休日の昼前。
スーパーの自動ドアが開くと、冷たい空気が流れ出てきた。
「寒…」
らんが肩をすくめる。
「上着持ってこいって言っただろ」
いるまは買い物かごを持ったまま言う。
口調はぶっきらぼう。
でも歩幅は、らんに合わせて少し遅い。
二人は並んで歩く。
肩がぶつからない距離。
でも離れもしない距離。
らんはカートの端に軽く手を置いて、売り場をきょろきょろ見ている。
「これ安くない?」
「それ昨日も見た」
「覚えてるの!?」
「……うるせ」
そんなやり取りが自然に出る。
演技じゃない。
意識してない。
ただの“いつも”。
レジ前で並ぶ。
らんが無意識に、いるまの服の裾をちょっとだけつまむ。
人混みが苦手な癖。
自分でも気づいていない。
いるまは一瞬視線を落とす。
何も言わない。
振り払わない。
ただ、少しだけ立ち位置を前にずらして、人の流れかららんを隠す。
後ろに並んでいた主婦が、ふっと笑う。
「仲いい兄弟ね」
その一言。
空気が止まる。
らんの指先がぴくっと動く。
いるまの喉が小さく鳴る。
否定、できた。
他人です、って言えた。
でも。
「……まあ」
小さく返す。
肯定でも否定でもない。
でも、拒まない音。
らんの指先の力が少し強くなる。
スーパーを出る。
外の空気。
しばらく無言で歩く。
「……さっきの」
らんが言いかけてやめる。
「なに」
「なんでもない」
でも、顔は少し赤い。
嬉しいのを隠しきれてない。
(違う、はずなのに)
血が繋がってるわけじゃない。
名前だって違う。
でも。
さっきの言葉は、嫌じゃなかった。
むしろ、胸の奥が少し温かくなった。
風が強く吹く。
らんがよろける。
反射で、いるまの手がらんの腕を掴む。
「前見ろ」
「……うん」
手はすぐ離れる。
でも、その一瞬で十分だった。
家族、という言葉はまだ重い。
でも。
並んで歩く速度。
何も言わなくてもわかる間。
無意識に守る動き。
それはもう、他人の距離じゃなかった。
夕方の光が、二人の影を並べる。
長さは違う。
形も違う。
でも、同じ方向に伸びている。
境界線はまだある。
だけどその線の外側に、
もう二人で立つ場所ができ始めていた。
とーこしすぎちゃう?これ






