テラーノベル
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小さい頃から踊ることが好きだった。
だから小学校のときはダンスを習わせてもらえてすごく嬉しかった。
でも、中学生になると家計が厳しいからといってやめさせられた。
私のただ一つの趣味をいつか認めてほしくて、家に誰もいないときは練習を続けていた。
中学2年生の冬、突然父の務めていた会社が倒産してしまって父は仕事を失った。
叔母が仕事を紹介してくれて、家にも住まわしてくれるというから私たちは叔母の家に引っ越した。
ここになれるまでは家で勉強するのであれば、学校には行かなくていいと叔母に言われたので、私は毎日家で過ごしていた。
ただ最近両親が喧嘩することが多くなって、少し家に居づらくなってきていた。
その日も両親は喧嘩していて、疲れ切っていた私はその場にいたくなくて家を抜け出してしまった。
宛もなく夜の街を歩く私の目に小さな公園が飛び込んできた。
人の気配のない、静かな公園。
気づけば私は夢中で踊っていた。
「君、ダンス上手だね。僕と踊らない?」
急に背後からかけられた声。それがあの人との出会い。
お互い名前も、どこに住んでいるかもわからない。
それでもこの人と一緒に踊るのが楽しくて、気づけば毎日のようにこの公園に行くようになっていた。
なんでいつも公園に居るのかは聞いてこない。
ただこの公園に来るといつも現れて、一緒に踊ってくれる。
踊っている間は嫌なことを忘れられるし、なによりすごく楽しそうに踊るこの人と踊れるのがすごく幸せで。
この人と出会って、これまでよりダンスがもっと好きになった。
私の暗い心を照らす、ただ一つの救い光だった。
「明日もここで踊りたいなら好きにしていい」
そういって夜の街に帰っていく、あなたの後ろ姿が遠ざかっていく。
あなたがいてくれれば、私は何でもできる気がした。
そんな幸せな毎日
それだけで良かったのに
ある日いつものように公園から帰ってくると、
両親が玄関に立っていた。
「毎日毎日どこに行ってるんだぁ?答えてみろよぉ」
壁にもたれ、酒臭い匂いをまとわせながら問いかけてくる”父親”。
「引っ越す前までは夜遊びなんてしなかったのに…。夜は危ない人もいるんだからもう、出かけたらだめよ?わかった?」
眉を下げて、形だけ心配そうにこちらを気遣うような顔をする”母親”。
「…はい」
「いい子ね」
前々から叔母の家から引っ越すという話がでていて、両親はこれを機に私の夜遊びをやめさせるつもりらしい。
そうして私はあの人とはもう会えなくなった。
コメント
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第10話、読ませていただきました。夜の公園で出会った相手と、言葉も名前も知らないまま踊る日々——その一瞬だけは嫌なことを忘れられるって感覚、すごく胸に響きました。「あなたがいてくれれば何でもできる気がした」という一文が特に切なくて。両親の酒臭い詰問と形だけの心配の対比も、主人公の居場所のなさがひしひしと伝わってきます。また新しい街で、あの日の踊りを思い出せるといいですね…🌷
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