「えっええっ!!まじ?!まじまじ?!!」
高校生なのに化粧をしている女の子。…名前分からないからギャルでいいか…。
「うんっ。もう私びっくりしちゃってさあ…」
「えっちょ名前聞いていい?」
机に身を乗り出し私の話に興味津々だ。
「”楓果(ふうか)“ちゃんと”道浦”くんだよ。」
私は昼休みに目の当たりにした階段での出来事を話していた。さっき名前言ったんだけどな…
「あっ!ごめん私の言葉足らずだった。あの…あなたーの名前聞いていい?」
あっ…
「えーと。私、美久です。よろしく。」
「私は三葉(みつは)!みっちゃんでいいよー」
もちろんみっちゃんと呼ぶのはハードルが高すぎる。ので、このギャル子を三葉ちゃんと呼びます。……楽しい!!!
私は楽しくて楽しくて…三葉ちゃんと残りの昼休み時間をいっぱいまでおしゃべりをした。
皆に聞こえるぐらい大きな声で話していた。
ねぇ…
皆聞こえる?もっと聞いて!
私凄い所を見たんだよ!
あの2人の関係は恋仲かもしれないよ!
スクープだよ!大スクープだよ!
そして私は、この子と仲良く話してるよ!!
こうして同級生と会話することは滅多にお目にかかれないもので…
私はしばし有頂天になっていた。
登下校の時間になり、私は前の席の子でもある三葉ちゃんに声をかけて…一緒に帰りたいと思った。何せあんなにも楽しかったもんだから…ドキドキと胸を高鳴らし、タイミングを伺い遂に、声をかけようとした…。
今だ…帰りの挨拶が終わった瞬間だ…!
「あっ、ねーねー奈々ちゃーん一緒にかーえろっ」
「いいよー。かーえろっ。てかさ、今日昼休みめちゃ喋ってたじゃん。私一人で弁当食べることになったし。」
三葉ちゃんの友達だ!
私は動かず、意味もなく鞄を漁り始めてしまった。息をするように自身の気持ちを誤魔化した。
彼女からのばいばいの挨拶は無し。何事もなかったかのように遠ざかっていく…
「奈々も入ればよかったじゃん。」
「やだよー。恥ずかしいぃ。私そんなぐいぐい行けない性格だから。あんまり刺激しない方がいいだろなーって思ってたのよ。それに…」
声は遠ざかるが、全意識を会話内容に向ける。
「それに、あの子声でか過ぎーww」
私は下を向いてしまう。自意識過剰だのなんだの声が聞こえた気がした。私は自分がとてつもなく情けなく感じた。
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結局。
そこに残ったのは
いつも通りの私と
皆にとって興味のない失恋エピソードと
“楓果と道浦の恋愛の噂”だった
後者の噂に至ってはたちまち学年中に広まったそれ程皆にとっては大スクープだったのだ。
ちらと横目で楓果ちゃんを見る。気づけば多くの人にあの子は囲まれていた。
私の所為だ。
私じゃない…
私ってばれてない…
ばれてない…………..
私はこの情けない内心を悟られまいとゆっくりと席を立つ。
「あそこの女の子が言ってたらしいよ。」
ドクっ!!!
ッキドッキドッキドッキドッキ….
心臓が突然動き出した。
言わないで
見ないで
こっちを見ないで
私は一点を見つめ、速く..速く教室から出ようと足を動かす…足を動かすが歩いている心地がしない
「あー…そうゆうこと…」
あんまり強く意識していた所為か声が鮮明に耳に届く…
彼女は面倒くさそうに答えていた。
聞いたことのない声のトーンだった。
コメント
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更新ありがとうございます🙇♂️🙇♀️ 第一声は「なっ…なんだと…」でした… 高校生ならではの心理というか、そんな物が働いていて、少し心がチクチクしました😭 物語の裏側というか、お零れ的なエピソードが読めてとても嬉しいです🥺