テラーノベル
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「類、類…るーい、」
寧々は死んだように眠る類に話しかける
ショーのことで相談があり、部屋を訪ねたら類が床で倒れていた
日常茶飯事とはいえ、やはり心臓に悪い
窓の外はもうインクで塗りつぶしたような暗さで、セミの鳴き声がうるさく響いている
「ちょっと類、本当に起き、わっ!?」
類は寧々の服を引っ張り床に転がし、上に覆うかぶさった
「…起きてるじゃん」
不満そうに言う寧々に類は口付けをし、腰に手を回した
「寧々、今日は何の日かわかるかい?」
「…七夕」
「そうだね」
類は起き上がり、何かリモコンのようなものを取り出した
部屋の電気を消し、リモコンを持ったまま寧々の隣に腰掛けた
「見ていて」
そう言って類はリモコンのボタンを押した
すると真っ暗で何も見えなかった部屋はパッと明るくなり、天井に天の川が現れた
「わ…」
美しい
そう思った
あまりにも薄い感想だが、そうとしかいえないのだから仕方がない
「フフ、どうだい?」
「いいね、すごく綺麗」
「凄いだろう?懐中電灯と段ボールでできるんだ。…満足していただけたなら光栄です、織姫様?」
そう呼ばれて少し驚いた後に、寧々は言った
「わたしは人魚姫だから、天の川を泳いでいつでも会いに行く。一年に一回なんて耐えられないな」
「おや、…フフ」
類は寧々の肩を抱き、自分の方に引き寄せた
「敵わないな、寧々には」
寧々の手首を優しく掴み、押し倒した
寧々の目には光が反射し、宝石のように光っている
「…美しい」
「ばかじゃないの」
暗いからか表情がよくわからない
そのまま誰もいない散らかった部屋で
ただ無言のまま抱き合った
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