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テレビ映画に夢中になっていた私はビクッと身体を揺らした。
食べていたプリンもぷるんと揺れてこのシリアスな場面ではそれが滑稽だった。
その横で父が泣きながら母に懇願する。
どうやら母も薄々気づいていたらしい。
父が外面だけ良く、私の面倒をちゃんと見ていなかったことに。
母は懇願する父を見て引いている。
私自身も私に対していつも強気で当たり散らす歪んだ威厳のある父のイメージだったのに、そんな父を見て心のどこかで情けなさと、そんな姿見たくなかったという悲しさがあった。
大人になってから知ったが、母はこの父のことを元々好きではなかったらしい。
実家出たさにシングルマザーで経済力のない自分を養ってくれる人なら誰でも良かったようだ。
「わかった。まだ住むとこ決まってないし家は出ない。でも離婚はする。新居見つかったら出ていくから。」
母は冷たくそう言い放った。
その決意の固さを察してか父は黙って頷いた
離婚は決定したが同棲生活は相変わらず続いていた。
普通に会話もするし、もう母と元父は友人のようだった。
今日は隣に住むうちと同じシングルマザーのお母さんが遊びにきている。
そのお母さんの名前はマヤさん。
茶髪で派手な柄の服を着ていて、カワウソを飼っているからかいつもちょっと獣臭い。
だが母とは同じシングル同士、気が合うようだった。
時々こうしてどちらかの部屋に集まってはお酒を飲んだり、デリバリーを注文してご飯を食べたりと楽しく過ごしていた。
そう、まさかあんなことが起こるとは思わず楽しく笑って過ごしていたのだった。
ある雨の日、母はパートで元父も仕事で私は託児所に預けられていた。
元父の方が早く仕事が終わるため迎えにきてくれるという。
「みんな手を洗ってきて〜」
保母さんがそういうとみんな一斉に洗面所へ向かう。
双子の男の子と私で最後のようで手洗いをしていた。すると突然・・・
最後のカチッという音で洗面所の電気がフッと消えた。
鍵も外から閉められたようで何が何だかわからないまま大泣きして扉を叩く私達。
バンバンバンッ!!
「先生!!出してぇ!!こわいよおおおおお!!!!」
双子の子も大泣きしている。
すると扉が開き、双子だけ解放され
再び私だけが閉じ込められた。
恐怖から悲鳴をあげて扉を叩きまくった。
すると外から
当時の私は自分が悪いと思ったが、今でも良く覚えている。
狭い洗面所には2つの蛇口しかなく、その時いた子供の人数は15人弱。
私達は最後だった。
遅いのは仕方ないのだ。
前の子がおしゃべりしてモタモタしてたのかもしれないじゃないか。
私と双子はちゃんと静かに順番を守って手を洗っていただけなんだ。
なぜそんな仕打ちを受けなくてはいけなかったのか。
元父が迎えにきて、その出来事を伝えたが「先生が怒るってことはお前が何か悪さしたんだろ。怒られても仕方ないな」と言われたことにより、私はこの事を他の誰にも言えず封印してしまうのであった。