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サイド アミ
絶望の表情で男がこちらを見ていた。
私は男の子に手を振り上げ…………そして、優しく頭の上に置いた。
「許した訳じゃない。むしろ、私はまだあんたを、この子を許せない」
けれど、どちらを傷つければもう一方が私と同じ、家族を失った悲しみ、苦しみを抱えることになる。
とくに、私より幼いこの子にそれを味合わせることはどうしても出来なかった。
私がこの苦しみを一番よく知っている。
「?パパ、どうちたの?どっかいたい?」
この子はまだ幸せを持ってる。それがものすごく歪んだ、隠し事だらけの幸せでも。それを取り上げてしまうには、まだ早い。
「お父さんのこと、好き?」
私はしゃがみ込んで男の子と目線を合わせた。
「?うん、だぁいすき!」
「そっか。大切にするのよ?」
涙を流さないよう、無理矢理口角を上げて笑う。ここで泣く訳にはいかない。
「私にはもうないものだから」
「?なくしちやったの?」
「ううん、壊れちゃったの」
「っ……!申し訳、申し訳ありません……!」
男が私にもう一度頭を下げる。
「……私は、あなたが憎い。殺したい。けど、出来ないのも事実。だから、二度と車を運転しないで。そして、この子を私の分まで幸せにして、……できるなら自首して欲しい」
これが、私の決めて選んだ、この事件の結末だ。
こうして、私はこの事件に終止符を打った。
家のドアが閉まる直前、「ありがとう、ございました……!」という声が背中越しに聞こえた。私は、感謝されることなんてしていない、のに。
暗い夜の街を街灯と月明かりがか細く照らす。歩き慣れた道を行けば、すぐそこに私の家がある。
……帰らなきゃ、ううん、帰ろう。
もう、誰もいない静かになった自宅に。