テラーノベル
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Prolog
彼のことを知りたいと思った。
ただそれだけだった。
図書館司書として静かに過ごす僕の日常に、ふとした偶然が混ざり込んだのは1年ほど前のことだ。
夕暮れの街角で見かけた、柔らかく微笑む彼の横顔。その瞬間、なぜか心がざわついて僕は何度もその顔を反芻した。
名前も知らない、美容師の彼。
彼の指先が髪を切るたびに、世界が少しだけ鮮やかになっていった。
僕は夢中で彼のことを探し始めた。同じ美容院の予約を試みた。やがて名前を偽り、週に一度だけ「藤沢すずか」としてその美容院に通い始めた。
そのうち気づいてしまった。
僕のささやかな秘密を、彼はすべて見透かしていることに。
彼が郵便受けに忍ばせる手紙や写真、僕が気づかぬうちに誰かが見ている存在。
けれど僕は気づかないふりをした。彼の優しい声、柔らかな手が触れる瞬間の温度に溺れてしまったから。
知らなければ、狂わずに済んだかもしれない。
けれど今は──
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〇設定
美容師大森x図書館司書藤澤
大森元貴(おおもりもとき)
美容師 物腰柔らかく、丁寧で優しい接客をする。穏やかで誰にでも親切
美容師としての腕は確かで繊細なカット技術とセンスに定評がある。自分に厳しく、仕事には誇りを持っている。
趣味は写真撮影
藤澤涼架(ふじさわ りょうか)
図書館司書 落ち着いていて穏やか。天然でふわふわした雰囲気を持つ
どこか抜けていて鈍感なところがあり、周囲の異変に気づきにくい。実は大森のことを密かにストーカーしていて彼のことを知らずにはいられないタイプ。
美容院の予約は「藤沢すずか」と偽名で入れており、2週間に1回メンテナンスの名目で通う
ストーカー行為も自覚が薄く、純粋に「好き」が強すぎて止まらない
知的好奇心が強く読書や文献調査が好き
趣味は読書
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