テラーノベル
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病院に行くと言ったはいいものの、何科に行けばいいのか分からず家から1番近い総合病院に行った。
受付を見つけて話を聞いていたら後ろから噂好きの看護師達の話し声が聞こえてきた。
「あれ、赤葦さんちの息子さんじゃない?」
「え〜あんなに大きかったっけ?」
「確かスポーツやってるらしいよ。バスケだっけ?」
「バレーじゃないの?ほら、梟谷行ったんでしょ?あそこバレーで有名だし」
「っていつか今バース性がなんかって聞こえたけど病院来たってことはαかΩってこと?」
「いや、でもこの位の時期に毎年1人は来るのよ。『自分は絶対αだ!』って再検査しに来る子」
「いるいる!そんなことしても結果は同じなのにねぇ…」
そういえば姑が…と話題が変わり俺の話は終わったようだ。
“赤葦さんちの息子”この言葉にどれだけ嫌味がこもっているか、俺は理解している。
αであることを願って再検査なんてお気楽なもんじゃない、こっちはβであることを望んでいるのに。
…噂話にいちいちイラついてるのも勿体ないので受付で案内された所へと向かった。
診察室に入り、医者に言われるがまま再検査を受けたが結果は
「検査結果、Ωです。」
と変わることは無かった。
その後、Ωについて、発情期と抑制剤について、αとの関係性などを説明されたが実感は湧いていない。
いつ発情期が来るか分からないからと処方された抑制剤を受け取ってもしっくり来なかった。
だけどやっぱり高くつくな…
祖父母からの仕送りの大部分は父親のパチンコと母親のホスト代へと消える。
その残りで食費は充分足りていたのだが、これから定期的に薬代がかかるときついかもしれない。
まぁまだ発情期とやらは来てないしその時考えればいいか…
俺、木兎光太郎は後輩であり 俺のセッターである赤葦京治の彼氏である。
初めて赤葦に会ったのは1年以上前の赤葦が部活初日だった時。
赤葦を見た瞬間に こいつだ って思った。
なんか初めてあった気がしないって言うかなんつーか、運命?を感じたんだ。
そして赤葦と一緒にいるうちに気づいたことがある。
それは赤葦がΩだということ。
どうしてそれに俺が気づけたかっていうと、俺がαだったからっていう単純な理由なんだけどね。
俺が自分がαであると知ったのは中三の春だった。
1度目の第二性検査ではほぼ間違いなくβが出ると言われている検査で俺はαだと告げられ驚きはしたけど身近にαがいたからその時はそうなんだ〜としか思ってなかった。
でも成長するにつれそれがどれほど稀なケースかを理解した俺はそのことについては極力話さないようにしていた。
別に隠すつもりはなかったけどαだからできるのかって思われるのが嫌だったから。
話を戻して、俺は赤葦がΩだって気づいていたけど当の本人は自分がΩだとは夢にも思ってないだろう。
俺は正直嬉しかった。
俺がαで赤葦がΩであるということは赤葦と番になれるってことでしょ?
番になれば夫婦として認められるって確か姉ちゃんが話してた。
そして俺は思うんだ。
出会った時のあの感じといい、きっと俺と赤葦は運命の番だって!
そんなの迷信だって赤葦なら言いそうだけど、それでも俺は赤葦に出会えたことが運命だと思う。
赤葦がΩだってことを打ち明けてくれたら番になって欲しいって話してゆくゆくは結婚…!なんて思ってたんだけど…
おかしい!
赤葦が明日検査を受けるって言ってた日から1ヶ月以上過ぎたというのに赤葦から一切連絡が無い。
検査結果は出てるはずなのにどうして?
もしかしてβだった?
いやそれは絶対にない。
じゃあ俺以外に番になりたい人がいるとか…
俺はモヤモヤとしばらく考えてたけど俺らしくないなって思ったから赤葦に会いに行くことにした。
病院からの帰り道。
今日の夕飯何にしようとか母さんはきっともうどっか出かけてるんだろうなとか考えてたところ、
突然後ろから声をかけられた。
「赤葦!」
名前を呼ばれ振り向いた時には既に全速力でこちらに駆けだしていた木兎さんが見える。
「木兎さん?どうしてここに?」
木兎さんの家はこの辺り、俺の家の辺りから電車で三駅くらい。
まさかこんな所で会えるなんて思っていなかった。
「赤葦に聞きたいこと?っていうか話したいことがあって会いに来たの!」
「話したいこと?」
「うん。赤葦、俺に言ってないことあるよね。」
「なんのこと…「誤魔化しても俺気づいてるから」
木兎さんの圧がすごい。
言ってないこと…検査結果のことだろうか。
「ここじゃ寒いですし家で話しましょう。」
とりあえず人がいなくて2人っきりで話せるところに移動することに成功した。
家に帰ると予想どうり母は出かけていたので木兎さんを家にあげた。
「おっ邪魔しまーす!」
そう言いながら脱いだ靴を揃える木兎さん。
ちょっと意外。
「赤葦、口に出てます。」
「嘘っ すみません。ただ育ちがいいんだろうなって思って」
「俺だって家に上がらせてもらう時のマナーくらいはわかるから!」
「じゃあ是非部室やロッカーの使い方も今一度確認してみてください。」
今の会話で少し雰囲気が和らいだ。
そして遂に木兎さんに伝えなくてはならない。
でもあの様子じゃ多分もう知ってるんだろうな…
「木兎さん。」
「うん。」
「あの、俺…その、検索結果、出て…」
「うん。ゆっくりでいいよ。」
「それで、俺…Ω…でした。」
「話してくれてありがとう。まぁ知ってたけどね!」
やっぱり知ってたのか…
「あの、なんで知ってるんですか?」
「俺、αだから!」
おれあるふぁだから…
木兎さんが発したその言葉を理解するまでに時間がかかった。
「マジ…ですか…」
「マジ!それでさ、赤葦。俺と番になって!」
番…とはさっき病院で聞いた医師の説明によるとαとΩの間での契。
主に性行為中にαがΩの項を噛むことで成立する。
…らしい。
「ちょっと考えさせてもらってもいいですか」
「え!?…別にいいけど、何か不満でも…?」
明らかにしょぼくれかけている木兎さんが俺に伺いを立てる。
「違いますよ。ただ、まだ自分がΩだって状況すら飲み込めてないので」
「あっそうだよな…ごめん」
「いえ、でも嬉しかったです。なので前向きに検討させていただきます。」
「…!」
さっきまでしょぼくれてたくせにすっかりいつものハイテンション。
本当に木兎さんらしいな。
「そうだ!赤葦!」
「なんですか?」
「俺 春から一人暮らしするって言ったじゃん?もし良かったら赤葦が卒業したら一緒に住まない?」
「いいんですか…!?」
「うん。一緒に住みたい!」
「俺高校卒業したら出てけって言われてるので困ってたんです。助かります。」
「え?…赤葦、親と喧嘩したの?」
「いえ…ただΩだって話したら金かかるから出てけって」
木兎さんが必死で俺の言った言葉を理解しようとしてる。
自分でも家が一般的な家庭とは少し違うとは思っていたがΩの息子を追い出すのはそこまでおかしいのか?
「そっか…まぁ赤葦が助かるっていうのはいいけど困ってることあったらちゃんと相談してよ!」
「すみません…」
「俺が一緒に住もって言わなかったらどうするつもりだったの?」
「とりあえずバイトして激安アパートとか?」
その後めちゃくちゃ怒られた。
赤葦から無事話してもらうことができて一緒に住む約束まで出来た。
少し心配なのは赤葦の家の事。
前少し聞いたことがあるのは基本親が家に帰ってこないこととお金は祖父母からの仕送りということ。
本人は大丈夫だって言ってたけど、普通 自分の子がΩだったからって追い出すか…?
今まではよそのうちのことに首突っ込むのはなって思ってたけど俺今は未来の旦那様な訳じゃん。
もう少し心配してもいいと思うんだよね…
……To be continued