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他人のふんどしで相撲を取ることに慣れるにはそう時間はかからなかった。


「今日描きました!」


私は今日もその蛮行を行い、初めて他人の絵で褒められた時のあの感覚を反芻する様に求めている。


【ルナさんの絵、今日も素敵ですね!】


私は虚構で塗りあげた自分自身に名前をつけた。

それが「ルナ」だ。特に理由はないが、ルナだ。

いつも褒めてくれる人の名前も数人覚えた。

中でも名前を呼んでくれる程仲良くなれたのが、この「Xui」という人。

Xuiは初めてリプライをしてきた時、物凄い長文で私の(私が書いたものじゃないけど)絵を褒めたたえてきたのだ。

そして【今流行りのアニメのキャラクターを描いて欲しい】と振ってきた。

困ったことに、私はアニメは一度も見た事がない。

いや、一度もと言うのは極端な話だ。

幼少期に某パンのヒーローが菌類の敵の悪戯を止めて成敗する知育アニメや、トラの男の子が友達や妹と遊ぶ知育アニメなら見たことはある。

しかし、本当にその位なのだ。今流行りのアニメなんか、見たことがないのだ。イラストを描くきっかけになったのは、アニメと言うより少年漫画やライトノベルの方だ。


だから、こう返した。

「あまり詳しくないから、ちゃんと見てから機会があれば描かせてもらうかもですね…!」


Xuiはそれに対して無理強いをしなかった。


【そうだったんですね!無茶振りしてごめんなさい…。けど、アニメは本当に面白いので、お時間ある時にでも是非見てみて下さいね!オススメです!またイラストの投稿楽しみにしてます!】


別にアニメを見ることも、絵を描くことも、強く求めては来なかった。こういう人に対しては、何故か安心感があった。


そんな純粋にイラストを見てくれているXuiでさえも裏切って、今日も«ルナ»は他人の絵を自分のものにする。


別にいいじゃん。

だって、承認欲求の為にやってるなら私が上げたってどうせ褒められるじゃない。

バレたところで、むしろ泣いて拝んで感謝されたって良くない?お金払ってくれてもいい位でしょ。

私がこの目で選んで、SNSで使ってやったお陰で絵が褒められてるんだから。


私の思考はどんどん突っ走っていく。

もう自分が本当に末恐ろしい事をしているという感覚は無かった。


「うわ、もうこんな時間だ。学校に行こう。」


絵を投稿した後の賞賛を吟味してから時計を確認すると時間の流れはあっという間に感じて、私は慌てて寮を出た。

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