〜注意事項〜
・1話残暑
*
シュッ、シュッ。
拳が風を斬るような音だ。
威力はどうだか分からないが、成長はしている。
自分の家の中で何度も空気を殴っていた。
強くなればいいんだろう。
そうすれば彼らだって。
shpだって。
そう信じて、汗を拭う。
強くなりたい、とか、笑える。
まるで少年漫画の主人公のようだな。
いや、主人公は才能があるのがお決まり。
俺は違う。
風に吹かれて、カーテンがふわりと浮かぶ。
視界の端に移る見慣れた彼。
shpである。
慌ててカーテンを閉めようとすると、shpは集団に話しかけられていた。
話までは聞こえない。
それをぼーっと眺めていると、電話が鳴った。
emからだ。そう言えば交換していた。
「…もしもし。」
『あ、ciくん!!やっほやっほ。』
「うん。どうしたん、えと…。」
カーテンを締め切って、電話に向き合う。
『今shpくんとおる?』
「…ううん。」
カーテンから目を背けて、そう答える。
emは焦ったように少し声を大きくした。
『shpくんを狙ってる集団からメッセージがきたんや!!shpくんの安全確認頼めるか!?』
shpが狙われてる??
さっきの集団はまさか、とカーテンに手を伸ばした。
『ciくん。教えた通りにできるか?』
emの静かな声に手を止める。
「…emさんは弱い俺が嫌いちゃうん、??」
emは電話の奥でごく、と息を飲んだらしい。
『…どうしてそう思うんかな。』
「…皆はそうやから。弱いのは足を引っ張る。嫌いになる。嘘つかないで。」
嘘をつかれるのが1番辛いんだ、とciはスマホを強く握りしめた。
雫が垂れそうになるのを、どうにか止めてほしい。
その思いを噛み殺すように深く呼吸をする。
『…ciくん麻雀は好き?』
「え?ま、まあ好きやけど、」
『じゃあ明日俺ん家来てよ。麻雀やろ。ルール教えてな。』
「えッ、ルール知らんのにやるの!?」
『うん。今日買う予定やったからさ。せっかくならciくんとやりたい。』
「そ、そうなんや。」
『うん。じゃあ、shpくんいたら呼ぶんやぞ。すぐ向かう。無茶しないこと。』
ブツ、と着れる。
麻雀か。zmじゃなくていいのだろうか。
ciは少し考えようとして止めた。
「…!!shp!!」
emの言っていた事を思い出し、咄嗟にカーテンを開く。
そこに彼の姿はない。
もちろん、集団もいない。
落ち葉が風で飛んでいく。
考えなくても理解できた。
喧嘩に詳しくなくても動き出した。
emの声は未だに耳に残っている。
背中を押されたように、飛び出した。
*
スピーカーを切り、そのまま電話も切った。
ヒリついた視線がemを囲っている。
「…それで??貴方達が関係してるとshpくんに言われたんやけど。」
shpが狙われてると知る前までは、shpと通話をしていた。
shpは焦ったように、人を慰めるにはどうしたらいいのだと尋ねてきた。
無責任に慰めるのは危険だ、無理に慰めない方が良いと伝えたemは少し照れくさく思う。
それから、彼らgr達が何かをしたのだと。
「知らんよ、なんでそんなにci悲しそうな声してるん、!?」
「だよなut…。俺らなんか話しとったっけ、」
utとknは首を傾げた。
「弱い、になにか思い出すことがあるとか。」
emがそういうと、knがハッと目を開いた。
「そうや、俺らオンナの話してたんや!!ほらほら、utを騙そうとしてたクソオンナの話!!!!」
「あー!もしかしてそれを聞き間違えたんか!?」
utが頭を抱えた。
「悪口だったもんな。そりゃ、1部だけ聞いてたら勘違いするぞ。」
grは苦笑するしかないが、やはり罪悪感から顔を下に向けている。
「ciくんに謝った方がええよ。」
「勘違いしたのはあっちなのに俺らが謝んのか??ていうかemが指示すんなや。」
「止せkn。謝るべきだ。」
「grちゃんまでそう言うの?謝んはやりすぎやけど、誤解はといた方がええな。」
「だから解くだけじゃciくんの傷は癒されてないの。ut先生が言うてるそれは傷を無理矢理塞いでるだけ。」
「謝っても癒されはせんぞ?それに、塞いでええやん。傷には絆創膏。何がだめなん?」
「なんのこっちゃ分からんが謝れー!!!」
shoが参戦したのを気に皆が各々言い合いを始める。
「黙れ!!!!!!!!」
zmの大きな声が、その場を突き刺す。
zmはemとshoの手を引っ張った。
「…もういい。謝りたいやつだけ謝ればええやん。他は知らん、好きにしてくれ。」
「…zmさん、」
「誤解の傷は解けても残る。…俺、まだお前らに言われたこと引きずってるから。」
そのまま、その場を後にした。
連れて行かれたem、shoは過去に誤解で病みそうになったzmを1番メンタルケアしていた二人だ。
謝らなかったのは、今回と同じくkn、ut、rb、ht、niである。
今回はhtとniは何も知らない、というのもあるのだろうが。
*
「……、shp、さーん、」
気まづいながらも、声を出して彼の名を呼ぶ。
要らない心配であったとしても、やはり彼には謝らないといけない気がして会いたかった。
ゲホッ!!
嫌な音が耳に届く。
あっちだ。路地裏の奥の奥。
水分の混じったような、苦しい音。
震える体を止め、深呼吸をする。
いける。いけるんだ。
だって俺は彼の…。
スマホの画面を素早く打ち、念の為emに連絡を入れて置いた。
ごく、と喉を鳴らす。
それからもう一度深呼吸をした。
「オラッ!!!!!!!!消えろ!!」
「やめろ!!!!!」
「…あ"?誰だテメェ。」
金属バットを持った男らがジローッとこちらを向く。
囲まれた中心に倒れているshpは血を流していた。
「…ッ、触るなよ。汚い手だな。」
「んだと?テメェ、手ぶらでやる気か?」
「ブクブクすぎて笑えてくる。ふふ、shpくん養豚場来たんか?」
なんて、余裕こいたように口を動かす。
怖い。怖い怖い怖い怖いすぎる。
手も足もガクガクだ。
気を抜いたら腰が抜けそう。
それでも足を踏ん張って彼らを睨む。
「…おい、お前ら先にコイツだ。」
ゾロゾロ、とこちらに歩いてくる。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。
いや…。
ぜんっっぜん怖くなんかない!!!!!!!
「…ふふ、ここの養豚場って居心地悪いんやね!!」
そうだ。見てるかshp。
見てるかお前ら。
認めたくないけど、やっぱりお前らの所は居心地良かったから。
xxxx年xx月今日。
僕は貴方の隣に行ってみせましょう。
こんなに伸びると思ってなかった
2話1000視聴ありがとございます😭
多分あと2話で終了です
新連載の方が完結より早く投稿されるかも
予告→嫌われ
コメント
10件
見るの遅れてすみません!なぜかココアちゃんさんの通知が機能してませんでした😭大好きなシリーズが投稿されてとても嬉しいです!
怖いって何回も書かれてるところ鳥肌立った!!!好き!!!!👊🏻💕ほんとに!!!!🥹嫌われ!!!!楽しみにしてる!!!!🥲🥲
嫌われはまずまずなんよな、、無理そうで見れなかったらごめん。 誤解の傷は解けても残るって言葉心に染みた、、心の傷は和らいでもなくなることはないよね