ーートゥルルルーー
無機質な天井を見上げながらじっと繋がるのを待つ。この瞬間だけ、時が止まったように長かった。
ーーガチャっーー
『…もしもし。…美里亜?電話なんて珍しいじゃん。』
少し低めのハスキーボイスが私の耳を霞める。
「姫菜…」
その瞬間、強張っていた心が一気にほどけていくのを感じた。
この感覚…安心感だ。自然と笑顔が溢れる。
何故、こんなにも安心するのだろう。
「ん。ごめん、こんな遅くに。寝てた?」
『いーや、全然。あたしが夜行性なのは知ってるでしょ?』
「あはは、そうだったね。今は、自宅?」
『なわけないでしょ。男の家。ま、ヤらせてあげるのと引き換えに避難させてもらったんだけどね。』
「そっか。てか、そんな時にごめん。」
『あ、気にしないで。もう終わって今はぐっすり寝てるから。』
「…どんな会話だし。」
何気ない会話が私を安らぎに導いていく。
『てか、美里亜何かあったんでしょ?だからいきなり電話かけてきたんだよね?』
「っ……」
鋭い言葉とは裏腹に、声の響きは優しい。だからだろうか。
「何で…分かったの?」
素直な言葉が自然と出てきたのは。受話器越しに、くすくす笑っている気配がする。
『さあね。何となくかな。』
からかうような口調ではぐらかされてしまう。その軽口が、私を楽な気分にさせた。
さっきまで暗く沈んでいた気持ちがうそのよう。まだ何も話していないのに。
『で?どうしたん?話してみなよ。』
「あ…え…と…。」
いざ、口を開くと短い声しか出てこなかった。恐らく、人に聞いてもらうのは初めてだから何から話していいか分からないのだろう。
そもそも私には、どうしてこういう時に姫菜を頼ったのかすら理解できてないのだ。
色々な気持ちが入り交じり、しどろもどろになっていると、向こうで姫菜が笑う声が聞こえた。
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