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「航平と、全然タイプ違うね? なんであんなのと関わってたの?」
「それ、は」
――久世は、五つ年上の上司であった。
学生時代にはバイトに明け暮れて、深く付き合った友人も、もちろん男性も柚には存在しなかった。
仕事上関わることも多く、社内で雑談や、仕事の相談。それがいつの間にか会社の外になって。
休みの日に会うようになって。
柚は初めて、他人と深く関わった。関われた気がした。
「……母以外に、私にも私の世界があるって、そう思い続けていたかったんです」
なぜ、優陽にこんな話をしてしまっているのだろうかと柚は自分自身を疑問に思った。
けれどこんなにも力強い視線で、柚のことを暴こうとする人など、今はいない。
そこに胸を締め付けられるあたり、柚の根端は変わらない。必要と、されたいのだ。
情けないなぁと、力が抜ける。
寄り添ってくれる素振りを見たなら、誰でもいいのだろうか。
「久世さんが、会社以外で会うようになってから変わっていったのはわかってました。でもそれは私が、怒鳴り声とか……そういったものに、驚いて何も言い返さなかったからです。私が彼を、そうさせてしまっていたのかもしれません」
「怒鳴り声? わかりにくいよ」
尋問のような優陽の声は、なぜだか柚に遠い過去を思い出させる。
ぞわりと、背筋に緊張が走るのは、まだ出会ったばかりの男性に君敷かれているからでは決してない。
そのことが悔しかった。
頭の中に過去を思い描くと、目の前の景色は歪む。
すぐに塗り替えられてしまう。
だから、考えないようにしていたのに。
そんなもの無駄だとでも嘲笑うかのように、彼女の存在は柚を支配し続けているのだ。
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