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「今日だって、君が俺のために必死に料理を作ってくれたことが…指に傷まで作って尽くしてくれる姿が、本当に嬉しかったんだ……」
彼の言葉の一つ一つが、凍えきっていた心の奥深くまで染み込んで、溶かしていく。
同時に、ずっと求めていた彼のぬくもりが、指先から全身へと幸せな重みを持って広がった。
「ほ、本当に……?」
「あぁ、本当だ。これからも遠慮せず俺のそばにいてくれ。夜のことも……逃げずに、ちゃんと向き合うと約束する」
彼の力強い言葉に、今まで堰き止めてきた不安や孤独が、一気に涙となって溢れ出した。
「よかった……っ、わたし、魅力がないのかなって…ずっと不安で……」
しゃくりあげるように嗚咽が漏れ出す。
私は彼の肩口に額を押し付けた。
すると、あたたかな大きな掌が後頭部を優しく覆い、さらに深く引き寄せられた。
「君には謝るべきことばかりだ。本当に申し訳なかった……」
柔らかい上着の布越しに、ドクドクと力強く打つ彼の鼓動を感じる。
私は子供のように泣きながら、ようやく手に入れたこの体温を噛み締めていた。
ふと、抱き締め合ったまま彼を見上げると、シュタルク様の顔は耳元まで真っ赤に染まっていた。
「シュ、シュタルク様…?お顔が赤いですけど……っ」
彼はきまり悪そうにそっぽを向きながら
「き、気にしないでくれ…君にこうして触れると、本当に、色々と調子が狂ってしまうんだ……っ」
と、掠れた声で呟いた。
その、完璧な公爵様のあまりにも人間味溢れる不器用な姿に愛しさが込み上げ、つい笑みがこぼれてしまう。
「今までそれが原因で…あまり触れてくれなかったということですよね……?」
確信した。
シュタルク様は、私が想像していたよりもずっと純粋で、照れ屋で、そして不器用な人なのだ。
「だから、今からは……こうして触れる機会も増やしましょ…!」
私がそう宣言すると、彼はますます赤くなり、視線を彷徨わせながらも力強く頷いた。
「わっ……分かったが、少しずつにしてくれ。俺が持たなくなる…っ」
「持たないって…そんなに恥ずかしいですか……?」
「…ああ」
「ふふっ…シュタルク様、可愛いですね」
そう言って笑う私を、シュタルク様は呆れたように
けれど慈しむような深い眼差しで見つめ返していた。
────────────
夜半の帳が下りて随分経った頃。
私はベッドの上で落ち着かなく、毛布の端を握りしめていた。
結局、執務室で想いを確認し合うことはできたものの
「夜の話については、また後日しっかりさせてくれるか……?」
と、耳まで真っ赤にした彼に懇願され
そのまま自室に戻ってきてしまったのだ。
(でも…ちゃんと愛されてるのは分かったし。これからは、もっと……)
確かにシュタルク様とはもっと親密になりたい。
けれど、彼が「君を大切にしたい」と願うあまりに慎重になっているのなら
その不器用な優しささえも尊重したいし
愛おしく思えた。