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そこから先のことはよく覚えていなかった。気がつけば自分の家にいて、私の体はベッドに沈んでいた。
多分、タクシーを呼んだんだと思う。途中、運転手さんが私の様子に「大丈夫ですか?」と聞いた気がするが、何て返答したのかすら記憶にない。
「……ふぅ。」
部屋の明かりもつけずにひたすら目をつむる。きっとこんな風になるのは疲れてるからだ。
さっさと眠ってしまえば明日には忘れている。そう思いながら。
…ところが、いくら時間がたっても一向に眠気は襲ってこない。常に私の頭には、店長のあの時の表情が離れない。
表情だけじゃない。声のトーン、言葉も全てが私の心を支配している。
(あんな店長…初めて見たな。私…怒らせたんだ。…何。雛瀬さんのために怒るって。私より味方しちゃって。やっぱり美人だから?男に怒られたことなんて一回もなかったのに。…ムカつく。って…)
そこまで考えて枕に顔を埋める。また、店長のことを考えてしまった自分がいる。
この気持ちは一体何なのか分からない。ただただ、さっきのことを思い浮かべると例えようのない感情が溢れてきた。
(何なの…。訳が分からない。でも…この気持ちを一人で抱えている限り、ずっと眠れない…気がする。)
そう、このままではまたモヤモヤしてしまう。悪循環だ。店長のことなんてどうでもいいが、それでは私の身体がもたない。
(どうすれば……。…あ…。)
そんなとき、ふと思い出した人物。私は思わず携帯を取り出し、画面に触れる。
そして連絡帳を開き、そこに出た名前を表示する。
友達も家族も繋がりが薄い私が、唯一登録した番号。恐る恐る、タッチした。