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◻︎弥生さんの相手発見?
「今日は、ステーキにする?それともすき焼き?」
「んー、脂っこいのはなんかなぁ、豚しゃぶがいいかな?野菜たっぷりで。タレはポン酢におろしニンジン生姜、ネギたっぷりのやつ」
「あはは、わかる!昔はお肉でもどんと食べれた気がするんだけど、今はもう目が欲しいだけで胃は断ってくるんだよね」
「でも、スィーツは買おう、これは別腹だから」
スーパー【マミーズ・マート】に礼子とやってきた。
今日は、礼子の誕生日。
でも、礼子のご主人は出張、うちの夫もツーリング旅行でいないから、秘密基地で誕生日パーティーをすることにした。
「ここのお肉は安くて美味しいと評判だからね」
「野菜もいいね、明日の食材も買って行こうっと」
2人であれこれ買い物して行く。
ガッシャーン!!
ドサッ!
きゃーっ!
奥の方で大きな音がした。
人が集まっているようだ。
「なんだろ?」
「行ってみる?」
人だかりの後ろの方から、何事かを見る。
「お客様、お静かに願います、他のお客様もいらっしゃいますし」
「うるせぇー、さっさと店長出せ!どこにいるんだ?!店長出てこい!」
「いま、呼んできますから」
「俺の嫁に手を出したのは、お前か!よお、店長さんよぉ!」
若いガラの悪そうな男が、商品棚を倒して何かをさけんでいた。
そこに止めに入る店長らしき人物。
「ね、あれってさ、ここの店長があの人の奥さんに手を出したって言ってるのかな?」
「なんかそんな感じだね、ホントかな?」
「ホントだとしても、お店はいい迷惑だね」
「あー、あんな感じだったのかな?お隣の食器棚が倒されたのも」
「ご主人がやったのかな?」
「弥生さんにそんな力がありそうには見えないから、そうかも?」
ここの話はまぁいいか、と野次馬から離れて買い物を続ける礼子と私。
「不倫とか駆け落ちって、案外身近なとこに転がってる話なのかもね」
「そうだね…ん?あれ?」
「どうしたの?礼子」
お酒売り場の前を仲良く腕を組んで歩く男女を見て、礼子が立ち止まった。
カートには、高級そうな牛肉と高そうなワインとウィスキー、それからシャインマスカットが入っているのが見えた。
「うわ…豪勢なお買い物!」
「違う、そこじゃなくて。あの男、多分美容院で女優もどきを乗せてたヤツだよ。女は違うよね?女優もどきと」
「うそ!どれどれ?」
私より少し若い女性が、さらに若い30代そこそこの派手な男の腕にぶら下がりながら歩いてる(ように見える)。
女性は、全身ブランドもので着飾ってそして香水がきつい。
でも弥生さんではない。
「女性は知らない人。男もあの時私は見てなかったんだよね?」
「よし、確認しよう!」
そう言うとレジをさっさと済ませて、さりげなく2人のあとをつける礼子…についていく私。
ぴ!と音がして、赤い五輪マークみたいな車のロックが開いた。
_____あの時の車だ
間違いない、あの時、美容院で弥生さんが乗った車だ。
「あの…すみません、ちょっとお聞きしたいことがあるんですけど…」
私が聞く前に礼子が質問していた。
「あ?どちらさんですか?」
「えっと、あの…」
話しかけたはいいけど、質問が続かない礼子。
「あー、私から聞くわ、あのですね、この前私の知り合いの弥生さんと一緒だった方ですよね?」
「弥生?あー、いたね、そんな人。それが何か?」
めんどくさいと言わんばかりの返事の仕方。
「私、こういう者です」
いつのまに用意したのか、礼子が名刺を差し出した。
じっと名刺を見て、男の態度が変わった。
「へぇ!社長さんですか?俺は…えっと、ここの店でホストやってます。よかったら一度遊びに来てください。いい夢見せますよ」
男も名刺を差し出す。
_____礼子が社長?
なんだかわからないけど。
「ねぇ!この人たち誰?ミヅキの知り合い?」
ブランド香水女が、ミヅキという男の腕を引っ張っている。
「ちょっと待って、今からお知り合いになるとこだから」
「お店は今度、社員を連れて行かせてもらうわ。いや、そうじゃなくて、えっとほら3ヶ月くらい前かな?お洒落な美容院で私の友達の弥生さんと一緒だったでしょ?」
「あー、うん」
「今は?」
「今…って、知らないけど?あの後、お金が続かなくなってお店に来なくなったからね、知らないよ」
早く行こうよ、とブランド香水女が呼んでる。
「そうなんだ。ありがとう、引き留めてしまってごめんなさいね」
「お店、来てね、待ってるから」
じゃあ!とめちゃくちゃカッコつけて、手を振って車に乗り込んだ。
昭和の時代でもあんなアイドルいなかったぞ。
「弥生って人が一緒になりたいって言って出て行った男とは違ったね、やっぱり…」
「うん、今のはホストだったんだね。てか、礼子いつのまに名刺とか作ったの?それも社長?」
「あ、これ?個人事業主としてやろうと思って、最初に名刺作っちゃった。それにしても名刺一つで、人って態度が変わるのね」
「いや、名刺だけのせいじゃないと思うよ」
「ん?」
最近の礼子は、いつもパンプスとスーツというキチンとした服装をしているし、以前と違って背筋もぴっ!と伸びている。
「社長に見えなくもないよ、けど社員を連れてとか言ってなかった?」
「いるじゃん、ここに、平社員が」
礼子は私の鼻をつついた。
_____マジか…