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ゆんしょ
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翌朝。
照はいつも通り出社した。
いつも通り辰哉へ「おはよう」と声を掛ける。
💛「おはよう」
💜「おはよ」
笑顔も返ってきた。
でも照の胸の中には、昨夜届いたメールが重く残っていた。
『本社勤務開始日、一週間前倒し』
つまり。
辰哉と同じ職場で過ごせる時間が、一週間減った。
まだ伝えられていない。
朝から何度も話そうと思った。
けれど。
辰哉が楽しそうに仕事の話をするたび、言葉が喉で止まってしまう。
────────
昼休み。
社員食堂。
💜「そういえばさ」
💜「異動までにあの資料整理しとかないとね」
💛「……そうだな」
💜「あと一か月あるし」
照の表情が一瞬だけ曇る。
“一か月じゃない”
そう言いたかった。
でも。
言えなかった。
────────
夕方。
照は部長に呼ばれた。
「岩崎」
「前倒しの件、辰哉には伝えたか?」
💛「……まだです」
部長は少し困ったような顔をする。
「早めに話した方がいい」
「本人が他から聞く方がつらいぞ」
その言葉が胸に刺さる。
五年前も。
“言えなかった”
それが後悔になった。
同じことだけは繰り返したくない。
────────
終業後。
照は辰哉へメッセージを送る。
💛「今日、少しだけ時間もらえる?」
すぐに返事が来た。
💜「もちろん」
────────
待ち合わせ場所は、会社近くの河川敷。
夕日が川を赤く染めていた。
辰哉は先に着いていて、照へ手を振る。
💜「こっち」
その笑顔を見ると。
また言葉が出なくなる。
辰哉は首を傾げた。
💜「どうした?」
照は深呼吸する。
💛「ごめん」
💜「?」
💛「異動」
💛「一週間早まった」
辰哉の笑顔が止まる。
風だけが静かに吹く。
💜「……そうなんだ」
💛「昨日メールが来た」
💜「昨日?」
💛「うん」
辰哉は少しだけ俯いた。
💜「昨日言ってくれると思ってた」
その一言が、照の胸を締め付ける。
💛「ごめん」
💛「タイミングが分からなくて」
💜「うん」
💛「傷付けたよな」
辰哉はすぐに首を横へ振る。
💜「怒ってるわけじゃない」
少し間が空く。
💜「ただ」
💜「また一人で抱えたんだって思った」
照は何も返せなかった。
図星だった。
────────
辰哉は小さく笑う。
その笑顔は少しだけ寂しい。
💜「約束したのにね」
💜「何でも話すって」
照は俯く。
💛「……ごめん」
💜「謝らなくていい」
💜「次から」
💜「ちゃんと話して」
照はゆっくり顔を上げた。
💛「約束する」
💜「うん」
その時だった。
辰哉のスマホが鳴る。
画面には知らない番号。
💜「誰だろ」
電話に出る。
数秒後。
辰哉の表情がみるみる変わっていく。
💜「……はい」
💜「え?」
💜「分かりました、今向かいます」
電話を切る。
照が心配そうに近付く。
💛「どうした?」
辰哉は少し青ざめた顔で答えた。
💜「父さんが倒れたって」
💜「病院に来てほしいって……」
照は一瞬で表情を引き締めた。
💛「行こう」
迷うことなく辰哉の肩を支え、二人は病院へ向かって走り出した。
五年前にはできなかったこと。
今度は、辰哉は一人じゃなかった。
コメント
1件
「言えなかった」の重みが五年前の後悔と重なって、すごく切なかったです。河川敷の夕日と、照がようやく打ち明けた瞬間の間——風だけが通る静寂が刺さりました。それでも最後、「今度は一人じゃなかった」で終わるのが、本当に救いでしたね。展開の拾い方と感情の描き方が丁寧で、胸に響くエピソードでした。