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いる。
闇の中に、ほとんど同化するような黒い影が浮かんでいる。
ゲームの話ではない。
俺達の目線の先に、淀んだ闇のような女のシルエットが……。
間違いない。
古賀瑛子だ。
ゾッとするような昏い笑みを浮かべて、俺達の魂を狩るべく狙っている……。
「や、やめろ、瑛子さん……」
俺は必死になって訴えた。
「これが……キミの望んだことなのか? キミには同情する。でも……間違ってる! ゲームを遊んでくれるプレイヤーを呪って、それでキミは満足なのか!? 違うだろ……! キミはプレイヤーを楽しませたかったんじゃないのか? 瑛子さん、本当のキミを取り戻してくれ……!!」
こんなの絶対に間違っている。
ゲームは人を楽しませ幸せにするためのものだ。
それはホラーゲームだって同じだ。
遊んでくれたプレイヤーを呪うなんて、瑛子さんだって本当はしたくないはずなんだ!
だが、俺の言葉は届かなかった。
古賀瑛子の昏い影は、憎悪と恨みを煮詰めたような凄絶な笑みを俺に向けるばかりだった。
「……ぁ……ァ……ぁぁ……」
心を抉るような霊のおぞましい形相に打たれた俺は、もうどうすればいいのか分からなかった。
これ以上の言葉も出てこなかった。
ゲームパッドを握る手が震えた。
力が抜けていく。
どうすればクリアできるのか。
どうすれば瑛子さんの呪いから解き放たれるのか。
分からない。
極限の混乱の中で俺の心も体も限界を迎えようとしていた。
――その時だ……!
「指輪を使うんです!」
ヘルアネゴの書き込みだ。
アネゴ、まだ生きていた!
いやでも、それはもう試したんだ!
「そっちじゃなくて、もう一人の女に……英賀隠岐子に使うんです!」
はぁ!?
え、どういうことだ?
意味が……分からない。
い、いや、まさか……。
まさか!
――そうか、そういうことなのか!!
その時、俺に天啓が走った。
ヘルアネゴの一言で、俺にもこの怪異の全ての真相が明らかになったのだ。
英賀隠岐子がこの女霊の実の娘であることはおそらく間違いない。
そして、この霊はずっと娘を探していたのではないか?
この指輪の裏面に彫られていた日付は英賀隠岐子の誕生日……。
つまり、これは結婚指輪ではない。
英賀隠岐子の誕生を記念して作ったリングなんだ!
だから、英賀隠岐子がこのリングを持つことで、母の霊は実の娘を思い出す。
その誕生の記憶を……幸福だった過去を……。
そして、娘を害することはできないとためらい、その手を止めて成仏する……。
これだ、間違いない!
点と点が繋がり俺の中で線となった!!
「ウオォォォ……ッ!」
俺は、最後の力を振り絞りゲームパッドを操作する。
怪物化した女に背を向ける。
そして、主人公の後ろで棒立ちしている英賀隠岐子に向かって指輪を使用する!
さあ、どうだ……!?
主人公がひざまずき、指輪を英賀隠岐子に差し出した。
よし、特殊な演出が入った。
間違いない!
これが正解!
これでクリアだ!!
だが、次の瞬間――!
俺は我が目を疑ったまま画面の前で固まっていた。
いや、だってさ。
主人公が、唐突にこんなことを言い出したのだから。
「英賀隠岐子さん、愛しています。結婚して下さい」
何かの見間違いかと思って、目をこすり、もう一度まじまじと画面を見つめた。
「結婚して下さい」
はぁ……?
プロ……ポーズ??
主人公が?
英賀隠岐子に?
プロポーズ??
いや、待って……。
その指輪、落ちてたものですよね?
「ありがとう。御影映司 さん。あなたからのプロポーズ、ずっと待ってました」
え……あ。
主人公、御影映司って言うの?
てか、バケモノを前にして、この二人は何をやってんの?
バケモノもなんで棒立ちで二人を見てるの?
「私の真の姿を解放する時がやってきたようですわね」
は?
英賀隠岐子の姿が巫女装束へと変わっていく……。
う、うん?
ううん??
「私は実は天照大御神と織田信長の血を受け継ぐ覇結界の巫女」
え……?
うん。
ちょっと待って?
キミはこの霊の実の娘……だよね?
え、違うの??
他人?
感動の母子の再会は……??
「悲しき過去により、人に仇なす魔女となった死霊よ……」
魔女?
え?
「殺人の魔女……Satsujin/Witchを狩ることこそ、覇結界の巫女の使命!」
ウ、ウソだろ、おい、タイトル回収、ここで来るの!?
「下等なS/Witchめ! この覇結界の巫女の前へと立ったこと、地獄で後悔しろ!」
ちょ、ちょっと……待っ……
「破ァ――ッッ!!!」
朦朧とする意識の中、俺は覇結界の巫女と化した英賀隠岐子が手から謎のビームを出してバケモノを爆殺するクソ出来の悪いポリゴンアニメを呆然と見つめていた。
俺は……何を見させられてるんだ……?
そして、エンドクレジットが流れ始める。
なぜか引火し、燃え上がったビルを背景に、主人公の御影映司が英賀隠岐子をお姫様だっこしながら颯爽と立ち去っている。
「な、なんだこれ……」
全く意味が分からない。
えっ、じゃあ、ヘルアネゴは一体何を理解していたんだ?
と、そう思っていたら、当のヘルアネゴがコメントに「解答」を書き込んでいた。
「英賀隠岐子」
「EGAOKIKO」
「→KOGAEIKO」
古賀瑛子――!
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