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ふぃる汰
2,015
それから半年。
中学校には入っていなかったが、勉強はしていたのと元の頭がそんなに悪くはなかったので、無事に最寄りの高校に合格することができた。
そして今日は高校1年生になる日。
入学式のあとに行われた催しでダンス部が踊ることになっていた。
舞台に上がるダンス部のメンバー。
ひと際目につく茶髪の見覚えのある人がセンターに立つ。
(え、あの人ってまさか…)
そのセンターを努めていたのは、私を救ってくれたあの人だった。
そして始まったダンスは言葉では言い表せないほどにすごくて。
すごく楽しかったあの人との思い出が溢れてきて。
もう一度、あの人とあの頃のように踊りたい!
私は強くそう願った。
ただいくら父親が仕事をしているとはいえ、その父親がお酒に使ってしまうため家はそんなにお金があるとは言えなかった。
部費やら色んなところでお金がかかる部活には、両親は良い反応を示さないだろう。
それでも期待を捨てきれなくて、家に帰ると部活に入りたいと両親に伝えた。
「あなたは私たちの自慢の娘なのよ。これまでみたいに私たちの言うことを聞いていればそれでいいの。あなたもそのほうが幸せなはずよ」
「俺が16になるころは自分のやりたいことのために働いて金を稼いでいたんだぞ!
俺の金で生活しているやつが甘ったれたことを言うな!」
やはりというべきか、良い反応どころか絶対に無理そうな雰囲気がしている。
だが、ここで諦めたら私の願いはどうなる?こんなチャンスはもう2度とないかもしれない。
「…でも!」
「…ハァ」
反論しようと口を開いたが、母からの冷たいため息で体が動かなくなる。
「どうしたのすず。引っ越す前はあんないい子だったのに夜遊びを始めたと思ったら、今度はたかがお遊びのためにお金を出せだなんて…」
「え?」
「この家にはただでさえ金が無いんだ。お前の遊びなどに付き合ってやる暇はない。
わかったんなら、もうこの話は終わりだ。」
そういってリビングから出ていく両親。
私は本気でダンスをやりたいと思って頼んだのに、それをお遊びと思われていたとは驚きで声も出ない。
それでも私は諦めきれずに、引っ越してから連絡を控えていたおばに部活に入りたいこと、ただ両親から反対されてしまったことを相談した。
するとおばは勉強をこれまでと同じように続けることを条件に、必要なお金は出すことと、両親の説得を引き受けてくれた。
おばから話を聞いた両親はおばを使うだなんてと私に言ってくるようになったが、部活に入ることには反応をしなくなったので、私は晴れてダンス部に入ることができた。
そして待ちに待った部活初日。
軽く説明を受けて今日の活動は終わりだった。
私はあの人と話す機会を伺っていたが、今日は無理そうだと帰る用意をしていた。
「久しぶりだね。」
するとあの日と同じように背後からかけられる優しい声。
「また会えて嬉しいよ。僕ははるか。君の名前は?」
「私は…」
「―を、おいて、いかないでよ」
何処かから声がする。
「すず」
私の大好きな優しい声。
でもなんだか悲しそう。
どうしてそんな声をしているの?
「お願い、起きて…」
―そっか。そうだった。
起きなきゃ。
あの人に会いに。
ちょっと寝すぎちゃったかもだけど。
今、行くね。
コメント
1件
第11話、読み終わりました。半年後の再会シーンから一転、最後の「起きて」という呼びかけで全部ひっくり返る構成、見事でした。「Recuerdos reprimidos」(抑圧された記憶)というタイトルが、この場面転換でようやく効いてくる感じがして、設定好きとしてはニヤリとしました。すずが両親に反対されながらもダンスへの想いを諦めなかった意志の強さ、そしておばの存在が光る回でしたね。次がどうなるのか、気になって仕方ないです。