🖤side
練習が終わって挨拶をした時、校舎の方で机が倒れたり物がぶつかるような大きな音がした。間違いなくそれは生徒会室から聞こえた。思わず深澤先輩を見ると、向こうも生徒会室を見上げてから俺を見た。
🖤「先輩」
💜「行こう」
人数がいた方がいいからと、他にも部員がついてきた。
生徒会室のドアをそっと開けると、ラグビー部員が部屋の隅に向かって大声で誰かを怒鳴っている様子が目に入る。
『ここで輪姦すぞ』
『どうせ前の会長ともヤッたんだろ』
一瞬ここが高校だと言うことを忘れてしまいそうな下品な暴言に気を取られたけど、その先にいくつも倒された机と、その更に向こうに追い詰められて小さく縮こまっている阿部さんが見えた瞬間、身体中の血が煮えたぎるような怒りを覚えた。
🖤「阿部さんッ!!」
ドアをわざと乱暴に開けるとラグビー部員は驚いて振り返った。
部員がスマホを向けて『証拠撮ってるからな』と伝え、怯んだ隙に深澤先輩が阿部さんを立たせて俺に預けた。
💜「外まで音が聞こえてたからさ、何があったのかなと思って。俺が聞こうか?ほら」
先輩はニコニコしていて、対するラグビー部員はすっかり萎縮してモゴモゴ言いながら出て行った。
呆気ない幕引きに呆然としていると、誰かが『深澤さんの噂ホントだったんスね』とか言い出す。
💜「言うなよ、内緒」
深澤先輩は苦笑いしながら口に人差し指を当てた。
まぁ、なんかあったんだろう。それより阿部さんだ。
俺は腕の中にいる阿部さんにできるだけ優しく声をかけた。
💚「ありがと、大丈夫だから…」
そう答える阿部さんの顔色は悪かった。
あんな暴力に1人で曝されて怖くなかったはずがない。
よく見れば床はあいつらが投げつけたのであろう物が散乱していて、その中に俺があげたチョコレートも散らばっていた。
阿部さんのものであろうスマホも画面が割れていた。
みんなで掃除をして机も元通りに直し、さて帰ろうかとなった時に歩き出した阿部さんがふらついた。
🖤「危ない!」
後ろから咄嗟に抱きとめたけど、そのままズルズルと座り込む。
💜「迎え呼ぶからねー」
深澤先輩は慣れた様子だ。俺は阿部さんと一緒に座りながら身体を支えた。
こんな状況だけど、阿部さんに身体を預けられてるのを嬉しいと思ってしまった。
💜「無理しすぎちゃったね」
💚「ん、ごめん…」
阿部さんはそれだけ言って、後はしゃべる事はなかった。
深澤先輩の彼氏さんで、阿部さんとも共通の知人だと言う大学生が車で迎えにきた。
なぜか俺も阿部さんを支えたまま同乗した。深澤先輩曰く、阿部さんはこれまでにも何度か無理がたたって目眩を起こしたそうだ。
💜「ほんとにこうなるまで言わないからさ」
🖤「そうだったんですね」
阿部さんの家に着き、今日は家族も遅くて誰もいないらしく深澤先輩に家の人が帰るまでついててあげなと言われて初めて家にあがる。
阿部さんの家って感じの、整頓された落ち着きのある家。
でもなぜか阿部さんは自室に行くのを頑なに拒み、お母さんが帰ってくるまでの時間を俺たちはリビングで過ごした。
コメント
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ふっかさん番長とかですか?ww 我らの推しはいつもま◯されそうになる😍
順風満帆にいかせられない己の性を呪いたい。