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ピーンポーン。
玄関の呼び鈴を鳴らせば、はーいという弐十君の声が聞こえてきた。
弐十「すぐ行くからちょっと待ってて。」
キル「ん。」
来てしまった。
覚悟も決めてちゃんとしろせんせーにも事情を話して、此処まで来たけれど、それでも不安は拭いきれない。
少しだけ震える自分の手。
ふぅ、と深呼吸をして俺はもう片方の手でその手を握りしめた。
……今日、話せるだけ、話す。
そして、全部諦める。
そのために俺はここに居る。
ガチャ、と扉が開いて弐十君が中から顔を出した。
弐十「いらっしゃい、中入っていいよ。」
キル「ありがと。」
扉をしめて中へと入れば、ふわりと花の香が家全体に充満していた。
リビングの方へと案内され、俺はソファへと座った。
キル「片付いてんね、思ったより。」
弐十「まぁねー、せんせーとかよく来てくれるし、自分でも動けないわけじゃないし、掃除嫌いじゃないからね。」
逆に、生活感がないともいえるその整えられた空間は少しだけ居心地が悪かった。
此奴の家に俺はいつぶりにきただろうか。
俺の家には良く来るくせに自分ではあまり呼ばない気がする。
キル「まだリスナーにも言ってないでしょ?花吐き病のこと。」
弐十「うん。気付かれてもないよ。」
キル「よくできんな、結構症状酷いって聞いたけど。」
弐十「あはは、まぁ配信で食ってきた身だから。トルテさんのそれはせんせー情報?」
キル「うん。」
最近、二人で話すことが極端に減って、こうやって一対一で会話するのは久しぶりなような気がした。
それでも会話は途切れることなく続き、気まずさの欠片も感じさせない。それがいつもよりずっと心地良い。
向き合うのが、怖い。
このまま目を逸らしていたい。
……やめろ。揺らぐな。
拳を握りしめ、俺は弐十君の方を真っすぐ見た。
ん、と首を傾げて俺からの言葉を待つ弐十君。
キル「……弐十君は、誰に片思いしてんの?」
驚いたように、その双眼が見開かれた。
ぱちぱち、と瞬きをした後、すっと暗く目が伏せられ、それでも笑って言った。
弐十「…………トルテさんには、言えないよ。笑」
苦しそうに、悲しそうに、切なそうに、
でも、全部を押し殺したような笑みを、弐十君は浮かべていた。
弐十「ぅ”……ぇ”ぐッ、ごほっ、げほ、ッ!」
口元と胸元を抑えて咳き込んでいる弐十君は酷く苦しそうで。
ソファに座っていた俺が立ち上がって立っているそっちへと歩く。
キル「ごめん……変な事聞いた。」
弐十「ううん、ッ、大丈夫……っ」
背中をさすり、身体を支えるように立った俺は、意図せず弐十君を抱きしめるような形になる。
びくっ、と弐十君の身体が震えて俺の、胸元を少しだけ話すように手をそこに置いた。
拒絶の、形。
それでもきっとやさしさのせいで俺を突き放せないんだろう。
弐十「…わかってる………俺が好きな人はね、っ……俺なんて、ちっとも意識してない……だから、俺は何も言わない。」
弐十「その人の為でもあるよ、けど…………一番は、自分の為。…………臆病な、俺を守るため。」
嗚呼、なんだよそれ。
俺は、今目の前にいるお前に対して、全く同じ感情を抱いているのに。
弐十「っ、ごめんね…トルテさん、ごめん……」
キル「……何に対して、謝ってんだよ。」
いつも、前向きで、弱音なんて吐かない弐十君が、俺に弱さを見せてくれている。
けれど、俺が弐十君に抱いている感情と同じそれを……弐十君は、他の誰かに、向けている。
心が酷く苦しい。
俺が、その相手だったらいいのになんて醜い嫉妬が心の底から湧き上がってくる。
このまま、抱きしめてしまいたい。
なら、俺にしろよ、と言ってしまいたい。
俺の腕の中で小さく震えるその身体に、俺は何もすることができない。
それが、酷く悔しくて。
酷く、苦しくて。
キル「っ、……げほっ、がはっ……!?」
口元から、ひらりという、
感じたこともない感覚と共に、
一つの花が
はらり、と地面に落ちた
#キルシュトルテ
#最強無敵連合