テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ゆんしょ
6,443
2,639
病院へ向かう車の中。
辰哉は何度もスマホを握り直していた。
窓の外の景色は流れていくのに、時間だけが止まったように感じる。
💜「……大丈夫かな」
声が震える。
照は前を向いたまま静かに答えた。
💛「今は病院に着こう」
💛「それだけ考えよう」
辰哉は小さく頷いた。
その一言だけで、少しだけ呼吸が楽になった。
────────
病院。
受付を済ませ、急いで病室へ向かう。
扉の前には母親が立っていた。
辰哉の姿を見るなり、ほっとしたように笑う。
「辰哉」
💜「母さん!」
「大丈夫、大丈夫だから」
その言葉を聞いて、辰哉の肩から力が抜けた。
💜「父さんは?」
「検査中。でも先生から命に別状はないって」
辰哉はその場にしゃがみ込みそうになる。
💜「……よかった」
照は少し離れた場所で、その様子を静かに見守っていた。
────────
一時間後。
検査を終えた父親が病室へ戻ってきた。
医師は穏やかな表情で説明する。
「軽い不整脈が見つかりました」
「しばらく検査は必要ですが、今回は早く受診できたので大事には至りませんでした」
辰哉は深く頭を下げる。
💜「ありがとうございます」
病室に入ると、父親は照れくさそうに笑った。
「心配かけたな」
💜「ほんとだよ」
辰哉は少し怒ったように笑う。
💜「急に倒れるとかやめて」
「悪い悪い」
病室に笑い声が広がる。
────────
少しして。
辰哉は廊下へ出た。
窓の外はすっかり暗くなっている。
照が隣へ来た。
💛「落ち着いた?」
💜「うん」
辰哉は照の方を見る。
💜「来てくれてありがと」
💛「当然」
💜「仕事あったのに」
💛「そんなの後でどうにでもなる」
照は少し笑う。
💛「辰哉の方が大事」
その言葉に、辰哉は少しだけ目を潤ませた。
💜「泣かせないでよ」
💛「泣かせるつもりなかった」
💜「最近すぐ泣くんだけど」
💛「知ってる」
二人は小さく笑い合う。
────────
その時だった。
病室から辰哉の母親が顔を出す。
「照さん」
💛「はい」
「今日は本当にありがとう」
照は軽く頭を下げる。
「辰哉、一人だったらきっともっと不安だったと思う」
辰哉は照れくさそうに目を逸らす。
母親は二人を交互に見て、ふっと微笑んだ。
「昔から変わらないね」
「辰哉が困ってる時、いつも照さんが隣にいた」
辰哉は思わず照を見る。
照も少し照れたように笑っていた。
────────
病院を出る頃には、夜風が少し冷たくなっていた。
駐車場へ向かって歩く。
💜「今日さ」
💛「うん」
💜「一人じゃなかった」
💛「うん」
💜「それだけで全然違った」
照は歩きながら静かに頷く。
💛「これからも」
💛「一人にはしない」
辰哉はその言葉を聞いて、小さく笑った。
でもその直後。
照のスマホが震える。
本社の上司からの着信。
照が電話に出る。
💛「はい」
数十秒後。
照の表情が強張る。
電話を切ると、辰哉が不安そうに見つめる。
💜「どうした?」
照はゆっくり息を吐いた。
💛「明日」
💛「本社へ来てほしいって」
💛「急に、プロジェクトの体制が変わるらしい」
その一言が。
二人の穏やかな時間に、また新しい波を立て始めていた。
コメント
1件
第19話、読み終わりました。 お父さんが倒れたと知った時の辰哉くんの焦りと震えが痛いほど伝わってきました…。「今は病院に着こう」って照くんが一言で落ち着かせるところ、すごく頼もしかったです。 母親から「昔から変わらないね」って言われる場面もじんわり来ましたね…。お互いがお互いの支えになっているのが伝わってくる回でした。 最後の新しい波、次が気になりますね。またゆっくり読ませてください🌷