テラーノベル
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#主人公最強
しめさば
2,152
ラウワ王城を「サクラ帝国(仮)」の拠点として支配し、
奇跡の合流を果たしてから約1ヶ月が経った。
玉座の間は現在、私の執務室兼、
幼馴染たちの溜まり場と化している。
「あー……やっと書類から解放されたわ。……ん? なによこれ」
私は机の端にあった紙束の中から、
一枚の報告書を引き抜いた。
《ダンジョン“奈落の縫い目”にて、
魔王と酷似する魔力反応を感知。詳細は未解析。》
「サクラ、お疲れ様! はい、お茶! あと焼きそばパン食べる?」
カエデが呑気に焼きそばパンをかじりながら、
私のデスクにマグカップを置いた。
「ククク……狂王よ、紙の束に封印されしその姿……
滑稽だな。我のように、ただ深淵を見つめていれば良いものを」
ツバキが玉座の隣で、
無駄にキマったポーズで包帯(眼帯)を押さえている。
「『聖女様、玉座の横で深淵を覗く』……追記せねば!」
ローザが猛スピードで聖典にペンを走らせる。
「あんたたち、居候の分際でくつろぎすぎじゃない?
バイトしろよ?……まぁいいけど」
私はマグカップの紅茶をすすりながら、
改めて報告書に目を落とした。
「……この魔力痕、気になるのよね」
「えっ、それって……」
私の膝の上に座って絵本を読んでいたエスト様が、顔を上げた。
「ほう……奈落の縫い目……。
いにしえの王が遺せし、魔の残滓(ざんし)か……」
ツバキが勝手にそれっぽいルビを振る。
「知らない魔王の残したダンジョン? 魔力付き?
……はい、ワンチャンお宝ルートのやつ」
私はツバキの中二病を完全にスルーして結論を出した。
「そんな雑な表現!?」
エスト様がツッコむ。
私は紅茶をもう一口すすってごまかした。
「まぁ、エスト様の魔力を通じて、
その魔王の力は私にも流れてるはず?
なので、他人とも言い切れないし?
言うなれば私のパパ、ってやつ?
まぁ何か残ってるなら、見て損はないわ」
「じゃあ……その『奈落の縫い目』に行くの?
…行きたい!……パパに、会いたい。」
エスト様の紅い瞳が、期待に輝いた。
「ええ。魔王の痕跡。ついでにお宝が転がってれば一石二鳥」
「やった〜☆ お姉ちゃん! 準備しておくね!」
笑顔でパタパタと走っていくエスト様を見送る。
あの子の素直さは、時に武器になる。
……いや、割と爆弾かもしれない。
「お宝かぁ。食べ物だと良いなぁ。餃子とか。あと餃子とか。」
カエデがのほほんと言う。
「……愚かな。奈落に眠るのは、
我らのような選ばれし者の真の力……!」
「『聖女様、奈落に真の力を予見する』……!」
「よし、じゃあツバキは最前線(タンク)ね」
私は決定事項として告げた。
「いや、ちょっと待って!?
私行かないからね!? 絶対行かないよ!?」
ツバキが急に玉座の柱に抱きつき、
完全に素のトーン(標準語)で叫び出した。
さっきまでの深淵キャラはどこへ行った。
「は? あんた今、選ばれし者がどうとか……」
「あんなのただのノリじゃん! 雰囲気作りじゃん!
『奈落の縫い目』とか名前からして絶対にヤバいモンスター出るやつでしょ!?
暗いしジメジメしてるし、絶対でっかい虫とか出るもん!
私はこのお城で安全にパン食べて暮らすの!!」
「おお……! 聖女様はあえて危険な奈落を避け、
この城(聖域)を守り抜くというのですね……!」
ローザが感動しながらメモを取る。
「ローザは黙ってて!
っていうかあんたも王国に帰っていいから!
私は何があっても絶対にこの柱から離れないからね!!」
「……へぇ。離れないんだ」
私はチャリン、と親指で刀の鍔を弾いた。
「はい! すぐに行きましょう!」
ツバキは爆速で柱から離れ、直立不動で良い返事をした。
「はい。ツバキがアイテム枠にINしました」
私はニヤリと笑った。
「アイテム扱い……」
ツバキはガクッと膝をついて床に崩れ落ちた。
「消費アイテム:うるさい偽聖女(レア度:呪い)」
「呪われてるの!? 捨てられないやつじゃん!!」
ツバキは床をバンバン叩いた。
そんな騒がしいなか、玉座の間の重厚な扉が開いた。
「──サクラ殿、ただいまバイトから戻りました!
急いで洗濯しますので、洗いたいものはこのカゴまで!!」
辰夫が慌ただしく登場した。
退職届を出して家出騒動を起こし、
居酒屋でビームを食らいながらも雨の中向かったバイトを終え、律儀に帰ってきたのだ。
一応伝えておくと、
彼は本来“リンドヴルム”という名の竜王だった。
今は接客業のバイトと、私たちの家事をこなしている。
誰がこうしたのか? 私だ。
その後ろから、辰美がカバンを抱えてスキップしてくる。
「サクラさーん! ダンジョンでしょ!?
冒険でしょ!? やったー!
私の爆炎で久しぶりに燃やし尽くしていい?」
「辰美はストレス溜まってる?」
「だって、サクラさんが行くダンジョンってさ……
なんか、ただのダンジョンじゃ終わらないって感じ、
するんだよねぇ」
辰美は、うっとりとした表情で嬉しそうに言った。
「……変なフラグ立てないでくれる?」
「我は遠慮しておきます。夜もバイトがありますゆえ」
そう言うと辰夫は深く一礼をし、
スッとその場を去ろうとした。
「うるせー!来い。選択肢は無い。」
「お断りします!辰夫ロケットするし!辰夫シールドするし!
だいたい、サクラ殿とエスト殿がノリノリの時は、
ろくなことが起きないんですよ!絶対トラブルが起きます!」
辰夫は意を決したように私を真っ直ぐに見た。
「……それに……
サクラ殿と食べるご飯は……味がしないんです……。
本当に、何も感じないんです……
バイトに行きたい! 行かせてください!
賄いが出るんです……美味しい……味がするんです!
みんな優しいんです!
……賄いは……温かいんです……(震え声)」
「……」「……」
見つめ合う私と辰夫。
(沈黙)
「……へぇ?そうなんだ」
震える辰夫を見つめ、私は静かに答えた。
「た、たまに味は感じますが、
全て“熱くて辛い”のです……!」
「お姉ちゃんをディスってて笑うw」
エスト様が楽しそうだ。
「……私が優しく言ってるうちに、準備して来いよ?」
私はチャリン、と親指で刀の鍔を弾いた。(本日2回目)
「はい! すぐに行きましょう!」
辰夫は震えながら、ツバキと全く同じ軍人のような良い返事をした。(デジャブ)
「はい。辰夫が装備枠にINしました」
私はニヤリと笑った。
「装備扱い……」
辰夫はガクッと膝をついた。
「装備品:竜王(レア度:N)」
「レア度がノーマル……」
辰夫はゆっくりと床に頭を擦り付けた。
「ツバキ……」
「辰夫さん……」
変わり果てた親友と竜王の姿に、
エスト様も辰美も哀れむように震えていた。
さて。
私は報告書をもう一度見つめ直す。
“奈落の縫い目”──魔王の痕跡。
もしそれが本物だったとしたら、
そこに待っているのは父親か、
あるいは──もっと厄介なもの。
まぁどうせロクなものは出てこない。
だから行く。
どっちでもいい。ぶっ叩いて帰るだけ。
「よーし、全員タクシーに乗ったわね?」
「タクシー扱い!?」
城の中庭で、私たちはドラゴンフォームになった辰夫(通称タク夫)と辰美(通称タク美)の背に乗った。
*乗用時は“タク夫・タク美”と呼ぶ文化がある(サクラ命名)
サクラ、エスト、辰美チームと、
カエデ、ツバキ、ローザ、辰夫チームだ。
「行きたくない!高いの怖い!」
ツバキが辰夫にしがみついて泣きながら叫ぶ。
「ていうかサクラ殿!!
我の背中だけ明らかに重量オーバーじゃないですか!?
とくにローザ殿の愛と聖典が重い!!」
辰夫が咆哮を上げた。
「辰夫さんひどい!!
乙女に向かって重いって言った!!
カエデ激おこだよ!?
略してカエデ激──あ!サクラ!お弁当は?」
カエデが相変わらず。
「竜王、乙女心読めず……」
ローザがペンを走らせる。
「楽しみだねー辰美ー?」
「ですねーわくわくしますねー」
楽しそうにお喋りするエスト様と辰美。
「お前らうるせー!ノリと勢いで突っ込むぞ!」
私は刀を天に掲げ、ムダ様の言葉を叫んだ。
「『正解にするまでが正解だ』ッ!! 行けぇぇぇ!!」
(家族……かな。これ。なんか嬉しいね。)
(つづく)
◇◇◇
──【グレート・ムダ様語録:今週の心の支え】──
『正解にするまでが正解だ』
解説:
間違いと呼ばれるものは、途中経過の別名に過ぎない。
やめた瞬間にそれは“失敗”になる。
やめなければ、それはずっと“正解の途中”だ。
だから進め。
正解は、止まった奴の前から消える。
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