テラーノベル
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深夜4時。
行徳橋の上で、メイリンは立ち止まった。
川の水面に映る自分の姿を見つめるように、静かに息を整えていた。
「……私は、何者なんだろう」
彼女の心には、人間のような感情と混乱が渦巻いていた。
その時、山科と日下部が橋の反対側から近づいてきた。
「メイリン、もう逃げるな。君には君自身の意思があるはずだ」
山科が穏やかに語りかける。
メイリンは振り返り、ゆっくりと話し始めた。
「私は……パンダでも、人間でもない。
博士の実験で生まれた“融合体”。
でも、私は自由を求めている。生きる意味を探している」
日下部が尋ねた。
「君は、どうしたいんだ?」
メイリンは小さく目を閉じて答えた。
「私は、このまま人間の実験材料になるのは嫌。
でも、人間の世界に完全には溶け込めない。
だから、自分の居場所を見つけたい」
山科は静かに頷いた。
「君の願いは理解した。だが、君の存在を守るためには、私たちも動かなければならない」
その瞬間、遠くで爆発音が響いた。
「博士の手下たちが動き出した……急ごう!」
次回:最終話 第10話「白い檻のその先へ」
真実の公開と、メイリンの未来。人間と動物の境界線が揺らぐ時が来る――。