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江戸川会から考えた
1話完結
渡辺said
渡辺「……なぁ、涼太。人、多すぎねぇか?」
思わず愚痴が口から漏れた。浴衣の袖を少し引っ張りながら、俺はすぐ隣を歩く涼太の顔を見上げる。人混みはあんまり得意じゃない。それは涼太だってよく知っているはずなのに、今日ばかりは「行こう」と言い出したのはアイツの方だった。
夏の風物詩、江戸川区花火大会。ここは俺たちの地元だ。
子供の頃から見慣れた景色のはずなのに、同じアイドルグループのメンバーとしてデビューして、お互いに人気者なんて言われるようになってからは、2人でここへ来る機会なんてすっかりなくなっていた。
カモフラージュのために、普段の私服ではなく粋な紺色の浴衣を着て、深めの帽子に伊達メガネを合わせている。それでも、下駄の慣れない足元と、周りの一般の見物客の熱気に、俺は少しだけ息苦しさを感じていた。
宮舘「どうしたの、翔太。疲れた?」
涼太は物静かで落ち着いたトーンのまま、ふっと優しく微笑んだ。キザな態度やセリフは一切ないけれど、その低い声には、俺を安心させる不思議な響きがある。
渡辺「疲れてねぇよ。……ただ、ちょっと歩きにくいだけ」
宮舘「じゃあ、とはぐれないようにね」
と言って、自然な動作で俺の細い手首を男らしく、でも優しくギュッと握りしめた。
渡辺「っ、おい…// 誰かに見られたらどうすんだよバカ!」
一瞬で顔が熱くなる。俺たちはグループ内でも付き合っている恋人同士だ。だけど、外でこんな風に触れ合われると、幼馴染だからこその気恥ずかしさもあって、いつも余裕がなくなって照れてしまう。
俺は必死にツンデレを発動して手を振りほどこうとするけれど、涼太の大きな手のひらは、俺の手を離してくれない。
宮舘「大丈夫だよ。誰も俺たちのことなんて見ていないから」
涼太は余裕のある瞳で俺を見つめると、向こうから歩いてきた人の波から俺を庇うように、自分の広い胸板のほうへグッと引き寄せた。
渡辺「……あ、そういえばさ」
涼太の浴衣の胸元に顔を埋める形になりながら、俺は照れ隠しに声を張り上げた。
渡辺「なんか、あべさくの2人も今日、このお祭りに来てるらしいぜ。さっきラウールから『阿部ちゃんと佐久間くんが2人でデートしてます』って連絡きた」
宮舘「へぇ、阿部と佐久間も。……それは賑やかになりそうだね」
涼太はクスッと笑ったけれど、その視線は俺から1ミリも外れなかった。他のメンバーたちのことなんて今はどうでもいい、とでも言うように、俺を抱きしめる腕に少しだけ力がこもる。そのまま涼太に手を引かれ、俺たちは混雑する土手の方を少し離れ、比較的静かな河川敷の片隅へと移動した。
少し遠くなった屋台の灯りと、下を流れる川のせせらぎが、お祭りの喧騒を少しだけ遠ざけてくれる。
宮舘「ここなら、少しは落ち着いて花火が見られるよ。……やっと2人きりになれた」
涼太が帽子を少し上げて、夜空を見上げる。その横顔があまりにも絵になりすぎていて、俺は慌てて目をそらした。ドン、と夜空に大きな花火が打ち上がった。大輪の光が火花を散らしながら夜空に広がり、遅れてお腹に響くような重い音が鳴り響く。色とりどりの光が俺たちの浴衣を鮮やかに染め上げる。
宮舘「綺麗だね、翔太」
渡辺「……あぁ、そうだな」
花火を見ているのか、それとも俺を見ているのか。涼太の視線が、再び俺のほうへと向けられた。その引き締まった瞳の奥にある熱量に、俺の心臓が痛いくらいに跳ね上がる。
#ご本人様には関係ありません
コンソメパン
10,741
宮舘「翔太。俺、こうしてお前と地元の花火を見られて、本当に嬉しい。……やっぱり、俺の隣には翔太しか似合わないよ」
渡辺「っ、ばか、何言ってんだよ……っ//」
涼太の低い、いつもより真面目なトーンの声。付き合っていてもなお、こういう直球の愛情表現にはいつも慣れなくて、最後は顔を真っ赤にして、涼太の浴衣の袖をぎゅっと力任せに掴むことしかできなかった。
渡辺「俺だって、お前以外、誰も見てねぇよ……っ//」
消え入りそうな声で俺が本音を呟くと、涼太は嬉しそうにフッと笑って、俺の体をさらに強く、抱きしめた。地元の喧騒と、夜空に咲く大輪の光。
付き合っている2人の距離は、夏の夜の熱気と共に、静かに、でも確実に重なり合おうとしていた。
学パロは次の話からで
コメント
2件
普通に文才あるのなんなん
めかぶぷりんさん、第10話読みました! 浴衣の伊達メガネ姿、夏の夜の花火、そして何より涼太が翔太の手首をギュッと握るくだり…あの一瞬の距離感がとても良かったです。人混みから河川敷へ移動して「やっと2人きり」と囁くシーン、胸がじんとしました。地元の花火大会という舞台も、二人の関係性を優しく包んでいて素敵でした。続きも楽しみにしています🌷