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「全て、なかったことに。」
「今まであったこと、君と僕が話してたことはなかったことにしよう。」
本当に君の幸せを願うなら、僕は君の傍にいない方がいいんだ。
勿論僕が君を忘れることなんてないけど、君は僕のことなんか忘れてもっといい人と結ばれた方がいいんだよ。
僕のこの気持ちは、全部なかったことになるんだ。
「…何、馬鹿な事言ってんだよ。僕は、僕は、君が傍にいてくれないと幸せになんてなれないよ。
ねえ、一緒にいてよ。ずっと僕の傍にいて、もっとお話しして。君以外見えない。君だけを愛してる。
僕はもう君に染まってる。君は僕だけのもので、僕は君だけのもの。だから、お願いだよ。傍にいて。」
僕は必死になって君にそう言う。
多分、今の僕は涙を流していて、とても情けない顔をしているだろう。
君に、幻滅されるかな。僕がもっと君にいいところを見せてたら、君はなかったことになんて言わなかったんじゃないか。
ーー僕は、君が好きだ。
僕が君にそう言うと、君は悪戯っぽく微笑んだ。
「ふふっ。やっと言ってくれたね。…愛してるよ。」
君はそう言って僕に背を向けた。
「じゃあ。この世界は僕と君だけだ。僕と君以外の全て、なかったことに。」
「うん!…全て、なかったことに。」
お互いにそう言い合うと、君は僕の方を振り返り、手を広げてきた。
僕は君の方に歩み寄り、君を抱き締める。
そして、僕が君に包み込まれると、僕は君の中に溶けそうになった。
「全て、なかったことに。」
君が再びそう呟いた。
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世界中、どこに居たって真っ暗闇。
そんな中で、二人の抱き合っている男の子がいた。
お互いにお互いのことしか瞳に映っていない。
これからも、二人は永遠にああやって抱き合っているのだろう。
だって。
「全て、なかったことに。」
なったのだから。
__END