あービックリしたぁ!取り敢えず秘密基地へ向かおうと異星人対策室本部ビルを出た瞬間車が突っ込んできたんだもん。しかも直前で爆発するし。前世で何度もニュースで見た自爆テロを思い出した。まさか私が狙われる立場になるとはなぁ。
「フェル!死なせないで!」
私の前に出たフェルにそんなことをお願いした私は酷い奴なんだろうなぁ。
フェルは反転魔法で爆風を全て弾き返したんだけど、お陰で周囲に爆風が分散されて大惨事になってしまった。もちろんフェルは悪くない。咄嗟に私を守ろうとしてくれたんだし、もし罪に問われるなら私だ。
フェルは同時に運転手を捕まえると言う荒業をやってのけたから驚きだ。あの爆発から助け出すなんて、お願いはしたけど本当に出来るとは思わなかった。
ビックリしているフィーレをばっちゃんに任せて私は直ぐに救助活動を開始した。幸い近くにはウィリアムさん達が居て救助もスムーズに進んだ。仮設の救護所を用意して、提供する予定だった医療シートもジョンさんの許可を貰って惜しむこと無く使った。百枚くらい使ってしまったけど、お陰で死者も出なかった。不幸中の幸いとはこの事だね。
もちろん周辺は大騒ぎになったし、救助活動が一段落したあと直ぐに私達はジャッキー=ニシムラ(非常に残念ながら紳士服着用)さんに先導されて本部ビルへ連れ戻された。
「ジャッキーさん!?」
「外に居ては危険ですからな、しばらくは四階で体を休めていてください。なぁに、この辺りの住民達は騒ぎに慣れっこですからな。少しすれば落ち着くでしょう」
「でも、まだ火事が!」
「そちらも心配無用、ご覧ください」
ジャッキーさんの指差した先を見たら……。
「うぉおおおっっ!!!」
燃料タンクに引火寸前の車をジョンさんが空へ投げ飛ばして…。
「はぁああああっっっ!!!」
何か朝霧さんがかめ◯め波みたいなので空中で爆発させたんだけど!?
「凄い凄い!ティナ姉ぇ!地球人も魔法を使えるの!?」
ほら!フィーレが目をキラキラさせてるじゃんか!
「あー……ティナちゃん、後でお話しよっか」
「アッハイ」
ばっちゃんの笑顔が怖い。いや、私がやらかした結果なんだけどさ。あっ、ごめんなさい。反省しています。
異星人対策室本部ビル四階。アリアが全面的に監修したここは地球でも最高のセキュリティを誇る。基本的には私達が寝泊まりする場所で、私達が持ち込んだ品物もここで保管されている。あの後ばっちゃんのお説教を受けて、フィーレを落ち着かせた私は。
「フェル、無理を言ってごめん。そしてありがとう」
フェルのフォローに入った。あの時、犯人を捕まえていたフェルの顔は忘れられない。
「今回はティナが無茶をしたわけでもないのに謝るんですね」
フェルは優しげに微笑んだ。
「私バカだけど、フェルに色々我慢させてしまったのは分かるから……」
ここまで直接的に私の命が狙われたのは初めてだ。スーパーマーケット事件は事故みたいなものだったけど、あの時もジョンさんが居なかったら大変なことになっていた。そして、今回も。
フェルは人一倍優しい。でも同時に家族を一瞬で亡くしてしまった深い悲しみと傷を抱えている。私の無茶に反応するのも二度と失いたくないからだ。
……それが分かってやってる私も大概だけどさ。
「本音を言っていいなら、ティナとドルワの里で静かに暮らしたいです。危険の無い平穏な毎日を送りたいです。私が本気でお願いしたら、ティナは叶えてくれるでしょう」
……うん。
「でもそれはきっと、私の悩みなんか比べ物にならないくらいの我慢をティナに強いることになります。それは嫌なんです」
「フェル……」
本当、私には勿体ないくらい良い娘だよ。少しでもフェルの不安を取り除けるように頑張らないと。
「外はまだまだ騒がしいな」
私達の他に四階のロビーに居るのはドクターさん達学者の皆さんだ。基本的には秘密基地で研究しているけど、ここも大切な研究拠点らしい。ドクターさんは基本的に異星人対策室の本部ビルに居るみたいだしね。
外はまだ落ち着かない。消火も済んで怪我人も全員手当てしたけど、救急車や消防車両、パトカー何かがどんどん集まっていろんな人が忙しく動き回っている。個人的にはまだ手伝いたいところだけど、余計に場を混乱させるだけと言うのはわかる。皆さんに任せるしかない。
見ていることしか出来ないのは歯痒いなぁ。
「せんせー、アードの技術以外にも興味があったりする?」
「無論だ、フィーレ君。極端に言えば君達の衣類はもちろん髪の毛一本に至るまで全て研究対象だからね」
まあそうだろうねぇ。技術以外にも私達の存在そのものが謎なんだから。
「ふぅん、ならこれあげるよ」
フィーレがロビーにあった大きな皿を取って、羽根を羽ばたかせた。すると鱗粉のような光る粉がたくさん皿に落ちた……鱗粉!?
「むっ!フィーレ君、これは!?」
「リーフ人の羽根についてる粉は結構特殊なんだよ。ね?フェル姉ぇ」
「水に溶かして飲めば体力の回復に最適なお薬になります。地球の栄養ドリンクみたいなものでしょうか」
「ついでに言うと結構高いんだよねぇ☆リーフ人にとって羽根の粉を渡すのは信頼の証みたいだし☆」
「なんと!それを我々に!?」
「後これ。服は渡せないけど、これも地球人からすれば珍しいかな。ほら、フェル姉ぇも」
「分かりました。ちょっと恥ずかしいけど」
フィーレとフェルはサンダルを脱いで皿に追加で乗せた。基本的にサンダルは植物を使った手編み。しかもアードには作成に適した植物が豊富で、皆自作だから種類も違う。当然使われている植物は地球にとって未知の植物だ。
いつの間にかリーフ人二人から地球に未知の物質が提供された。それも気軽に。ほら!ドクターさん達の目がキラキラじゃなくてギラギラしてるじゃんか!
「うぉおおおおーーーっっ!!」
いきなりドクターさんが叫んだ!?
お皿をテーブルに置いて、周りを学者の皆さんが取り囲み。
「オッ! オッ! オッ!アメイジング!オッ! オッ! オッ!エクセレント!」
なんか踊りながら回り始めたぁあっ!!
「ティナ姉ぇ!地球人って面白いね!」
「えぇ……」
これ、私悪くないよね……?
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