サイド アミ
ピンポン、と場に似合わない軽やかな音が鳴る。
程なくして鍵が開いて冴えない男が出てきた。あの団が調べてくれた人相と一致している。
こいつが、両親を殺した……!
「はい……どちら様ですか?」
「あの事故の、被害者の娘に“どちら様”なんていうのね、あんたは……!」
声が震える。
男の顔色がみるみる青ざめ、慌ててドアを閉めようとした。
そうはさせるまいと私は足をドアの隙間に入れ込み、その勢いのままドアをこじ開ける。運で都大会を優勝した訳じゃないのよ。
「ひ、ひいっ!!すみませんでした!」
それは本心半分、私への恐れ半分から出た言葉なのだと悟る。
……こんな、私のような高校生を恐れるようなこんな奴に、私の両親はっ……!!
私は男の胸ぐらを掴む。
「返して!!私の両親と幸せを返してよ!!」
「本当に申し訳ありません!!」
分かってる、分かってるよ!どんなに私が叫んだって、どんなにこいつが謝ったって、死んだ人は帰ってこない!!分かってるから、こんなに辛いの!!
「う、ああああっ!!」
こんな奴なんて────!
「パパ……?」
……え?こ、ども……?
殴ろうとしていた手が止まった。
玄関に来たのはまだ四、五歳くらいの男の子だった。頭に、身体に包帯が巻いてあることに驚きを隠せない。
「あの日、公園の滑り台から落ちて……意識不明の状態で……どうしても気がせっていて……!妻もおらず、俺しか、」
「それが、逃げていい理由になるの?」
「ッ……!」
私は男に鋭く問う。何も、答えない。答えられるわけがない。
「本当に、すみませんでした……!」
「パパァ?悪い事、したの?」
何も知らない男の子が無邪気に首を捻る。元はと言えば、あんたが全て元凶なのに。
……もし、この犯罪者の目の前でこの子を痛めつけたら、もし、この子の目の前でこの犯罪者を痛めつけたら、
それは復讐になるのかな?
拳を握り、キッと男の子を睨みつける。一歩、前に足を踏み出す。
「!逃げ─────」
間に合わないと思ったのだろう。
男は絶望の表情でこちらに手を伸ばす。その顔はよく見たことがあるから知っていた。私も、事故の瞬間、こんな表情をしていた。
でも、それも今日で終わりね。
私は今、この事件に、事故に終止符を打った。
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