サイド タエ
親のことを思い出そうとすると、いつも頭が痛くなる。
思い出したくないのか、それとも思い出せないだけなのか、私には分からない。
私は、私の産まれた意味を、想いを、歴史を知らない。親の顔も、本当の誕生日も、本当の名前も、知らない。知ることが、出来ない。
それが昔はとても辛かった。
雨が降った日、咲き誇る紫陽花の下に捨てられた。『××をよろし×お願××ます』雨粒で滲んで読めなかなった私の名前。かろうじて読めた糸編と草冠の文字から、“結花”と施設の人が付けてくれた。
「嫌……!」
「施設育ちのユイカちゃんのせいだー!」
「ユイカって要らない子なの?」
「…………っ、ごめ……なさ……」
「親がいない病が移る!」
「捨てられたって、ゴミと一緒じゃ〜んww」
「ぁ…………ゃめて…………」
「捨てられたから、どうせ必要とされてないんだろ?w」
「……、ごめん、なさ……っ」
「だからあなたは捨てられたのよ!」
「ぁ………………」
私が全部悪いの。だけど、生きたい。生きて“幸せ”になりたい。
捨てられた私は、そう思うことさえ許されないの?
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……!
サイド タエ
「ん…………」
夢、だったのかな。久しぶりに見た気がする、自己嫌悪の夢。
「キノが……ダイキが、私を助けてくれたんだよね」
小学生の頃の話だから……もう、四、五年前になるのかな。
あの頃から、ダイキは私のヒーローだった。
忘れっぽいダイキは覚えてないかもしれない。だから、私が忘れないようにしよう。いつまでも覚えていよう。
覚えている?って問いかけて、一緒にあの頃を思い出せるなら、私はそれだけで“幸せ”なんだ。
ねぇ、ダイキは覚えている?
初めて会ってあの日のこと。
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