どうもこいつとは仲良くなれそうにない。
理由は簡単。美人だからだ。
夜桜は高身長で、前髪パッツンのショートカット。なんで、パッツンがかっこいいんだよ。
切れ長の目は相手を威圧するように鋭く、冷たい印象を抱かせるが、彼女は、その冷たい印象を持って有り余る程の可愛らしい笑顔をよく見せる。
「月陽さんも珈琲飲みに来たん?てか、珈琲好きなの?」
「あ、えっと、こ、珈琲は好き。喫茶店は初めて、かな?」
しどろもどろにならないように、余計なことは一切言わず、聞かれた事だけ話す。
久しぶりの会話で、喉がつっかえるし、焦ってしまって上手く喋れない。
変なやつだと思われて内心で笑われる。そう思ってしまっても無理はなかった。
けれど夜桜は月陽の内心の焦りなんかはどうでも良さそうに軽快に笑うのだった。
「なんで、疑問形!ははは、そうかそうか。ならば私が珈琲はどんなものか教えて進ぜよう!」
と、いって店入って始まったのは珈琲講座ではなくただの愚痴。
かなり癖癖する。帰りてぇえ。
目的とかどうでもいい位には帰りてぇ。
てか、は?なんで私が見ず知らずの自称クラスメイトの話聞かなならんの。
会話自体好きじゃない。自分自身が話が上手という訳じゃないけど、だからこそ分かる。
スムーズなラリーが出来なくて、気まずい。
かなーり帰りたいが珈琲頼んだ手前飲まずに帰るもの勿体ない。何せお金に余裕がある訳では無いのだから。
その間も夜桜の愚痴は続き私はそれをBGMだと思うことにした。
それから1分か5分か、暫くたった頃に店員が珈琲をもってきた。
「本日の珈琲はエチオピア、イルガチェフェです。ごゆっくりどうぞ」
そう言って珈琲カップと、トーストを置いてゆく。どこの国だろうとどんな品種だろうと知ったこちゃない。
そのまま回れ右して、数歩歩いてまた、回れ右した。
さっきとは比べ物にならない程の早歩きで戻ってきた。
ふと、目の前の夜桜を見ると乾いた笑顔をしてた。
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