数年後
あれから数年経った今、俺はアパレル店員として働いている。
もちろん恋人はいなくてフリー。
今でも照のことを考えない日なんて無い。
深澤「はぁ…あいつはもう医者になれてるかな」
深澤「なれてたらいいな」
渡辺「またその話っすか」
横から口を挟んできたのは、同じ職場で仲良くなった渡辺翔太。
初めは二つ下のくせに生意気だと思っていたけど、だんだん仲良くなり家にまで行く仲になった。
ただ、俺がゲイだということは明かしていない。
普通じゃないから。
深澤「いいじゃん。俺だって恋してんの。」
渡辺「いやいや」
渡辺「恋っつっても何年も前ですよね? 」
渡辺「それに深澤さんもう26歳っすよ?」
渡辺「そろそろ新しい人見つけた方がいいと思いますけどね〜」
翔太は手際よく作業を進めながらそう言った。
その横で商品を並べていた俺は思わず手を止め、口を尖らせながら言い返す。
深澤「翔太は恋人がいるから言えるんでしょ」
深澤「今日も美味しそうな弁当持ってきて見せつけてんの??」
渡辺「あ、深澤さんはコンビニ弁当っすか?」
渡辺「体に悪いっすよ」
渡辺「それ続けてたら病院送りに…」
渡辺「あ、でも病院送りになったらその好きな人と会えるかもしれませんね 笑」
深澤「おい。そんなに馬鹿にしてると怒るぞ」
チリン
口論していると、レジの呼び鈴が鳴った。
深澤「はーい」
深澤「すみません、お待たせしました」
?「いえいえ〜。」
?「あの、これって売れます?」
深澤「すみません。当店は買取などは引き受けておりません…。」
?「ええ、そうなの?」
?「じゃあだいじょーぶです、」
買取をお願いしてきた客は、髪色が綺麗なピンクでどことなく色気を纏った男だった。
それに俺は少し見惚れてしまった。
?「…… 笑」
?「お兄さん、俺に夢中になっちゃったの?」
深澤「えっ」
深澤「あ、すみません」
深澤「随分と綺麗な髪だなと思いまして」
?「お兄さんは肌が真っ白で綺麗ですね」
男はそう言って俺の手を握ってきた。
深澤「えっ、と……」
?「お兄さん彼氏いる?」
?「いないなら俺が相手してあげるよ」
?「お兄さん結構俺好みで気に入っちゃったぁ」
深澤「え?いやぁ…」
少し戸惑っていると、見覚えのある人が近付いて来ている事に気付いた。
深澤「あ、蓮」
目黒「あの…手握ってどうしたんですか?」
?「……あれ?目黒蓮じゃん」
?「お兄さん、こんな有名人と知り合いだったんだ」
目黒「とりあえず、手離してくれません?」
?「目黒さんには興味無いので大丈夫ですよぉ」
目黒「俺もあなたに興味無いです」
?「…はいはい。お兄さん、またねぇ」
深澤「ああ、はい…」
男は観念したのか帰って行った。
助けてくれたのは、あの時友達になった蓮。
今となっては、親友…相棒のようなもの。
目黒「大丈夫?」
目黒「あ…知り合いとかだったりする?ごめんね」
深澤「違うよ」
深澤「ちょっと絡まれてたかな 笑」
目黒「そっか…」
目黒「寄って良かった」
深澤「仕事終わったの?」
目黒「ううん、まだ。」
目黒「でも今日は早く終わるらしい」
深澤「おっ、良かったじゃん!!」
深澤「蓮は忙しいから休まなきゃ体壊しちゃうよ」
蓮は、昔芸能事務所からスカウトされそのまま超大物俳優まで成長した。
なかなか会えなくなるのは少し寂しさもあったけどあの蓮のルックスを損にしては勿体ない。
さすが蓮だよ。
目黒「そういえば、辰哉の仕事場初めて来たかも」
深澤「確かに!!」
目黒「ああいう絡みはよくあるの?」
深澤「ぜーんぜん」
深澤「初めてでびっくりしちゃった 笑」
目黒「…心配だな」
目黒「辰哉、男からも好かれそうだし」
蓮は独占欲が凄い。
なんでかはわかんないけど。
俺の周りにいる人にはすぐ圧かけたり…。
でも、蓮からの独占欲は嬉しい以外無い。
目黒「じゃあもうすぐ時間だから…」
深澤「うん。またね。」
渡辺「遅かったっすね」
渡辺「クレーマーっすか?」
深澤「違う、友達来てたから」
渡辺「ふーん」
渡辺「深澤さん友達いたんすね」
深澤「はぁ?」
それからずっと翔太とお喋りしながら、翔太が先に帰宅し、俺がラストまで入っていたため最後に帰宅。
26歳のくせに免許も持っていない俺は、夜にも関わらず歩いて帰る。
深澤「疲れたぁー…」
なんて独り言を呟くと、肩に一粒の水が落ちてきた。
深澤「ん?」
深澤「えっ、うそ」
深澤「雨じゃん!!」
一瞬で大雨が降ってきた。
俺は傘も持っていない。
……どうしよう。
一応近くに翔太の家があるけど…。
よし。
深澤「翔太に電話…!!」
深澤「もしもし…」
渡辺『もしもし、どうしたんすか?』
深澤「大雨で帰れないんだけど少しだけ家で雨宿りさせてもらえない?ごめん」
渡辺『あー、友達いますけどそれでもいいなら全然大丈夫っすよ』
深澤「ごめんね!!走って向かう」
渡辺『気をつけてくださいねー。』
翔太、こういうときは優しい。
これがツンデレってやつかな。
ピンポーン
翔太の家のインターホンを押す。
なんだか中が騒がしい感じがするけど。
渡辺「はーい、」
渡辺「あ、きた」
渡辺「えっ、びしょ濡れじゃないすか!!」
深澤「ほんとごめん」
深澤「急に大雨降ってきちゃって」
渡辺「シャワー貸しますから!!」
玄関横にあるシャワー室を貸してもらった。
……やっぱり、奥の部屋が騒がしい。
翔太が言ってた友達かな?
聞いた事のある数人の声が聞こえる。
深澤「翔太ー?」
深澤「ごめんね、借りちゃっ…て……」
翔太に礼を言うため、奥の部屋に行くと。
岩本「……!」
照がいた。
あれ、幻覚?
そして、その横には今日のピンク髪の男と知らない男。
照とピンク髪の男は友達のような距離感には見えないような感じがする。
……凄く嫌な感じ。
渡辺「まだ雨降ってますけど、止むまでいときます?」
深澤「うーーん…」
?「全然迷惑じゃないので大丈夫ですよ。」
いやいや、そういう問題では無いんだけどね。
でもせっかくシャワー室を貸してもらったのにまた大雨でびしょ濡れになっても意味が無いから…。
深澤「…じゃあ、お邪魔しておくね」
渡辺「あ、名前」
渡辺「このガタイ良いやつが岩本照」
存じております。
渡辺「で、このピンク色の髪してるのが佐久間大介さん」
渡辺「こいつが宮舘涼太」
渡辺「俺と涼太、佐久間さんと照は付き合ってる」
深澤「おー…」
……え。
付き合ってる…?
翔太は置いといて。
照とあのピンク髪の男が?
嘘だ。
ただ、一つ気になることがあった。
佐久間さんが俺に絡んで来たこと。
それに、今はペアリングを付けているけどあの時は付けていなかった。
…これって、もしかして
深澤「…あの」
深澤「佐久間さんって…、」
佐久間「初めましてっ」
佐久間「お兄さん、何歳ですか〜?」
ああ、これは。
“言うな”ということか。
バレたくないから。
…なんで?
他の人と遊びたがってるくせになんで付き合ってるの?
そんな軽い気持ちで付き合ってるなら俺に照返してよ。
俺の方が好きなのに。
深澤「…26歳です」
渡辺「俺ら全員25歳」
渡辺「深澤さんの一つ下」
深澤「…佐久間さんと翔太達は知り合いなの?」
渡辺「最近知り合った感じっすね」
渡辺「俺と照が友達で、みたいな」
深澤「ふーん。」
宮舘「よろしくお願いします。…深澤さん?」
深澤「あ…俺、深澤辰哉って言います」
というか…翔太って彼氏がいたんだ。
だったら早く言えば…
いや、言わなくてよかったか。
勢いで照のこと言ってたらやばかったしね。
佐久間「ひかる〜…」
岩本「ん?」
佐久間「膝…」
岩本「膝枕?」
佐久間「んー…」
渡辺「おい、他所でやれよ 笑」
なにこの状況。
元カレが元カノの前で今カノを膝枕してあげてるみたいな。
しんどすぎるでしょ。
ふと、テーブルを見ると散らばっているトランプ。
さっきはこれで騒がしかったのか。
俺が来ちゃったせいで止まったのかな。
それに、カップル×カップルの中に俺とか邪魔でしかないじゃん。
そう思って、少し離れた場所でスマホを弄っていた。
渡辺「深澤さんこっち来ないんすか」
深澤「あー、俺邪魔じゃん」
深澤「ネガティブみたいな感じじゃなくて普通に」
宮舘「大丈夫ですよ」
深澤「んー…いや、いいよ。大丈夫です」
俺が耐えられないし。
なんて考えていると、照に膝枕されていたはずの佐久間さんが近付いてきた。
深澤「…?」
佐久間「…深澤さん、あのことは内緒にしてくださいねぇ」
佐久間「心配しなくても、いつでも遊んであげますよぉ〜っ」
深澤「は?」
深澤「…なんなの」
佐久間「まあまあ、怒んないでっ」
佐久間「またあの店に行きますね。渡辺さんにバレないように」
佐久間「俺、深澤さんともっと仲良くなりたいしぃ」
なにこの男、ふざけてんの?
俺はお前じゃなくて、照が欲しいのに。
お前に好かれても、照じゃなきゃ嬉しくない。
岩本「なに話してるの?」
深澤「……、」
佐久間「なんでもないよっ」
佐久間「ほら、戻ろ」
岩本「……」
岩本「深澤…さん、みんなで一緒にトランプします?」
やめてよ。
そんなにくっついてるの見せつけてこないでよ。
それに、”深澤さん”って呼ばないで。
前みたいにふっかって呼んで。
……もう、そいつにしか興味無いの?
ブーッ、ブーッ、
俺のスマホに電話がかかってくる。
《蓮》という文字。
深澤「…ちょっと待って」
深澤「もしもし…」
目黒『あ、辰哉』
目黒『仕事今終わったんだけど、まだ20時だし今から飲まない?』
目黒『久しぶりに辰哉とたくさん話したいな』
深澤「…蓮、」
深澤「うん。行く。」
深澤「あ、でも今友達の家来てて…」
目黒『迎えに行くよ。』
目黒『どこ?』
深澤「今送ったから見てみて。」
目黒『あ、近いからすぐ着くかも。』
目黒『向かうね』
深澤「ありがとね、蓮」
深澤「待ってる」
深澤「ごめん、おれもう少しで帰るね」
渡辺「まじすか」
深澤「うん。迎えに来てくれる人がいて」
岩本「…彼氏?」
深澤「え?」
岩本「あ、…なんでもない……です」
照がなんで俺に彼氏がいるか気になったのかが少し引っかかった。
別に気になった訳ではないとは思うけどね。
渡辺「…?」
宮舘「じゃあ、それまでトランプしておきましょうよ」
佐久間「ババ抜きしたぁい」
深澤「……わかりました、」
…ババ抜きをしているけど居心地が悪い。
4人同士はタメで、俺だけ敬語。
それに、照からカードを受け取る時間が凄く気まずい。
目を合わせないようにするのもなんか嫌。
異物混入じゃん。
俺、いる?
ピンポーン
渡辺「だれ?」
渡辺「…はーい」
目黒「あの…辰哉っていますか」
渡辺「辰哉?」
渡辺「辰哉って…」
渡辺「え!?てか、目黒蓮じゃん!!」
俺を”辰哉”と呼ぶのは蓮しかいないから困惑している翔太。
それと、いきなりあの目黒蓮が来て驚く翔太。
…なんか、おもしろい。
深澤「蓮」
深澤「お迎えありがと」
目黒「ううん、大丈夫だよ」
目黒「ごめんなさいお邪魔してすみません」
深澤「トランプ途中で終わっちゃってごめんね」
深澤「シャワーもありがとう」
きちんと翔太に礼を言う。
親しき仲にも礼儀ありだからね。
渡辺「いや、えっと…大丈夫っす」
渡辺「…あの、今言うことじゃないとは思うんすけど」
深澤「うん」
渡辺「俺がゲイって知って気持ち悪くなかったっすか?」
深澤「え?」
深澤「…なんで」
深澤「全然気持ち悪くないでしょ 笑」
深澤「俺もゲイだ…し……」
深澤「あ」
しまった。
口を滑らせた。
渡辺「え」
渡辺「え?」
渡辺「じゃあいつもの話って…」
渡辺「え?」
岩本「…?」
翔太が小声で何か呟きながら振り向き照の方へ視線を送った。
え、なんで照のことバレたの?
…そんなことより一番は蓮に聞かれたくないんだよ。
大切な友達だから、気持ち悪いって思われたらどうしよう。
目黒「…ねぇ」
目黒「シャワーってどういうこと?」
深澤「大雨で濡れちゃって…」
目黒「だめだよ!!」
目黒「辰哉こんなに可愛いのに人の家でシャワーなんて入らないで」
深澤「ごめんね」
渡辺「てかなんで目黒蓮さんがいるんすか…?」
宮舘「すごぉ………」
3人が目を丸くしている。
そりゃあビックリするよね。
佐久間…は、少しも驚いていないけど。
深澤「……じゃあ、ありがとうね」
深澤「ばいばい。またね」
渡辺「はい、また。」
岩本「……、」
少しだけ照の方を見てから帰る。
目が合って気まずかったけど、最後に照を目に焼き付けておきたかった。
…最後になるのかな。
でも、照を佐久間から離してやりたい。
あんなやつといても幸せになれない。
照が佐久間といることを望むとしても、絶対に。
深澤「…行こっか。」
目黒「話はあとでたくさん聞くからね」
…… ᴛᴏ ʙᴇ ᴄᴏɴᴛɪɴᴜᴇᴅ
——-❁ ❁ ❁——-
前垢の【秘密の恋】はこのアカウントで続きを書くことにしました。
1〜7話までは前垢から見れます。
私のフォロー欄に前垢いますので、そこからぜひ見てみてください︎✿
コメント
5件
続きが楽しみです!!!
初見です🥺 フォロー失礼します もうどう展開いくか想像も出来なすぎて続きめっちゃ楽しみです❗️😖
この話もワクワクですね。 楽しみです。