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弍十「え、…?」
目の前の光景に、俺は絶句した。
俺の周りに吐き出された花の中、はらりと一つの花が落ちる。
キル「ぅ”……、は、、?」
吐き出した本人であるトルテさんも呆然と、その花を見つめた。
…なんで、?
キル「………冗談にならないんだけど……俺、花触ってないよな…?」
心の底から驚いたような表情でトルテさんが言う。
弍十「う、うん…」
俺もそう答えることしかできない。
心臓が、どくんっと嫌な音を立てた。
トルテさんも、花吐き病…、?
なんで、だって絶対花は触ってない。俺とずっと話してた。
なら、なら……
震える手。すぅ、と暗くなる目の前。
なるべく、笑って俺はトルテさんに聞いた。
弍十「…っ、トルテさんも、好きな人いるの?」
静寂。
答えは、帰ってこなかった。
でも、わかってしまった。
苦しそうにこちらを向いて、悲しそうな顔したトルテさんをみて、わかってしまった。
……あぁ、いるんだ。
弍十「ッ…がはっ、げほっ、ぅ”っ、ぁぐ”…!」
キル「っ、弍十君!?」
苦しい。辛い。せりあがってくる花以上に、わかってしまったことが。
弍十「…ぅ”ぇ”、…っ、かは…」
花に、赤色の血が混じっていた。
段違いの花の量、ひゅうっと乾いた音が喉から鳴る。
ああ、このまま殺してくれよ。
少しだけ、少しだけでもさっき俺に寄り添ってくれた、トルテさんに期待した俺を。
ほんのちょっとだけでも、彼にすがってしまいたいと思ってしまった俺を。
分かっていたはずなのに、叶わない願いだってことを。
トルテさんが俺に向けてくれる優しさも、特別だなんて思わせる素振りも、全部全部心のどこかで感じていた俺の淡い一握りの期待だってこと。
これはきっと、最後まで諦めきれなかった俺に対する贖罪だ。
花吐き病になって、皆に迷惑かけて、自分も死ぬかもしれなくて。
それでもあきらめることができなかったくらいには、俺は焦がれていたんだ。
彼に……トルテさんに。
酷く滑稽な話だ。
押し殺すことも、諦めることも、伝えることも、叶うこともできなかった想いである花に、身を滅ぼされて死ぬなんて。
欲張った俺は、想いを伝えることもできずに、きっとこのまま息が出来なくなって自分の命も失って、みんなにも迷惑かける。
全部、全部おしまい。
ごめんね、ごめんなさい。
せんせーにも、話を聞いてもらって。
ニキ君とかシードにもあんなに気を遣わせて。
他のみんなにだって、沢山迷惑かけて。
後悔しても無駄なのに。
もう何も、取り返せないのに。
ごめんなさい、ごめんなさい。
みんな、ごめん。
……トルテさん、ごめん。
目の前が暗くなる。ぐら、と足元が揺れて俺はそのまま崩れ落ちた。
俺の視界に最後に映ったのは、ずっと想っていた人ではなく、
血で汚れた、アネモネの、花。
嗚呼全部全部、
失うくらいなら
……好きになんて、ならなきゃよかった。
ーーーーーーーーーーーーーー
キル「っ、弐十君!?」
明らかに今までとは違う咳き込み方をする弐十君に近づく。
呼吸がおかしく、息が荒いのも一瞬で、大量の花を吐き出した彼はそのまま気絶した。
呼吸の音が、聞こえない。
息が止まっていた。
キル「ッ、嘘だろ……今すぐ救急車ッ……!げほっ、ごほッ、ぇ”ぐ、…ッッ、」
手に取ったスマホが滑り、ガタンッと荒い音を立てて落ち、俺も口元を抑えてその場に座り込んだ。
はぁ、と息を吐こうとするも、先ほどの弐十君と同じようにひゅうっと息が漏れるだけだった。
感情が乱れれば、花の量が増える。
そんなことを前にせんせーから聞いたことを思い出した。
キル「う”っ、がはッッ、」
必死にスマホに手を伸ばすけど、花が止まらずにせりあがってきて息が苦しくなり、届かない。
ふざけんな……ッ、ここで俺が倒れたら弐十君はどうなる!!
尋常じゃない焦りと自分への怒りで頭が真っ白になる。
けれど、そうなったところで吐き出される花の量が増えるだけ。
とうとう息が持たなくなり、俺は体を支えることが出来ずにドサッと倒れた。
床一面に散らばる大量の花。
主に白い花、そしてところどころについている、吐血された弐十君の血。
目の前で蒼白倒れている弐十君に手を伸ばしても、視界はもう既にホワイトアウトし始めている。
キル「ッ、に……と、くんッ、ッ!」
やめろ、やめてくれ。
花吐き病が、想いのせいならば、この感情を蓋するだけじゃなく、全部殺すから。
なかったことに、するから。
奪わないでくれ。
何よりも、大切な人を。
そんな想いもむなしく意識はどんどん薄れていく。
視界に映るのは、俺が吐いた、弐十君と同じ、アネモネの花。
俺に対する贖罪なのか?
この想いを、どうすることもできなかってせいで、
弐十君が、死ぬのか?
大切な命が、目の前で
失われるのか?
嗚呼そうならば、
もしも、そうなら、
……最初から、好きになるんじゃなかった。
プツン
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アネモネ
花言葉:後悔
取り返しのつかない出来事に対する、切なく深い後悔。
…………運命、そして、失った、愛。