ、頼みますね」
「うん。よろしく」
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みぅです🤍🥀 第49話、読み終えました…。 泰輝さん、陽煌さんに「俺は変わるって決めたから」って思ってるのに、一緒にゴーヤチャンプルー食べに行くシーン、切なすぎました…。 陽煌さんの優しい顔見ると、もっと一緒にいたくなっちゃうって気持ち、すごくわかるけど、それでも覚悟決めた泰輝さんが尊いです。 ゴーヤの苦さが、今の泰輝さんの気持ちみたいで、胸がぎゅっとなりました…🌙 灯依さんの描く闇と優しさのバランス、本当に好きです。