同じような話があるかもしれません
下手です
キャラ崩壊ありです
これらが許せる方のみ読んでください
(多分モブ視点)
順位戦や由緒あるタイトルでは無いけれど、決勝トーナメントのベスト8になれば注目度も高いし、残るメンバーもA級が多くなる。今日は4試合同時に行われた。俺の相手は隈倉さん。その見た目通り力強い手を打ってくるから、こっちも防戦一方。結局負けてしまった。
桐山は隣でB1のやつと対戦していた。もうすぐ終局のようだ。相手はイライラが隠せずに爪をガジガジとかみながら体をゆすっている。同じ年代だけれども、相手が関西でこちらが関東の協会に所属しているせいか、あまり交流がない。正面に座る桐山と相まって、なんというか、品がない。
宗谷の桐山と付き合っていると言う衝撃の告白から2週間がたった。
そんな事を考えていたら、ぱらららっ、と不快な音がした。桐山の相手が基盤の上に持ち駒を放った音。負けたからと言ってプロ棋士がとっていい態度では無い。感想戦中の隈倉さんも眉間の皺を深くする。別の対戦相手と戦っている島田さんもそちらを見て不快気な顔をした。対する桐山は軽く眉をあげただけで静かな表情だ。想像したくはないけれど、中学生からプロ棋士で俺の2倍以上この世界に居る奴だ。相手のこんな態度は初めてでは無いのかもしれない。
「いーよなー。名人の愛人になれば将棋も強くなれるもんなー。だけど将棋界も末期だよね。名人とタイトルホルダーがゲイなんて。引退すれば?気持ち悪いんだよねー」
桐山の対戦相手が放った言葉で周囲の空気が凍る。対局者だけでなく、記録係の棋士たちもあまりの暴言に硬直した。
がたっと立ち上がろうとした俺を制したのは静かな桐山の声だった。
「今日の対極ですけど、僕の矢倉に対して左美濃は戦法として悪くなかったと思うんです。」
え。この流れで感想戦始めちゃうの?桐山?今なら黙って席を立って帰っても誰も文句言わないよ?あまりな展開に桐山達の棋戦の記録係たちは涙目になっている。彼ら達の為にも帰ってあげた方がいいと思う。
「はぁ?」
暴言を吐いた彼も驚いたようだ。
「だけど、その後ですよね。なぜここで角を動かしちゃったんですかね、攻めにもならないし中途半端だと思いません?あんまりな悪手につい僕、逆に何らかの作戦かと思いました。僕にしたらこの5五角、気持ち悪いです。同じプロ棋士として恥ずかしいですよ。そうそう、先月の王将戦予選でしたっけ?中井八段の対局の時は角換わりにしようとして失敗してましたね。あの時の23手目の4四歩、気持ち悪かったなぁ、!それに……」
そのまま桐山が止まらない。ペラペラペラペラと相手の過去の悪手を30分以上言い続けた。奴の悪手の数々にもびっくりしたけれど、全部覚えている桐山にも鳥肌が立った。
「中途半端にしか理解出来ていない戦法は使わない方がいいですよ?恥ずかしいですし」
「な、なんでそんなことまでお前に……」
「え?先に喧嘩を売ってきたのは貴方でしょう?僕は棋士として真っ当に相手をしただけですけど。こんなことで涙目になるくらいなら、初めから大人しくしていればいいのに。」
色んな意味で勝負は完全完璧に決まっていた。
「そうだ皆さん、この方あれだけ暴言を吐いたんですから、僕からも一言二言暴言を行ってもいいですよね?」
と帰り支度をしながら言う。先輩棋士たちはウンウンと頷く。
頷ちゃダメだろ。
『次同じような事言ったら息の根止めてやるよ。ぶぁーか』
と超怖い低音ボイスが響いた。
さすがの相手も腰を抜かしたのか、動かない。
それでは、と言いちゃんと先輩棋士にお辞儀をして帰っていった。
俺は心の中で拍手をしていた。多分他の棋士たちもしていたと思う。
……最後のぶぁーかは悪戯っぽく聞こえたのは俺だけかな?
コメント
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あう…しゅきぃ…