コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
私
また、その症状は植物性アルカロイド系の成分を摂取することで抑えられるため、それによる中毒患者も多い。
泡沫花は別名「水泡花」「泡玉の花」などと呼ばれ、「泡沫」とは水の表面に浮く泡のことを指し、「泡のように消えやすい」という意味がある。しかしそれは同時に「泡の如く頼りないもの」ということでもある。つまり泡沫花病というのは、簡単に言うと「人の気持ちによって生じる花の咲いた場所」なのだ。この病を発症した人間からは、突然草木が生えるのだ。
この病気の原因は不明とされている。しかし最近の研究ではその発症条件がある程度判明しているらしい。それは『恋』だ。恋愛感情を抱いた瞬間に、花が生まれるのだという。しかもただ咲くだけでなく、まるで芽吹くかのように成長し、花を咲かせるというのだ。
では何故そんな現象が起こるのか? それについては様々な仮説が立てられているものの、まだはっきりしたことは何も分かっていないというのが現状だった。
ただ一つだけ分かっていることがあるとすれば、それはどんなに好きになったとしても、絶対に叶わない想いだということだけだ。
その昔……といっても数年前だが、とある地方で小さな事件が起こった。
当時この国を支配していた王が、自身の娘を後宮に入れるために用意した妃候補の一人であった。しかし、その王の正妻は彼女が自分の息子を産んでくれることを期待していた為、彼女に一切の教育を与えなかった。その為彼女は文字を読むことも書くこともできなかったが、彼女なりに必死に学び取り、また類まれなる美貌を持つことから多くの者に愛された。
王の娘でありながら妃になれなかったことに憤った彼女は、王に復讐することを決意した。彼女は王を毒殺しようとしたが失敗に終わるものの、王は彼女のことが気に入ったのかその後も彼女を側に置いていた。
だがある日突然、彼女は自分が何者かによって殺害されたことを知った。犯人はわからないままだったが、王への恨みを忘れられない彼女は死霊となってまで彼に呪いをかけ続けた。
やがて王妃は悪霊となり、国中を彷徨い始めた。そんな時、ある貴族の息子が「妻を殺してほしい」という依頼をした。悪霊となった王妃は彼を殺すことができなかったが、その代わりに彼の魂を地獄へ引きずり込んだ。
それからしばらく経った頃、王妃は再び貴族の元を訪れた。今度は直接殺したのではなく間接的にではあるが、それでも殺してしまったことに罪悪感を覚えた彼は、再び王妃に頼み込み、自分を成仏させてほしいと言った。
こうして、王妃は貴族を殺しに行った。
「あー……やっぱり無理だったかぁ」
「そりゃそうだろ」
「だよねぇ」
僕たちは二人並んで、暗い森の中を歩いていた。
もう日は完全に沈んでいて、空には星々がちらほらと瞬いている。
僕らがいる森――通称『迷いの森』は、名前とは裏腹にあっさりと抜けることができた。
というのも、この森には魔物がほとんど生息していないらしいのだ。
それに加えて、冒険者ギルドによってしっかりと調査が行われていて、道案内の看板なんかもあるらしくて迷うこともなかった。
それにしても、魔物がいないとは不思議なものだね。
さすがは『迷いの森』といったところだろうか。
ともかく、そんなわけで、僕は今こうして無事に王都へ帰還している最中