【能力者名】 海街心臓
【能力名】 深海シティーアンダーグラウンド
《タイプ:友好型》
【能力】 異空間に防音室を作る能力
【以下、細菌達の記録】
《放課後、お洒落なバーのような異空間》
「ってかさー、なんでここwi-fi繋がんないわけーー?」
スマホを操作し、海街心蔵の頭をぺちぺちとすみっこぐらしの下敷きで叩きながら恋原表裏一体は言った。
妖怪沢どろり、恋原表裏一体、海街心蔵の《ボランティア部》三人は、今後の部活動の方針を決めるため、 ミーティングをしていた。
「仕方ないだろ、異空間なんだから。」
目を閉じ、下敷きで頭をぺちぺちされながら
イライラした様子で海街は言った。
海街の《深海シティーアンダーグラウンド》の発動条件は目を閉じていること。
目を開けると能力は解除され、元いた場所に
戻ってしまうのだ。
そのため海街は表裏一体に下敷きで頭を
ぺちぺちされてもほとんど抵抗ができないのであった。
「逆にいえば盗聴対策はバッチリってわけだ。時間を無駄にするのはよくない。ミーティングを始めよう。」
あらかじめ自販機で買ってきたファンタグレープ味を三人に配りながらどろりは言った。
海街は慣れた様子で目を閉じたままファンタ
を飲んだ。
どろりはファンタを飲みながら言った。
「まず、最近ロカ先生達が交代でトイレの見回りをしている。そんな時に今までと同じように《ボランティア活動》をしてたら最悪ロカ先生と鉢合わせて能力を破壊されてしまう。 そのため、暫くトイレ付近での《ボランティア活動》は控えようと思う。」
どろり達の言う《ボランティア活動》とは
悪人狩りのことである。
どろりは手の平で 触れた人間をどろどろに溶かして消す能力 《メルト》を使って、放課後に悪事を働く 能力者(あるいは無能力者)達をこの世から 消していた。
しかし、《トイレの亡霊》の 噂が広まったことでロカ先生達は生徒達の 能力悪用を警戒し先生達で交代でトイレの見回りをすることになりトイレ付近での 《ボランティア活動》が難しくなったのだ。
「そしたらボランティア活動もうやらないわけー?」
表裏一体は唇に指を当てて自身の 性別を操る能力 《裏表ラバーズ》で海街を女の子にした後、 Gカップはあるであろう女の子になった海街の胸を揉みながらそう言った。
海街は目を閉じ、無抵抗のまま
(なぜロカ先生はまっさきにこいつの
能力を破壊しないんだ……?)
と、ド畜生の表裏一体が野放しにされてる
事実に疑問を持った。
「そういうわけじゃない。」
とどろりは空になったファンタのペットボトルを人差し指の上でくるくるさせながら
言った。
「今後の活動は二つ、一つはSNSで募集した
生徒達のお悩み解決だ。今はお料理部のお手伝いと花壇の清掃、草野球の助っ人などの
依頼が来てる。」
「ふーん、表の《ボランティア活動》って
わけだねー☆、ってかお料理部っておねーちゃん達の部活じゃん、楽しみー☆」
海街で遊ぶのに飽きたのか、今度はどろりを女の子にしてほっぺをむにむにしながら
表裏一体は言った。
表裏一体のいうおねーちゃんとは米津高校二年生の《みんなのおねえちゃん》こと、姉ヶ崎茜色先輩のことである 。
「ふふぁふめは…..喋り辛いからやめろ
表裏一体!!!」
「けちーー。」
そう言って表裏一体はどろりのほっぺから
手を放した。
どろりは気を取り直して続けた。
「二つ目の活動は先生達が見回りしているところの死角、そこで悪事を働くかなしい奴らを 俺達で狩ることだ。例えば、こことかな。」
そう言ってどろりは米津高校内の地図を鞄から取り出し、《図書室》の部分を指差した。
《米津高校図書室の隅にて》
図書室では音もなく、能力者による凶行が
行われていた。
蛸のような触手を生やした男子生徒一人が
女子生徒をレイプしようとしていた。
女子生徒は触手で口を押さえられ、パンツの中を触手でまさぐられ、身体が痺れているのか 身動きが取れない様子だった。
図書室では亡霊の噂が広まり、ロカ先生が
定めた校則によって利用者が激減していた。
更に図書室の番人とも呼べる図書委員長
阿久野六法全書もロカ先生に心をへし折られ
番人としての役目を果たせずにいた。
図書室の隅には予算削減のためか、監視カメラがない。
悪事を働くには絶好の場所であった。
蛸のような触手を生やした男子生徒が
ズボンのジッパーを下ろし女子生徒を犯そうとした。
その時だった。
「《深海シティーアンダーグラウンド》。」
とてつもなく静かな声で海街は言った。
どろり、海街、表裏一体、触手の男は
異空間へと音もなく引き摺りこまれた。
女子生徒は痺れたまま図書室の隅でへたり込んだ。
男はこれまでの悪党とは違った。
おそらく感知能力のようなものでどろり達の気配を察知したのだろう。
「死ねぇ!!!!!!!!!!!!」
男は素早く八本の触手を伸ばし、 どろりと表裏一体と海街を捕らえようとした。
「がはっ!!?」「ぐっ!!?」
目をつぶってた海街は当然、運動神経に自信のあった表裏一体ですら反応できず男の触手に捉えられてしまった。
ミシミシと、触手は二人を握り潰そうとする。
海街は気合いで 目を瞑り続け、能力を解除しなかった。
どろりは円を描くような最小限の動きで
残り六本の動きを避け続けた。この動きは
どろりが小テストの期間に見続けたロカ先生の動きの真似であった。
「劣化版女王、
…….《メルト》。」
ひらりと宙を舞いながらどろりは触手の男の
肩にタッチし、メルトを発動した。
男はどろどろにとけ、過去も現在も未来も、
来ている服も身体も触手も全て、跡形もなく
この世から消えてしまった。
決着である。
海街は能力を解除した。
異空間は消え、 《ボランティア部》 三人は図書室へと戻った。レイプされかけた女子生徒は
(なぜ私は こんなところで寝てたんだっけ?)
と言った顔できょとんとしていた。
その後《ボランティア部》は図書室に来ていた口実を作るために無言で30分勉強 した。
おしゃべり大好きな表裏一体にとってそれは
地獄の30分だったが表裏一体はノートに
歴史人物を超かわいくデフォルメしたキャラクター達を描きまくることでこの地獄の30分間を凌ぎきった。
図書室を出たどろり達は廊下でトイレの見回りをしていたロカ先生とすれ違った。
「こんにちはー。」
と、どろり達は礼儀正しく挨拶をした。
ロカ先生は立ち止まり、少しどろり達を
観察した後。
「…..ええ、こんにちは。」
と冷ややかな目を少し細めて挨拶を返した。
そして、《ボランティア部》三人はとりとめのない雑談をしながら、夕闇に染まる学校を後にした。
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