テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
タイトル 「まだ、終わらせない」
陽が差し込む静かな部屋。
薄く汗ばんだシーツの感触と、微かに残る甘い香り。
(……体、痛い)
昨夜――
嫉妬をぶつけるように、涼架さんは私に触れ続けた。
優しい手つきの裏に、独占欲と執着が隠れていた。
(まさかあんなに……)
首元に手を当てると、
そこにはまだ赤く、指の跡とキスマの痕。
「……もう……やりすぎ……」
ぼそりと呟くと、後ろから気配が近づく。
「え、やりすぎって何が?」
「……っ!」
振り返ると、ベッドの端に座った涼架さんが、
カップに入ったブラックコーヒーを片手に、穏やかな笑みを浮かべていた。
「起きたばっかりなのに、そんなに睨まないでよ」
「……涼架さんこそ……」
顔を背けると、彼はくすっと笑い、
カップを置いてこちらへにじり寄る。
「見せて。ちゃんと残ってる?」
「っ……やめてください……!」
手で首を隠そうとする私の手を、
彼はそっと取り外すように優しく握って、
露わになった跡をじっと見つめる。
「うん、綺麗についてる。……やっぱり俺、センスあるな」
「センスとかの問題じゃなくて……」
「じゃあ、もう一個つけとこうか?」
「やめてってば!」
その反応すら楽しそうに笑って、
彼はベッドに私を押し倒すように覆いかぶさった。
「……ほんと、可愛いね。もっと見せて?」
「……もう、やだ……涼架さん、変態……」
「はいはい、それも昨日聞いた。
何回言われても、俺は君が他の男に向けてた笑顔より、
こうやって俺にしか見せない顔のほうが、好きだよ」
「……っ」
「ねぇ、もう一度だけ、“反省”させようか?」
「……もう十分、したし……」
「そう? じゃあ、”確認”ってことで」
その言葉とともに、
また首筋に、熱く深いキスが落ちた。
――ズルい。
ずるいよ、そんな風に甘えてくるなんて。
だけど、それでも嫌いになれない。
むしろ、どんどん心が満たされていくのがわかる。
(この人は、たぶん……全部知ってるんだ。私の、逃げ場まで)
シーツの中で、ふたたび熱がゆっくりと高まっていく。
「じゃあ……もうちょっとだけ、
君を俺だけのものにするね」