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ドM☆
20
朝起きると、体が動かなかった。
不思議に思ってうっすら目を開けると、綺麗な顔がすぐ目の前にあって、胸がドキリとした。
抱きしめられている。
恥ずかしさに耐えきれずタイキは体を捩った。
『う…重い…はなせ…』
「…」
離そうと体を押すと、逆にさらに強く抱きしめられた。
『くるし…』
「…」
ルイの足がタイキの体に巻き付く。
『…おまえ、起きてるだろっ』
「…ふっ」
ルイはニコニコしながらタイキの顔に頬をスリスリした。朝からご機嫌なルイに安心して、 タイキは諦めて自由にさせた。
『…今日は夢見た?』
「いいやー。タイキのおかげで、ぐっすり眠れたよ」
『そっか。…よかった』
優しいタイキの言葉に気を良くしたルイは、タイキの頬っぺたにキスをした。
『…おいっルイ…っちょっと待って…』
抵抗するがルイはさらにペロペロとタイキの顔を舐める。
『や、やめろ…っ』
「…えー。でもタイキ、昨日ルイに触られたら気持ちいいって言ってなかった?」
『は?おまえ、それ…なんかちがう』
「んー」
さらにキスしようとするルイを、タイキは慌てて制止した。
『…今日も異常はないみたいだな』
タイキは 健康チェックを終えると、持っていた紙に今日の数値を記録した。
素直にされるがままになっていたルイは、その様子を嬉しそうに眺めていた。
「タイキー俺なんか熱っぽい」
『ん?でも今体温測ったろ?』
タイキはルイの額に自分の手を当てて体温を測った。
『熱はなさそうだけど』
「えーでも熱い。特に体の中心が」
『…おまえ、俺は真面目にやってんだぞ」
タイキは呆れて荷物を片付け出した。
「帰っちゃうの?」
『うん。ルイも今日仕事でしょ?』
「あーうん。まぁね」
『モデルだっけ?すごいなぁ』
「そんなことないけど…そうだ!撮影見に来ない?」
『え?いいの?』
「うん!俺の専属の医者みたいなもんだし」
『行ってみたい!』
「やった!」
嬉しそうにはしゃぐルイを見てタイキはニッコリ微笑んだ。
カシャッ
カシャッ
眩しい光に照らされて、その度にルイがポーズをとる。
長時間の撮影でもルイは疲れを見せず、常にスタッフに向けて明るく気を配っていた。
(かっこいいな、ルイ)
タイキの心の声が聞こえたように、ぱちっとルイと目が合う。
ルイは嬉しそうにニコッと微笑んだ。
(…なんだ?この気持ちは…)
胸がキュッと締め付けられる。甘い痛みと温かい感覚。
生まれて初めて感じた感覚に、タイキは戸惑った。
(そろそろ帰るか)
【ルイくん、体調悪いってきいたけど、戻ってきたんだね】
タイキが帰ろうとしたとき、ふと後ろからコソコソと声が聞こえてきた。
【この業界入れ替わり激しいから、無理にでも出るしかなかったんじゃない?】
【この前調子悪くて、カメラマンに怒られてたよね】
【撮影の途中で倒れたこともあるらしい】
【なんかストーカーに付き纏われてたって聞いたけど】
【えー私はファンの子に無理矢理襲われそうになったって聞いたよ】
【いろいろ大変ね】
噂話にタイキは眉を顰めた。
(ルイ…そうか、おまえはそれで…)
撮影を続けるルイの姿から目が離せなかった。
結局、タイキは最後まで撮影に付き合い、2人は一緒に帰り道を歩いていた。
「…」
ルイは撮影後、俯いたままで歩いている。
タイキは少し後ろからその背中を見つめていた。
『…ルイってすごいんだな』
「…」
『あんなかっこよくポージングできるなんて、俺思わず見惚れちゃった』
「…今日は付き合ってくれてありがとな」
明るく喋ってはいたが、落ち込んでいるのは明らかだった。
『…おまえ、もしかして聞こえてたの…?』
「…俺が弱いから。少しのことでも気になって、眠れないことも多くて…だから病気になっちゃって…」
『病気になったのはおまえのせいじゃない』
「…」
『俺がついてるから、おまえはもう大丈夫だ』
「…うん、ありがと」
『任せろ』
頼もしいタイキに、ルイは小さく笑った。
2人で並んで歩いていると、ルイの足が突然ピタリと止まった。
「…なんで」
青ざめた顔のルイ。何かを見つけて体を震わしている。
タイキの腕の機械がアラーム音を発した。
『ルイ…?』
「…っタイキ、逃げないと…っ」
目線の先には複数人の人物が歩いていて、ルイがどの人物に反応したかはわからなかった。
『行こっ!』
タイキはすぐさまルイの手を取り、反対方向へ走り出していた。
ルイはタイキに手を引かれながら、その必死の後ろ姿を驚いて見つめていた。
走りながら、だんだんと恐怖ではなく、温かい感情で溢れていく。
繋いだ手が温かい。
『ハァッハァッ』
「ハァッハァッ」
ルイのマンションまで全力疾走で走った2人は息を切らしていた。
「ふっははは」
突然ルイが笑い出す。 タイキは不思議そうにルイを見た。
「タイキ必死すぎだろ」
『なっおまえなぁ』
「ははっ」
タイキは腕の機械を見た。まだ少し荒れているものの、先程よりだいぶ落ち着いている。
「タイキ…今日も泊まってくれる?」
ルイが不安そうに言った。
『いいよー』
明るくなんともないように言うタイキ。
気を遣ってくれていることにルイは気づいていた。
「ありがと…毎日ごめんね」
『友達の家に泊まるのに、謝るやついるか?」
「…友達?」
『患者とヒーラーである前に、俺たちもう友達だろ?』
「…」
ルイはしばらく黙って立ち尽くしていた。
「…ちがう」
『え…?』
『俺はおまえを、友達とは思わない』
ルイの言葉に、タイキはショックで言葉を失った。
コメント
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うわ、もう朝からあの距離感…!抱きしめられてるのに気づいても、ルイが起きてるってバレてるのに無視してスリスリしてくるの、ずるすぎる(笑)でもタイキが「友達だろ」って言った瞬間のルイの「ちがう」、あそこは本当にどきっとしたな。ずっとふわふわした甘さの中に、確かに“友達じゃない”線を引いてくるルイの真剣さが一気にドラマを引き締めてる。撮影現場の裏で聞こえた噂話も、ルイの弱さを知るきっかけとして効いてたし、なにより「タイキおまえがついてるから」って信頼し合ってるところに、あの最後の一言が刺さる。次の展開が気になりすぎる。