1.突然の発作、迫りくる死の恐怖
撮影の準備が整い始めた頃だった。
その日、奏太はゼミ室で脚本の読み合わせをしていた。
彩映が台詞を読む声を聞きながら、彼は不意に胸の奥に鋭い痛みを感じた。
「……っ!」
激しい痛みが、心臓を握り潰すように襲ってくる。
息が詰まり、視界がぐらつく。
「奏太?」
友の声が遠くで聞こえたが、返事をする余裕がなかった。
喉が焼けるように苦しく、肺がまともに空気を取り込めない。
――このまま、死ぬのか?
恐怖が体を駆け巡る。
誰もが驚き、動揺する中、あかりが駆け寄ってきた。
「奏太! 大丈夫!?」
彼女はすぐに彼の手を握り、懸命に声をかける。
「奏太、しっかりして!」
だが、意識はどんどん遠のいていく。
視界がぼやけ、目の前の光が暗闇に沈んでいった。
――俺は、ここで終わるのか?
まだ、映画を完成させていないのに。
まだ、みんなと一緒に生きたいのに――。
そして、意識が完全に途切れた。
2.目覚めた世界、過去に戻った自分
気がつくと、奏太は見覚えのある部屋の中にいた。
カーテンの隙間から、やわらかな朝の光が差し込んでいる。
胸の痛みはなく、呼吸も落ち着いている。
「……病院?」
起き上がり、あたりを見回す。
しかし、これは病院ではなかった。
これは――自分の部屋だ。
だが、何かがおかしい。
机の上には、高校時代に使っていたノートが積み重なっている。
部屋の壁には、数年前の映画ポスターが貼られたままだった。
まるで、過去の自分の部屋に戻ったかのような感覚。
「……おかしい。」
スマホを手に取ると、画面には**「20××年3月15日」**と表示されていた。
それは、3年前の過去の日付だった。
3.信じられない現実、父の姿
「……どういうことだ?」
混乱しながら部屋を出ると、廊下の向こうから懐かしい声が聞こえた。
「奏太、朝ごはんできてるぞ。」
――父の声。
血の気が引いた。
父は、12年前に亡くなったはずだ。
でも、目の前には確かに生きている父がいた。
ダイニングテーブルで新聞を広げる父。
母がキッチンで朝食を作っている。
何もかもが、12年前の光景そのままだった。
「おい、どうした?」
父が笑顔で声をかける。
「……父さん……?」
震える声で呼びかけると、父は不思議そうに笑った。
「なんだよ、そんな変な顔して。」
これは夢なのか? それとも、本当に過去に戻ったのか?
4.「過去をやり直せるなら」――決意
混乱しながらも、奏太は考えた。
――もし、本当に過去に戻ったのなら。
今なら、まだ映画を撮る前の自分がいる。
病気のことを知る前の自分がいる。
そして、まだ亡くなっていない父もここにいる。
もう一度、やり直せるのではないか?
自分の未来を変えられるかもしれない。
映画を撮るチャンスもある。
もっと長く生きられる方法があるかもしれない。
「……もし、この時間が与えられたものなら。」
奏太は、心の奥で静かに誓った。
――もう一度、人生をやり直す。
――もう一度、映画を撮る。
――そして、大切な人たちと過ごす時間を取り戻す。
この時間を、絶対に無駄にしない。






