『あら珍しい』
帰宅した、阿部さんのお母さんの第一声だ。
🖤「初めまして、阿部さんの後輩の目黒と言います。お邪魔しています」
『いらっしゃい。お構いもできずごめんなさいね』
阿部さんによく似たお母さんは、阿部さんと同じ柔らかな口調でそう言った。
阿部さんを育てた人、って感じだ。
『それにしても珍しいね、部屋じゃない所では寝ないのに。安心してるのね』
まるで小さい子を見るように阿部さんを見ながら言う。
🖤「え?」
そう言えば少し前から静かだと思った。
阿部さんを見ると、ソファで寝息をたてている。
お母さんはコーヒーを淹れてくれた。
『あの子、昔から我慢しちゃう。親バカだけど昔から賢くてね、その分頭が硬くて頑固なとこあるから自分で黙ってようって決めた事は絶対に言わないの』
学校で体調が悪くなって付き添っていたと伝えると、お母さんはそう話す。そして、亮平を支えてくれてありがとうね、と。
『それにしても、新しい彼氏かと思って期待しちゃった』
なんて言われて思わず『俺、そうなりたいです』と答えてしまった。
何だこれ。息子さんをくださいじゃないんだから。
お母さんは『目黒くんみたいないい子なら大歓迎だよ』と笑った。
遅くまでありがとうね、あとは見るから、とお母さんはタクシーを呼んでくれた。
家の人公認になった気分でウキウキ帰り、家に着いて支払いをしようとすると『配車時にお支払い済ですよ』と言われてしまった。
今度お菓子か何か買って行こうと思いながら帰宅してスマホを見ると、起こされたんであろう阿部さんから『付き添ってくれてありがとう。チョコだめにしちゃってごめんね』とメッセージが来ていた。
『いくらでも買います』と返事をして、眠りについた。
コメント
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阿部ちゃん、好きー! ミチルさんの描く、阿部ちゃん本当に儚くて優しくて綺麗な感じするーーーー
なんということでしょう この話数飛ばしてた! 読み返すーーー