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師匠たちはたまにボスと私たち弟子を置いて出かける事がある。
「アニキ〜。どこか行くポポ?」
「ちょっと人と会うから、次の犯罪道具を作っておいて貰えると助かる」
「了解ポポー」
「じーにあすはまた花摘みに行っているのか。まぁ、自分でなんとかできるからいいか」
「兄貴。スロットに行くんですか?」
「いーや、ちょーっと野暮用」
「承知しました。行ってらっしゃいませ」
「ととみっくすさん。お時間があればメカニック一緒に行きませんか?」
「れんまボーイ。おれ出かけるからその後でもいい?」
「分かりました。戻ってからお願いします」
「ぺん兄ぃ、メロ姉、ジム行こう〜」
「ぺんちゃん行きましょう〜」
「オレちょっと用事あるから後から合流するね。ジムまではヘリで送るよ」
「はーい」
「赤彩。僕ちょっと出かけてくるから」
「それ、赤彩も一緒に行けますか?」
「いや。一人で行くからその間は自由行動で」
暗に「付いてくるな」と言われたものの、ダメとはっきり言われたわけではない。
師匠は無理でも他の師匠たちなら大丈夫だろうと、赤彩は一番脇が甘いと思っているぺいんとの後を付けた。相手はヘリだが、自分が地上なら早々気付くことはないだろう。
たどり着いた先は街の東南にあるコンテナターミナル。距離をとっていたので着陸したヘリは死角になりぺいんとの姿を視認できなかったが、倉庫のような大きな建物に入っていく叶を見つけることはできた。
少し離れた所のコンテナ群に隠れて様子をうかがっていた赤彩は、背後に迫る人物に気づけなかった。
「ここで何をしている?」
赤彩は突然声をかけられ硬直したが、いつもより低くはあるが聞き覚えのある声に振り返った。そこにいたのは茶色のスーツに身を包み、見覚えのある黄色の仮面を付けたぺいんとだったが、いつもとは違う雰囲気に戸惑った。しかも自分は頭に銃口を突きつけられている状況だ。
「えっと。叶さん、どこに行くのかなって」
赤彩は普段通りの明るい声色で応えたが、ぺいんとは低い声色のまま続けた。
「付いてくるなって言われなかった?」
「一人で出かけるとは聞いていたんですけど気になって………」
「………そう」
いつものノリのいいぺいんとではない様子に赤彩はだんだんと不安を感じてきた。そしてこれは本当に付いてきてはダメだったのかもしれないと思い、内心あせり始めた。
そんな赤彩の様子を見、返事を聞いたぺいんとは体勢はそのままで無線に手をかける。
─── かなかな、外に来てくれる?
─── なんかあった?
─── 来れば分かる。
無線を受けてすぐ、叶は近くの大きな倉庫から出てきた。辺りを見渡し、近くのコンテナの隙間にいるぺいんとを見つけるとゆっくりと近寄ってきた。
「ぺんちゃん、どうしたの?」
ぺいんとが視線だけを向けると、そこにはアジトで分かれたはずの弟子の姿があった。
普段通りの師匠の姿を見た赤彩は安心したのか情けない声を出してきた。
「叶さぁん」
「なんで来ちゃったかなぁ」
叶の様子を見たぺいんとは「後は任せたよ」と言いその場を離れた。
ぺいんとの態度と立ち去る方向を見た叶は弟子に向き直り、帰るよう促した。
「帰りな。言いつけも守れない弟子じゃないでしょ?」
「はい」
了承はしたものの納得の行かない様子の赤彩の態度を見て、叶はさらに言葉を続ける。
「あと、一つだけ」
その言葉にバイクに乗ろうとした赤彩は叶の方を振り返る。
「ぺんちゃん相手ならごまかせると考えていたなら、それは彼を見くびりすぎ。問答無用で頭を打ち抜かれなかったのは彼の温情だと思った方がいい」
弟子が帰るのを見届けた叶は先ほど出てきた建物の方に戻った。途中、人目の付きにくい暗がりではぺいんとが壁にもたれて待っていた。
「ぺんちゃん。殺さないでくれてありがとね」
ぺいんとは叶に並んで歩き出す。
「騒がれたり救急隊を呼ばれる方がやっかいだから」
「ごめんねぇ。うちの弟子が」
「オレ、なめられているからね。まぁ、次はもうないでしょ?」
「それはどっちの意味?」
ぺいんとは前を向いたまま返事をする。
「そこまでバカな弟子じゃないでしょ?」
「………」
「ミドリたちが待っているから行くよ?」
二人は並んで大きな倉庫に入る。
「お待たせしました」
机の周りには茶色のスーツに身を包んだ男性数人とこの街の警察署長。
この街のOLDと呼ばれるものたちの会合が始まった。
一方、アジトに戻った赤彩はまだ落ち込んでいた。その様子を感じ取ったボスのメロコは赤彩に優しく声をかけた。
「赤彩、どうしたの?」
「叶さんに怒られました」
赤彩はメロコやその場にいたNEWと呼ばれる弟子たちに先ほどの出来事を伝えた。
「赤彩の気持ちは分からないでも無いし、移行とするのが良さでもあるけど、判断ミスったねぇ」
一通り話を聞いたあと、メロコは赤彩を優しく諭した。
「兄さんたちは優しいし、私たちにいろいろとあわせてくれている。特にぺんちゃんは人当たりがいいし」
「釈迦さんもあんな感じですけど教えてくれますし、大分ひかの自由にさせてくれています」
「ととみっくすさんも気にかけてくれるし、優しいし。師匠たち皆さん、背中がでかいですよね」
ジーニアスとれんまはそれぞれ自分の師匠の良いところを伝える。
師匠たちは優しいが厳しい面がある事も知っているメロコはそれを伝えるべく言葉を続けた。
「優しいけど、彼もOLDと呼ばれる人たちなのよ。経験なんかは全然上なのよ」
「兄貴、スロカスですけど立ち回りとか、兄貴たちから見てまだと思われているラインには踏み込ませてくれませんね」
「それが歯がゆい所ではあるポポね」
水上、ポポも超えられないラインを感じていたのか同じような感想を持っていた。
師匠を兄のように慕っているネクロンは信頼している事を伝えた。
「内緒にされると思うところはあるけどぉ、ぺん兄たちが判断を間違えたことある?」
メロコはそんな弟子たちの顔を見渡し、決意ともいえることを言った。
「任せてもらえるよう、踏み込ませてもらえるよう、私たちも成長しましょう」
「………はい」
自分たちはまだ若い。技術も経験も足りない。
だからこそ、いつか師匠と肩を並べられるように、高みを目指して歩み続ける。
物語はまだ始まったばかりなのだから。
Vintage Brown
長年使い込まれたような深み、渋みを有する茶色。「古くて良いもの」「年代もの」という意味を含む。