サイド レン
オレがまだ小さい頃、家の裏に小さな山があったんだ。そこは、オレの遊び場だった。
生き物もたくさんいたし、小川だって流れてた。
近所の子たちと一緒にかくれんぼや、鬼ごっこをして、遊ぶのが楽しかった。
外でばっか遊んでいたからかもしれない。いつのまにかオレは、地形を把握してどこに何があるのかがすぐ分かるようになったんだ。
「レンー!大変だー!」
ある日、よく遊んでいた親友から、この山が取り崩すことが決まったという知らせがあった。
目の前が、真っ暗になった。
「なんであの山なくなっちゃうんだよ!オレも、みんなも、まだあの山で遊んでいてぇ!!」
必死になっていろんな大人に呼びかけた。他の子も、「あの山を無くさないでくれ」ということを訴えた。
「レン。山を取り崩す日程が決まった」
そんな努力を嘲笑うように、父親が淡々と告げた。
「明日の夜8時からだそうだ。……酷かもしれんが、用意しておけ」
「……っ、」
オレは、あの山へ行った。どうにかして取り崩しを中止にしたかったんだ。
だから、オレはしてはいけないことをした。
山中のあちこちに罠を仕掛けた。相手のことを考えられれば以外と簡単だってこと、ユメだってわかってるだろ?
どこにどんな岩や木があるのか、よく知ってる。
だって、ずっと前からここで遊び続けてきたから。
「……おまえも、家がなくなるのは、嫌だよな」
まだ、生まれたばっかの蛇を家に持って帰った。
オレは大人を傷つけた。
警察にお世話になって、母親が泣いて、そのときになってようやく自分のしたことの大きさに気づいたんだ。
だから、あの時決めたんだ。
オレはこの罠を仕掛ける力を誰かを傷つけるためには絶対に使わないって。
誰かを助けるために、誰かを守るために使うって。
……それでも一回失った信用は、たやすく取り戻せないわけで。
だから、オレはクラスで浮いていたんだ。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!