どきどきしていた終始どきどきしっぱなしであった。どうして僕はこの子に惹かれるのだろう。
わからない。なんでもしたいし、なんでもする。
こうして面と向かって話が出来る日がくるなんて…
「君は私のことが好きと言ったよな。」
彼女は片手をつけ、伏し目がちにゆっくりと体勢を変え、僕に背を向けた。…どうして背を向ける…?
「お前が抱いている”それ”は本能的な性愛だ。盲目的で自己中心的…。私が女で、異性だからこそ抱く一時的なもの…それに、私はお前をずっと避けていたのを知っているだろう。相変わらず尾行までしやがって。”辛い”と思わなかったのか?」
予想外の同情の一言に一瞬たじろいだ。…え…そりゃあ辛かったよ。僕の存在そのものまでもが否定されているように感じたから…でもそれは最初だけ。僕は信じた。
「お前は都合のいいものを信じているのだろう?こんなにも辛い気持ちになっているのだから、この先で手に入れられるものは、きっといい結末に違いない。と」
ああ…そうなのか?僕の核心に触れているようで何かが違う。
「都合のいいものを結びつけて都合のいい解釈をする。お前は私に同じものを感じると言ったな?冗談じゃない。私でもないくせに。お前に何がわかる。」
僕は何か言いたかったが中々言葉が出てこない。否定したかった?図星だったのか?それとも彼女からの辛烈な言葉に怖気づいているのか?
「つまりさ…」
意味でも含まれているのだろうか、彼女はこちらに向き直す。
「私のためにも”君自身”のためにも。お互いこれ以上辛くならないように、距離を置こう。辛くなる気持ちは分かるから…。まあ、私はこんな奴さ。ごめんね。」
彼女はにこっと優しい笑みを向けた。
どきっと心臓を打つ。ああ…またこの感覚だ…。身体が焦れったく熱くなる。僕はこの笑みにもっぱら弱い…
「うん…大丈夫…。あの…また会えないかな。」
僕の身体はあたかも何かの目的を失ったかのように、ぎこちなかった。しかし、僕の目は確実に彼女を追っていた。彼女は僕の言葉を無視して、蓋を締め、手際よく弁当をナフキンで包む。米は少し残ったままだった。
僕はしばらくの間、屋上で1人昼食をとることになった。届かない温かみに少しでも触れたく思い、彼女の座っていた場所に移る。ばれなきゃいいんだよ。多少の背徳間の中、何か間違っていたのだろうか…と一人考えを巡らす。
認めたくない
思いかげず出てしまったこの本音に…ああ…これが彼女の言っていた盲目的で自己中心的ってやつか?と思い、僕は少しばかり自分に失望した。
…
………
しかし、意図せず僕は彼女に余計惚れていた。
…
あれ?あれあれ?
“君も”じゃないか。人の気持ちを分かったようなことを言って…彼女は僕を知ったつもりで、僕を突き放したいと考えたのだろうが、どうやら失敗だね。僕は何故か彼女がたまらなく愛おしく感じていた。分からない。この気持ちは一体何なのだろう。
[僕はまだ気づいていない。僕の本心は一体なんなのか。何を求めているのか。どうしてこんなにも狂おしいのか]
そこが張っている。
「…っうあ。ああ…ははっ。ははは。」
ああ。どうしよう。もうすぐで授業なのに…
僕の額に汗が滲む
僕は両手で顔を覆う…
どろどろと影が溶け顔に垂れるもんだから…
ああ好き
一体この気持ちは何なのだろう。
コメント
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更新ありがとうございます🙇♂️ 一途な愛を感じましたが、1部狂気を感じました。 男が狂った愛を抱いているのは、彼女のせいなのかな、と 思わざるを得ませんでした。 (「そこが張っている」の展開が自然すぎて、男性は絶対こうなるのかなと本気で思ったのは秘密です🤫)