テラーノベル
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ゴーヤチャンプルーを注文し、運ばれてくる。俺達は手を合わせて「いただきます」と言った後、箸を取る。
一口食べると、口の中に苦味と旨味が広がった。
旨味もあるけれど、苦味がすごく強い。
この味が、陽煌さんの血に少し似ているのだ。
陽煌さんの血はもっと苦いけれど。
「苦っ」
向かいに座る陽煌さんがそう言う。
「だから言ったじゃないですか。すごい苦いって」
「泰輝はこんなに苦いのが好きなの?」
陽煌さんは不思議そうに俺を見る。
「はい。苦いのがいいんです。俺は」
昔は別に苦いのなんて好きじゃなかった。
でも、陽煌さんの血を飲んでから、俺は苦い物が好きになった。
これはきっと、いや絶対に、陽煌さんを好きなせいだ。
「そっか。俺は甘い方が好きだな」
「じゃあ、無理して食べないでください。俺、二杯くらいなら全然食べれますよ」
「ううん。食べる。泰輝と同じのがいいって言ったでしょ?」
陽煌さんがニコッと笑う。
「それならいいんですけど」
俺がそう言うと、陽煌さんは再びゴーヤチャンプルーを食べ始める。
そんな陽煌さんを見て、俺もゴーヤチャンプルーを食べ始めた。
_________
ベッドの上で寝転んだまま、ただボーッとする。
零斗が出ていってから二日経ったけれど、なんの気力も起きない。
零斗だけじゃなくて、快くんと恭也も傷付けてしまった。
恭也はきっとしばらく俺に会ってくれない。
やっぱり俺は、恋人なんて作っちゃいけなかったんだ。
ふと、コンコンと扉を叩く音が聞こえる。
そして扉の向こうから声がした。
「陽雅さん。入っていいですか? ちょっと話があって」
(話…)
なんの話だろうか。
もしかしたら、泰輝もここから出ていくのかもしれない。
俺は聞こえないフリをして、布団にくるまる。
「…すみません。勝手に入りますね」
そう聞こえた後、扉が開く音が聞こえる。
そして、足音がこっちへ近づき、間近で止まった。
「陽雅さん。俺の話、聞いてください」
「…泰輝も俺と絶交したいの?」
「え? 何言ってるんですか。絶交なんてしないですよ」
「でも、泰輝も見てたでしょ。俺はみんなを傷つけた。あんな俺、嫌でしょ?」
「それは陽雅さんのせいじゃないです。だから話聞いてください」
「俺のせいだよ。全部俺が悪い」
少し沈黙が走ったあと、布団をガバッと退かされる。
視界がパッと明るくなり、泰輝の姿が見える。
「陽雅さん。そうやってすぐ自分を責めないでください」
「だって、本当に悪いのは俺だから」
「俺の話聞いたら、そんな事思わなくなりますよ」
「でも俺は…」
「恭也くんのキスマ、誰がつけたか知ってるんです」
心臓がドクンと高鳴る。
「誰なの?」
思わずそう聞いていた。
泰輝は黙り込む。
「泰輝?」
「…陽煌さんです」
「え?」
嘘だ。信じられない。
兄ちゃんが恭也に手を出したなんて。
「信じられないかもしれないですけど、本当なんです」
「…泰輝も兄ちゃんの事悪く言うの?」
「悪く言ってるんじゃなくて、本当なんです」
泰輝は真剣そうな目でそう言う。
違う。兄ちゃんな訳ない。
なんでみんな兄ちゃんを悪者にしようとするんだ。
だって兄ちゃんは、優しくて、いつも俺の事見てくれてて、俺が間違ってたら、正しい方に道を正してくれる。
「…嫌だ。そんなの信じない」
「ちゃんと考えてみてください。陽煌さん、異様に快くんのせいにしようとしてたじゃないですか。そのせいで今こうなってるんですよ?」
たしかに兄ちゃんは、快くんが怪しいって言っていた。
零斗に言った言葉も、ほとんど兄ちゃんが言ってた事を繰り返しただけだ。
でもそれは、兄ちゃんが本当にそう思ってたからで、こんな事になるなんて思ってなかったはずだ。
(そうだよね…? 兄ちゃん)
「…兄ちゃん、今日も来る?」
「来ると思いますよ。最近は陽雅さんの様子見るために毎日来てるので」
「そう。俺、兄ちゃんに聞いて確かめてみる」
「だったら、手は絶対に触らせないでください。ドルの力使われるので」
「え? 兄ちゃんのドルの力の発動条件は、俺と同じ”耳元で囁く”のはずだけど?」
俺は、不思議に思ってそう問う。
「それはこっそりドルの力を使うためのカモフラージュです。陽煌さんの発動条件は”手に触れる”ですよ。別に本人に聞いた訳じゃないですけど、見てたら気付きました」
「でも…兄ちゃんの発動条件はお父さんから聞いたんだよ? お母さんもそう言ってたし、違う訳ない」
「じゃあ、陽煌さんはちっちゃい時からみんなを騙してたのかもしれないですね。それか、後からドルの力で陽雅さんの記憶を操作したかです」
「兄ちゃんが…?」
「はい。陽煌さんなら全然有り得ると思いますよ」
泰輝は真剣な眼差しでそう言う。
兄ちゃんのドルの力の発動条件が”手に触れる”だなんて聞いた事ない。
今までの兄ちゃんとの記憶を辿る。
色々思い出している内に気づいた。
兄ちゃんは俺が小さい時、いつも手を繋いでくれた。
俺と話す時は大体手が触れていた気がする。
この前快くんの話をした時もそうだった。
そして兄ちゃんからはよく、ドルの力を使った時のオーラが見えた。
兄ちゃんはゲームで言うバグみたいな物で、使ってなくても見えちゃうって言ってたけど、思い返してみれば、それにしては数が多すぎる。
泰輝の言っている話は、怖い程に辻褄が合っている。
「…分かった。手は触らせない」
泰輝は俺の言葉を聞いて、安堵した表情を浮かべる。
「俺も付き添います。何かあったら怖いので」
「いいの?」
「はい。部屋じゃなくて、リビングで話してください。個室は危険なので」
「分かった。そうする」
「それと、まずはご飯食べてください。『腹が減っては戦ができぬ』ですから」
泰輝はそう言って、ニコッと笑う。
そんな泰輝に俺は微笑む。
「そうだね。行こっか」
そして俺達は部屋を出ていった。
その日の夜。
ソファーに座って兄ちゃんが来るのを待っていると、リビングの扉が開く。
そして兄ちゃんが入って来た。
「泰輝。部屋、行こ」
兄ちゃんはいつも帰ってくるとすぐに泰輝を連れて部屋に行く。
でも今日は、俺が兄ちゃんと話さないと。
俺は、隣に座る泰輝とアイコンタクトを取った後、立ち上がって兄ちゃんの元へ行く。
「兄ちゃん。ちょっと話したい」
「いいよ。部屋、行こっか」
「ここで話したい。別に泰輝に聞かれて困る話じゃないから」
「そう。分かった。それで、どうしたの?」
俺は深呼吸をした後、口を開く。
「恭也にキスマ付けたの、兄ちゃんなの?」
兄ちゃんは一瞬驚いた顔をした後、笑顔で言う。
「何言ってるの。前言ったでしょ。あれは快くんがやったんだよ」
兄ちゃんは俺に近づき、俺の手に自分の手を近づける。
そんな兄ちゃんを見て、俺は咄嗟に手を後ろにやった。
「陽雅、どうしたの?」
「ドルの力使うの?」
「違うよ。ちょっと手触るだけ」
そう言って兄ちゃんは俺に手を差し出す。
「俺の事騙してたの?」
「なんの話?」
「ドルの力の発動条件、本当は″手に触れる”なんでしょ?」
俺の言葉を聞いて、兄ちゃんから笑顔が消える。
「なんでバレたかな。まぁいいや。泰輝、ちょっと陽雅の体抑えててよ」
兄ちゃんがそう言ったが、泰輝はソファーに座って俯いている。
「泰輝、何してるの? 早く来て」
「…俺が言いました。キスマの事も発動条件の事も」
「え?」
兄ちゃんは、驚いた顔で泰輝を見た。
コメント
1件
えっえっえっ!!?!?!?!?😱💦 第50話でまさかの急展開すぎるんだけど!!陽煌さんの発動条件がずっと“手に触れる”だったなんて…しかもそれを小さい頃から隠してたってヤバすぎるでしょ!!泰輝くんがずっと陽雅さんを守ろうとしてたのが伝わってきて泣ける😭💕 陽煌さんの「なんでバレたかな」の瞬間の笑顔消えるとこ、背筋凍った…!次が気になりすぎるよ〜!!🆘🔥
haru
46
ラムネ@夏目様教者
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